来週の為替相場見通し:『米長期金利を睨みながらの神経質な相場展開を想定』(7/30朝)

今週はパウエルFRB議長による利上げペース鈍化を示唆する発言や、米経済のテクニカルリセッション突入懸念、米長期金利の急低下が重石となり、132.51まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『米長期金利を睨みながらの神経質な相場展開を想定』(7/30朝)

『米長期金利を睨みながらの神経質な相場展開を想定』

〇今週のドル円、FOMC後137.48まで急伸するも、買い一巡後は、週末にかけ132.51まで急落
〇パウエル議長の利上げペース鈍化示唆発言、米2QGDPの予想外のマイナスがトリガーに
〇米GDP、2四半期連続マイナスでテクニカルリセッション入り
〇米10年債利回りは一時2.62%に急低下、米主要株価指数は堅調推移
〇週末は米6月PCEコアデフレーターの伸び率加速で133円台前半に持ち直す
〇ユーロドル週央にかけ1.0096まで下落後、米長期金利低下に1.02台に持ち直す
〇ドル円、テクニカルの地合い悪化するも一目均衡表の「雲」がサポート
〇ファンダメンタルズも売り要因の賞味期限切れ近く、日本の金融政策格差に再び焦点が回帰するか
〇引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):132.00ー136.00、(EURUSD):1.0000−1.0350

今週のレビュー(7/25−7/29)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初136.07で寄り付いた後、@米FOMCを控えたポジション調整(100bpのサプライズ利上げに対する警戒感)や、A株式市場の堅調推移(リスク回避ムード後退)、B米金利上昇に伴うドル買い圧力、C対ユーロでのドル買い圧力、Dスポ末仲値のドル買いフロー、E米FOMCの75bp利上げ実施(全会一致)、FパウエルFRB議長による「インフレ抑制を強くコミット」「労働市場は非常にタイトでインフレは高すぎる」「インフレを低下させることが不可欠」との発言などが支援材料となり、週央にかけて、週間高値137.48まで急伸しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、GパウエルFRB議長による「ある時点で利上げ速度を緩めることが適切となるだろう」との慎重な発言(利上げペース鈍化の可能性を示唆する発言)や、H米4ー6月GDP速報値(結果▲0.9%、予想+0.5%)の冴えない結果(2四半期連続のマイナス成長→テクニカルリセッション入り)、I上記GHを背景とした米長期金利の急低下(米10年債利回りは4/7以来となる2.62%へ急低下→日米金利差縮小に伴うドル売り・円買い)、

J雨宮日銀副総裁による「出口戦略について全く考えていないという事ではない」「出口の具体的議論は時期尚早だが方法は常に考える必要がある」とのタカ派的な発言が重石となり、週末にかけて、週間安値132.51(6/17以来、約1ヵ月半ぶり安値圏)まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、K米6月PCEデフレータ(結果6.8%、予想6.8%、前回6.3%)の伸び率加速や、L米6月PCEコアデフレータ(結果4.8%、予想4.7%、前回4.7%)の伸び率加速、M米主要株価指数の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/30午前3時00分現在)では、133.35前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0212で寄り付いた後、早々に週間高値1.0259まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、@欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締めは景気への強い逆風)や、Aイタリアを巡る政局不透明感(ドラギ首相の辞任→S&Pはイタリアの格付け見通しをポジティブから安定的へ下方修正)、Bドイツ7月IFO景況感指数(結果88.6、予想90.2、前回92.2)の冴えない結果、Cロシアの国営ガスプロム社によるノルドストリーム1経由のガス供給を7/27より2割減少させるとの方針発表、D上記Cを背景とした天然ガス価格の急上昇(オランダTTF天然ガス先物価格の高騰→エネルギー主導のインフレ再加速懸念→欧州経済への下押し圧力)が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0096まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、EパウエルFRB議長による「ある時点で利上げ速度を緩めることが適切であるだろう」とのハト派的な発言や、F米4ー6月期GDP速報値の冴えない結果、G上記EFを背景とした米長期金利の急低下が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/30午前3時00分現在)では、1.0210前後で推移しております。

来週の見通し(8/1−8/5)

<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した約23年10ヵ月ぶり高値139.40(1998年9月以来)をトップに反落に転じると、今週はパウエルFRB議長による利上げペース鈍化を示唆する発言や、米経済のテクニカルリセッション突入懸念、米長期金利の急低下が重石となり、週末にかけて、6/17以来となる132.51まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線やボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、ダウンサイドには一目均衡表の雲が控えているため、ここからの更なる下落は容易では無いと考えられます(事実、週末にかけての急落時においても、一目均衡表雲上限がサポートとして機能)。

