トルコリラ円見通し ロシア制裁関連の影響懸念もありドル高リラ安基調続く(22/8/26)

トルコリラ円の8月25日は7.56円から7.50円の取引レンジ、26日早朝の終値は7.51円で前日終値の7.55円から0.04円の円高リラ安だった。

トルコリラ円見通し ロシア制裁関連の影響懸念もありドル高リラ安基調続く(22/8/26)

トルコリラ円見通し ロシア制裁関連の影響懸念もありドル高リラ安基調続く

〇トルコリラ円、8/25夕刻7.50まで下げ、その後の戻りは鈍い、8/26午前も7.50台序盤にとどまる
〇ドル高リラ安進行の中でドル円を見ながらの推移、7.50割れから一段安へ進みかねないところ
〇ドル/トルコリラ、1ドル18リラ台序盤を維持しながら徐々に安値を更新、8/25は18.18へ下げる
〇終値ベースの史上最安値を連日更新、徐々に取引時間中の史上最安値更新へ進んでいる印象
〇米国によるトルコ企業への警告、米国とトルコの関係が悪化する可能性もあるか
〇7.50割れを回避するうちは、7.54から7.56にかけてのゾーンを試す可能性ありとみる
〇7.50割れからは、7.40台中盤(7.47から7.43)への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の8月25日は7.56円から7.50円の取引レンジ、26日早朝の終値は7.51円で前日終値の7.55円から0.04円の円高リラ安だった。
8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げを受けたリラ安を消化した後はドル高リラ安が徐々に進行する中でドル円を見ながら推移している。
ドル円は8月23日夜に136円割れへ急落したところから24日夜に137円台序盤まで戻したものの25日午前からはジリ安の推移となり、トルコリラ円は23日夜の円高局面で7.50円まで反落したところから戻したものの24日午前高値7.57円の後は戻り高値切り下がりとなり25日夕刻には7.50円まで再び下げ、その後の戻りも鈍い状況となっている。
米国によるロシア制裁に絡んだトルコ企業への警告があったとの報道もリラ売り要因として意識されて上値が重く、8月26日午前も7.50円台序盤にとどまり7.50円割れから一段安へ進みかねないところにある。

【ドル/トルコリラは終値ベースの史上最安値を連日更新】

ドル/トルコリラの8月25日は18.18リラから18.13リラの取引レンジ、26日早朝の終値は18.17リラで前日終値の18.14リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
8月18日のトルコ中銀による予想外の利下げから1ドル18リラの壁を超えたリラ安となり、その後も1ドル18リラ台序盤を維持しながら徐々に安値を更新しており、米国のトルコ企業へのロシア制裁関連での警告もあり25日は18.18リラへ安値を切り下げて昨年12月23日の10.06リラ以降の最安値を更新、12月20日の史上最安値18.36リラへと徐々に迫っている。また終値ベースでは既に昨年12月17日の16.41リラを6月2日に超えて史上最安値更新に入ったが、8月25日も23日から連続で終値ベースでの史上最安値を更新した。

8月18日の予想外の利下げが強行されたこと、8月22日にエルドアン大統領が「トルコ中銀は利上げを実施する必要はない」と改めて利下げ政策の継続を強調したことで9月も連続利下げの可能性が取り沙汰される状況にあり、高インフレがさらに深刻化する中での利下げ強行という無謀さにより海外勢のリラ放れ、国内勢の外貨や不動産等への逃避が進んでいることで、徐々に取引時間中の史上最安値更新へと進んでいる印象だ。

