トルコリラ円見通し 預金保護策でのリラ急伸も5連騰でストップ、10円割れへ反落(21/12/28)

トルコリラ円の12月27日は10.73円から9.50円の取引レンジ、28日早朝の終値は9.83円で24日終値の10.74円からは0.91円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 預金保護策でのリラ急伸も5連騰でストップ、10円割れへ反落(21/12/28)

トルコリラ円見通し 預金保護策でのリラ急伸も5連騰でストップ、10円割れへ反落

本年最後のレポートとなります。1年間ご愛読ありがとうございました。来年は1月4日から再開いたします。


〇トルコリラ円、終値ベースで5連騰だったが12/27は10円を割り込む反落、先行き不安再燃の印象
〇対ドル、リラの反騰一服感から再び売られ10リラ台を維持できず11リラ台へ下落
〇BDDKが元中銀総裁ら5人を刑事告発との報道、トルコ政治・金融政策全般への不安を助長するか
〇預金保護政策によりリラ預金は急増したが、ドル等の外貨を全面的に手放す動きには至らず
〇10.50以下での推移中は下向きとし、9.12割れからは8円台前半を試す流れとみる
〇10.50超えからは再び11円を目指す上昇を想定するが、11円以上は反落警戒とみる

【概況】

トルコリラ円の12月27日は10.73円から9.50円の取引レンジ、28日早朝の終値は9.83円で24日終値の10.74円からは0.91円の円高リラ安となった。
エルドアン大統領がリラ預金の為替差損を補償するとしたことで12月20日安値6.17円まで歴史的な大暴落となっていたリラ売り情勢が反転して12月20日に1.48円の円安リラ高で反騰入りした。取引時間中の高値は12月23日の11.14円でストップしたものの終値ベースでは12月24日まで5営業日連続の大上昇となった。
しかし12月27日は10円を割り込む反落となった。預金の為替差損補填を目当てとしたリラ預金の殺到も一巡して外貨預金も横ばいにとどまっていることや、トルコ銀行調整監視機構(BDDK)が銀行規制に違反する発言をしたとして元中銀総裁ら5人を刑事告発したとの報道から先行き不安も再燃した印象だ。

【対ドルでも5連騰後の反落】

ドル/トルコリラの12月27日は11.69リラから10.50リラの取引レンジ、28日早朝の終値は11.68リラで24日終値の10.64リラからは1.04リラのドル高リラ安となった。
高インフレ下での4会合連続利下げ強行により12月20日には18.36リラまで暴落的な下落となり史上最安値を大幅に更新したが、大統領によるリラ預金の為替差損補填方針発表から反騰入りして12月23日には10.05リラまで高値高値を切り上げてきた。24日は取引時間中の高値更新にはならなかったものの終値ベースでは5日連続の上昇だった。
12月27日はリラの反騰一服感から再び売られて10リラ台を維持できずに11リラ台へと下落した。暴落から暴騰へと急旋回した流れもひとまず落ち着いた印象だ。

【元中銀総裁らを刑事告発】

トルコの銀行調整監視機構(BDDK)が元中銀総裁ら5人に対して銀行規制に違反する発言をしたとして刑事告発したと12月27日にトルコの国営メディアが報道した。告発されたのは野党の優良党に所属するユルマズ元中銀総裁ら野党政治家2人、エコノミスト2人、ジャーナリスト1人という。「銀行の評判を傷つけ低下させる可能性のある根拠のない主張を公共のチャネルで広めた」ことが告発要因とされているが、いつのどの発言かについては不明だ。
エルドアン大統領による高インフレ下でも利下げを強行する姿勢、為替差損を国家が補填するという異例の政策に加え、金融政策への批判を封じ込めようとするような元中銀総裁らが刑事告発されたことはトルコ政治、金融政策全般への不透明感と不安を助長する。

【リラ預金増加も一巡か】

トルコ中銀は12月27日に外国為替取引から保護されたリラ預金口座については銀行に義務付けられている預金準備率の適用を免除するとし、外為取引から保護されたリラ預金に対して銀行に報酬を支払うとした。リラ預金保護への中銀の支援策と思われる。
トルコの国内銀行はリラ放れを抑えつつ為替差損補填方針を受けたリラ預金拡大へ向けて預金金利を引き上げており、差損補填方針発表前の17〜18%だった預金金利は20%超へと上昇しているという。
しかしトルコ銀行規制監督庁(BDDK)の集計では、トルコ国内における個人の外貨預金は12月21日時点で1637億ドルで12月20日及び17日の1638億ドルからはほぼ横ばいにとどまっている。異例の預金保護政策によりリラ預金は急増したものの、先行き不安を背景にドル等の外貨を全面的に手放す動きには至っていない事が示された。トルコの投資家はまだリラ暴落が収まったというところまでの信頼を回復していない印象であり、まだしばらくはリラ相場の混乱的な動きが続きそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月24日深夜にかけて続落したものの25日早朝に強気転換目安とした10.70円を超える反騰となったため、12月27日午前時点では20日深夜安値から4日目となる24日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして28日夜から30日夜にかけての間への上昇を想定した。
12月27日に10円割れへ下落したため、既に25日早朝高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした可能性がある。12月24日深夜安値(9.12円)割れを回避するうちは10.50円超えから上昇再開とするが、24日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして29日夜から31日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月28日早朝への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落してきているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。両スパン揃って好転するところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は50ポイント割れへ失速しているので上昇再開は55ポイント超えからとし、55ポイントを下回るうちは20ポイント前後への一段安警戒とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月24日深夜安値9.12円を下値支持線、10.50円を上値抵抗線とする。
(2)10.50円以下での推移中は下向きとし、9.12円割れからは8円台前半(8.00円から8.50円)を試す流れとみる。8.30円以下は反騰注意とするが、9.30円以下での推移なら29日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)10.50円超えからは再び11円を目指す上昇を想定するが、11円以上は反落警戒とみる。

【当面の主な予定】

12月30日
 16:00 12月 経済信頼感指数 (11月 99.3)
 20:30 週次 外貨準備高 12/24時点 (12/17時点 783.7億ドル)
12月31日
 16:00 11月 貿易収支 (10月 -14.4億ドル)
1月03日
 16:00 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 3.51%)
 16:00 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 21.31%)
 16:00 12月 消費者物価コア指数 前月比 (11月 2.8%)
 16:00 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 17.6%)
 16:00 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 9.99%)
 16:00 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 54.62%)
 16:00 12月 イスタンブール製造業PMI (11月 52.0)


注:ポイント要約は編集部

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