『約7ヵ月ぶり安値圏へ急落。来週はトルコのインフレ指標に注目』
〇今週のトルコ円、週初7.77まで上昇後、週末にかけて、約7ヵ月ぶり安値となる7.38まで急落
〇トルコの指標不冴え、トルコ中銀のインフレ見通しの上方修正、ドル円急落等が背景
〇主要テクニカルポイントを軒並み下抜け、強い売りシグナルもすべて成立、地合い極めて弱い
〇ファンダメンタルズもトルコリラ円相場の続落を連想させる材料揃う
〇引き続き、短期的にも中長期的にも、トルコリラ円相場の下落を予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.10ー7.70
今週のレビュー(7/25−7/29)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.67円で寄 り付いた後、翌7/26にかけて、週間高値7.77円まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに続伸が阻まれると、@トルコ7月景気動向指数(結果102.5、前回104.6)の冴えない結果や、Aスウェーデン・フィンランドのNATO加盟を巡る先行き不透明感(エルドアン大統領は、スウェーデン・フィンランドのNATO加盟について、両国がトルコとの間で6月に結んだ合意に従わない場合は加盟を阻止すると改めて強調)、Bトルコ5月住宅価格指数(結果+145.5%、前回+127.0%、※前年比)の更なる上昇、Cトルコ7月経済信頼感指数(結果93.4、前回93.6)の冴えない結果、Dトルコ中銀によるインフレレポートの大幅上昇修正(今年末のインフレ見通しを前回の42.8%から60.4%へ上方修正した他、2023年末のインフレ見通しも前回の12.9%から19.2%へ上方修正)、
E上記CDを背景としたトルコリラの実質金利低下懸念(トルコ中銀はインフレ圧力の記録的な高まりにも係わらず、エルドアン大統領の方針に従う形で7カ月連続の政策金利据え置きを決定)、F対主要通貨での円買い圧力(ハト派な米FOMCや冴えない米第2四半期GDP結果を受けた円ショートのアンワインド→ドル円急落→トルコリラ円連れ安)が重石となり、週末にかけて、約7ヵ月ぶり安値となる7.38円(2021年12月20日以来の安値圏)まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/30午前2時30分現在)では、7.44円前後で推移しております。
来週の見通し(8/1−8/5)
トルコリラの対円相場は、6/27に記録した約1ヵ月半ぶり高値8.42円をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約7ヵ月ぶり安値となる7.38円(昨年12/20以来の安値圏)まで急落しました。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、90日移動平均線や21日移動平均線)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォーク、ダウ理論の下落トレンド)が全て成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、Aトルコ中銀による金融緩和の継続方針(トルコ6月消費者物価指数が前年比+78.62%と1998年9月以来、約24年ぶり高水準を記録したにも係わらず、トルコ中銀はエルドアン大統領の方針に従い7ヵ月連続で政策金利の据え置きを実施→トルコとその他各国との金融政策格差拡大→トルコリラ全面安)、B上記Aを背景としたトルコリラの実質金利低下、C米FRBによる連続利上げ(米国は今週のFOMCで75bpの利上げを実施→対外債務を多く抱えるトルコは資本流出圧力が加わり易い)、Dトルコ経済の先行き不透明感(深刻なインフレ発生と景気後退懸念)、E双子の赤字(経常赤字と財政赤字の組み合わせ→構造的なリラ売り圧力)、F外貨準備減少に伴うリラ売り防衛能力の脆弱さなど、トルコリラ円相場の続落を連想させる材料が揃っています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、短期的にも中長期的にも、トルコリラ円相場の下落を予想いたします。RSIなどオシレータ系インジケータに過熱感(売られ過ぎ感)が見られるものの、バンドウォーク発生中(ローソク足がボリンジャーバンド下限に沿って下落し続ける状態)は、逆張りトレードが機能しづらい本格的な下落局面入りを示唆しているため、このまま昨年12月に見られたようなトルコリラ大暴落に繋がるリスクを孕んでいる点に留意が必要でしょう。尚、来週は8/3に予定されているトルコ7月消費者物価指数とトルコ7月生産者物価指数に注目が集まります。CPIやPPIが市場予想を上回る場合には、実質金利低下を通じて、トルコリラにもう一段強い下押し圧力が加わる可能性があるため、来週は週央以降のダウンサイドリスクに特に警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.10ー7.70
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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