【米国によるトルコ企業への警告】

トルコのトルコ産業・企業家協会(TUSIAD)は8月23日にアデエモ米財務副長官からの書簡により、米国の制裁対象であるロシア団体や個人とトルコ企業が関係を築いた場合に生じ得る制裁リスクについて警告を受けたと発表した。
アデエモ米財務副長官は8月20日にトルコのエリタス財務次官と電話会談を持ち、その時点で米国側が「ロシア団体や個人がトルコを利用して米欧の制裁を回避しようとしている」とし、「米国が指定した人物に援助を行ういかなる個人や団体も制裁を受ける可能性がある」と警告した。米国が制裁対象としているロシアの金融機関とトルコの銀行が提携すればトルコの銀行も世界の主要金融機関との取引や米ドルへのアクセスができなくなるだろう」とも指摘されたとされる。

トルコは欧米によるロシア制裁には参加せず、ロシアに対してはウクライナ戦争終結への停戦協議等で尽力したり、ウクライナの穀物輸出についてロシアや国連と協議を行い輸出再開を実現するなど独自の外交を展開してきたが、米国はロシアが制裁回避でトルコとの通商を拡大していることにいら立っているようだ。トルコからロシアへの輸出がこのところ急増し、ロシアからトルコへの原油輸入が急増していることや、トルコがロシア産天然ガス購入におけるルーブル払いで合意していることを米国は問題視しているようだ。
仮にトルコ企業へのロシア関連制裁が波及する場合、米国とトルコの関係は大きく悪化する可能性があり、外交的緊張がエルドアン大統領の支持率にも影響を与えかねず、インフレとリラ安による輸出振興政策にもブレーキがかかる可能性もある。

【トルコの外貨準備高急減】

8月25日夜に発表された週次のトルコ外貨準備高は8月19日時点のグロスで714.9億ドルとなり8月12日時点の725.6億ドルから減少、ネットでは138.8億ドルとなり8月12日時点の156.8億ドルから大幅な減少となった。
ネットの外貨準備高は7月に60.7億ドルまで減少したところから外資導入等により持ち直しに入り8月12日時点まで急増していたところからの急減となった。8月18日の利下げ強行によるリラ安に対応した介入等の影響もあるのではないかと思われる。1、2週の低下ならその後の持ち直しを期待できるが、利下げ後もリラ安が継続していることを踏まえれば、非公式な形での外貨売り・リラ買い介入も行われて徐々に減少傾向に入り、通貨防衛力の低下としてリラ売り材料となりかねないと思われる。
8月25日に発表されたトルコの8月製造業景況感は102.1となり7月の103.7から若干低下した。設備稼働率は76.7%で7月の78.2%から低下した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月23日夜に7.50円まで急落してから7.55円超えへ反騰したために8月23日午前時点では8月23日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして8月26日未明から30日早朝にかけての間への上昇を想定した。
8月24日夕刻への下落では23日夜安値割れを回避したため25日午前時点ではまだ上昇余地ありとしたが、25日夜に7.50円まで再び失速してその後の戻りも鈍いため、8月24日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクルとして26日夜から30日夜にかけての間への下落を想定する。強気サイクル入りは24日午前高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では、8月23日夜安値からの反発では先行スパンを上抜き返せず、26日午前時点では遅行スパンが悪化して先行スパンから転落した状況も続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は8月25日夕刻に30ポイント台序盤へ低下、いったん50ポイントまで戻したもののその後は50ポイント以下にとどまっているのでもう一段安しやすい状況とし、40ポイント割れからは20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。強気転換には60ポイントを超える反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.50円を下値支持線、7.56円を上値抵抗線とする。
(2)7.50円割れを回避するうちは7.54円から7.56円にかけてのゾーンを試す可能性ありとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)7.50円割れからは7.40円台中盤(7.47円から7.43円)への下落を想定する。7.45円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、7.50円を割り込んだ後も7.52円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月29日
 16:00 8月 経済信頼感指数 (7月 93.4)
 16:00 7月 貿易収支 (6月 -81.7億ドル)
8月31日
 16:00 4-6月 GDP 前期比 (1-3月 1.2%)
 16:00 4-6月 GDP 前年同期比 (1-3月 7.3%、予想 7.5%)


注:ポイント要約は編集部

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