タカ派発言一巡で調整局面入り
〇先週のユーロ、ECB関係者タカ派発言受け、木曜NY市場1.06台まで上昇
〇その後は1.05台前半まで下げ週末クローズ、タカ派発言一巡で上値限定的
〇米欧金利差は拡大方向、中長期的にみてユーロ買い一時的か
〇今週は仏中銀総裁講演 、各国製造業・サービス業PMI速報値、ECB総裁講演など予定
〇今週は1.0380レベルをサポートに、1.0650レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、最近タカ派発言と金融政策面でユーロ安をけん制する発言が目立つフランス中銀総裁の発言をきっかけとしたユーロ買いから始まり、木曜の理事会議事録の内容をタカ派的に解釈する市場参加者の動きによって木曜NY市場で1.06台の高値をつけましたが、1.06台では戻り売りを考える向きもいて1.05台前半に押しての週末クローズとなりました。
フランス中銀総裁の発言ですが、以前はフランス中銀がタカ派というイメージが無かったことからやや反応が強いのですが、ECB関係者もインフレを懸念して全体としてタカ派寄りになりつつあることや、日本でも言われる輸入物価上昇につながる悪い自国通貨安(ユーロ安)が金融政策にも影響を与えるということで、あまり繰り返されると逆に影響は少なくなっていきます。ラガルドECB総裁もフランス出身ですし、おそらくは6月のECB理事会では同月中のQEが終了し、7〜9月期の比較的早い段階でマイナス金利からゼロ金利へと利上げが行われる見通しが示されることへの地ならしと見てよいかと思います。
そして時々取り上げる米欧金利差(米国債とドイツ国債の金利差)を考えると、仮にECBが7月に利上げをしても、FRBが6月に利上げすると考えられる0.5%のほうが幅は大きく、7月28日のFOMCでも0.5%の利上げをするでしょうから政策金利差は拡大するいっぽうです。長期金利の金利差も当然拡大する方向で動きますので、中長期的なことを考えるとユーロ買いは一時的な動きで終わる可能性もあります。
また最近ではウクライナ情勢が膠着していることから新たな動きは出てきませんが、停戦合意に辿り着くまでは欧州にとっては景気後リスクにつながる悪材料であり続けます。そうしたことを考えると5月高値からの戻しの限界点を探る段階にあると考えた方が良いと思います。このあたりはテクニカルに見てみましょう。
日足チャートをご覧ください。
先週のチャートに引いたラインをそのまま残してありますが現在3月末の高値からの平行下降チャンネルの上限に到達しています。ここで止まるには水準的に近すぎるため、5月高値1.0630から1.06台なかばといった水準が戻り売りが出やすくなる水準であると考えています。下値はいったん2017年安値トライを失敗したので1.04割れでは買いが出やすいという状況です。
今週は上記の考え方から1.0380レベルをサポートに、1.0650レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週もユーロ円の日足チャートを見ておきます。
ドル円が株安によって下げる動きとECB関係者のタカ派発言とでユーロ円は上下はあったものの横方向の動きとなった一週間でした。今週はドル円が調整の円買いが強まりやすく、ユーロドルはタカ派発言一巡で上値が限定的になりやすいとすると下方向への動きが予想されます。
テクニカルなターゲットは3月安値と4月高値の半値押しとなりますが、水準的にはまだ距離があり短期的には5月安値132.65レベルに近づくというところだと思います。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
5月23日(月)
17:00 ドイツ5月ifo企業景況感
23:15 オーストリア中銀ドイツ連銀、英中銀総裁講演 ☆
23:30 フランス中銀総裁講演 ☆
25:00 (アトランタ連銀総裁講演)
**:** ユーロ圏財務相会合
5月24日(火)
15:45 フランス5月企業景況感
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国5月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
5月25日(水)
15:00 ドイツ1〜3月期GDP改定値 ☆
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
15:45 フランス5月消費者信頼感
16:00 パネッタECB理事講演
16:00 フィンランド中銀総裁講演
17:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
27:00 FOMC議事録公表 ☆
5月26日(木)
21:30 米国1〜3月期GDP改定値 ☆
5月27日(金)
20:35 レーンECB理事講演 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月16日(月)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場序盤にフランス中銀総裁が再び弱いユーロはECBの物価安定目標に反するとユーロ安牽制発言を行ったことをきっかけに上昇。その後NY前場には上昇前の水準に押す場面も見られたものの引けにかけてはじり高となり1.0443レベルの高値をつけて高値圏での引けとなりました。
5月17日(火)
ユーロドルは前日のフランス中銀総裁のユーロ安牽制発言に続き、オランダ中銀総裁が7月の利上げを支持する発言を行ったことから欧州市場で対ドル、対円ともに大幅高となりました。NY市場での動きは鈍かったものの底堅い展開が続き、ユーロ円まで上昇したことで、それぞれ高値圏での引けとなりました。
5月18日(水)
ユーロドルは東京市場から上値の重たい展開が続いていましたが、NY市場でNYダウが1000ドルを超える大幅安となり欧州の主要株価指数も急落したことでユーロ円が大幅安、ユーロドルも追随して下げるという流れで引けました。
5月19日(木)
ユーロドルは東京市場では小動きだったものの欧州市場に入り公開されたECB理事会の議事要旨において第3四半期にQEが終了し金利はしばらくは上昇しないとしたいっぽうで、緩和からの転換についてはそのペースで理事会メンバーの意見が分かれたことも示されていました。市場参加者は6月9日の次回理事会で7月利上げについても協議されるとの判断からユーロ買いで反応、NY後場には1.0607レベルまで上昇しそのまま高値圏での引けとなりました。
5月20日(金)
ユーロドルは1.06台での上値が重く多少上下しながらも週末前の売りが目立ちました。前日にECB理事会の議事録公表でいったんピークをつけた感もあって、NY市場ではじり安の流れが続き1.0533レベルまで下げた後にやや戻して引けました。
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