ファンダメンタルズ的に見ても、今週はパウエルFRB議長による「ある時点で利上げ速度を緩めることが適切であるだろう」との発言や、米GDPの 2四半期連続マイナス成長に市場が過剰反応し、「米長期金利低下→ドル円急落」の流れを引き起こしましたが、前者については、同氏はこの発言の前段階で「米景気よりインフレ抑制を重視する構え」を見せており、また後者についても、イエレン米財務長官やバイデン米大統領は「米雇用情勢が強いことからリセッションには当たらない」と発言しているため、今週の下落要因である上記2つの賞味期限切れは相応に近いのではないかと考えられます。

そうなると、残る要素として、@米FRBによる金融引き締めの長期化観測(一部で燻っていた100bp利上げには至らなかったものの、6月・7月で計150bpの利上げを行うなどタカ派姿勢が鮮明)や、A日銀による金融緩和の長期化方針(日銀は先週開催した金融政策決定会合で金融緩和の長期化方針を再強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C米政府・当局によるドル高容認姿勢(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え)、D日本とその他各国との金融政策格差(対ドルに対してだけでなく、対主要通貨全般で円売りが進みやすい構造)が再浮上するため、結果としてドル円相場には上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします(ポジション調整一巡後の反発リスクに要警戒)。

尚、来週は8/1に予定されている米7月 ISM製造業景況指数や、8/2のシカゴ連銀エバンス総裁講演、セントルイス連銀ブラード総裁講演、8/3の米7月ISM非製造業景況指数、8/4のクリーブランド連銀メスター総裁講演、8/5の米7月雇用統計など重要イベントが目白押しとなります。米経済指標については、既に目線が相当程度下がっているため、仮に市場予想を下回ったとしても影響は限定的で、むしろ市場予想を上回った場合のポジティブサプライズに注意が必要でしょう(米経済指標のポジティブサプライズ→今週の下げ幅の半値戻しや全値戻し)。また、ブラックアウト期間明けの米当局者発言にも注目が集まりそうです。米景気よりインフレ抑制を重視する構えが改めて示される場合などには、米金利上昇→米ドル高の経路でドル高・円安が再開するシナリオも想定されます。米長期金利や米主要株価指数の動きを睨みながらも、来週は週を通してドル円相場の反発リスクに注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):132.00ー136.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した年初来高値1.1496をトップに反落に転じると、7/14に一時0.9952(2002年12月以来、約19年7ヵ月ぶり安値圏)まで下げ幅を広げましたが、7/21に開催されたECB理事会にて事前予想を上回る大幅利上げが決定されたことや、7/28に開催されたFOMC後の記者会見でパウエルFRB議長が「利上げペース鈍化」を示唆する発言を行ったことなどが支援材料となり、先週・今週と2週続けて持ち直す動きとなりました。但し、上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表基準線や雲上下限など)を控えていることや、日足・週足・月足の全てで強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転+弱気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の下落トレンド)が点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、下落トレンドは継続中と判断できます(現在は下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面と整理。一巡後の反落リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景とした欧州圏のエネルギー逼迫懸念(ロシアによるノルドストリーム1経由の天然ガス供給削減リスク→エネルギー価格高騰を通じたユーロ圏のインフレ長期化懸念)、B欧州経済の下振れリスク(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締め強化→欧州経済への強い逆風)、C欧米名目金利差に着目したユーロ売り・ドル買い圧力、Dイタリアを巡る政局不透明感など、ユーロドル相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、短期的にも中長期的にも、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/1に予定されているユーロ圏6月失業率や、8/3のドイツ6月貿易収支、ユーロ圏6月生産者物価指数、ユーロ圏6月小売売上高、8/5のドイツ6月鉱工業生産などに注目が集まります。欧州経済指標が冴えない結果を示す場合(景気関連指標の下振れやインフレ関連指標の上振れ、前月に続いてドイツの貿易赤字が拡大している場合など)には、欧州経済を巡る先行き不透明感の高まりを通じて、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるものと推察されます。米長期金利の動向に振らされつつも、来週はユーロドル相場の下落に注意が必要でしょう(1.0100−1.0300レンジの下方ブレイクに要警戒)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0000−1.0350

注:ポイント要約は編集部

『米長期金利を睨みながらの神経質な相場展開を想定』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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