トルコリラ円見通し 大幅利下げの衝撃から続落、欧米との関係悪化報道もリラ売りを加速(21/10/25)

予想を超える利下げの衝撃から、21日には昨年史上最安値12.03を更新、22日も大幅利下げの衝撃が続いて続落となり、終値ベースでは2日続けて12円以下の水準となった。

トルコリラ円見通し 大幅利下げの衝撃から続落、欧米との関係悪化報道もリラ売りを加速(21/10/25)

トルコリラ円、大幅利下げの衝撃から続落、欧米との関係悪化報道もリラ売りを加速

〇トルコリラ円、10/22は12.02から11.76の取引レンジ、大幅利下げショックから2日連続続落
〇ドル/トルコリラ、10/22は9.65から9.46の取引レンジ、10/25午前序盤9.85へ安値さらに更新
〇11/18会合での3会合連続利下げ可能性も、通貨インフレによるトルコ経済へのマイナス影響懸念される
〇エルドアン大統領、共同声明に反発し欧米10か国の大使追放を指示
〇利下げショックで大幅下落、重要イベント通過で一服か安値切り下げるか、いずれの可能性も検討
〇当面は11.90から12.0にかけてのゾーンを上値抵抗帯とする
〇安値更新続く場合、11.40、11.25、さらに11.00前後を目指す流れとみる

【概況】

トルコリラ円の10月22日は12.02円から11.76円の取引レンジ、23日早朝の終値は11.79円で前日終値の11.95円から0.16円の円高リラ安となった。10月21日にトルコ中銀が市場予想を大幅に超えて政策金利を18%から16%へと引き下げたことの衝撃から21日には前日比で0.43円の円高リラ安となり、安値で11.92円を付けて昨年11月6日に付けた12.03円の史上最安値を更新したが、22日も大幅利下げの衝撃が続いて続落となり、終値ベースでは2日続けて12円以下の水準となった。
週間ベースでは前週末の12.30円から11.79円まで0.51円の円高リラ安で3週連続の陰線での下落となった。
週明けの10月25日午前序盤は11.52円まで一段安したところから11.60円台中盤へやや戻している。
エルドアン大統領が欧米10か国の大使に国外追放を指示したとの報道からリラ売りとなった模様。

【対ドルも史上最安値更新】

ドル/トルコリラの10月22日は9.65リラから9.46リラの取引レンジ、23日早朝の終値は9.57リラで前日終値の9.50リラから0.07リラのドル高リラ安。
中銀利下げショックから21日は前日比0.29リラのドル高リラ安となり安値で9.54リラまで史上最安値を更新したが、21日も夕刻に9.65リラまで最安値を更新した。夕刻以降は下落一服となったが9.55リラを挟んで最安値近辺にとどまったまま週を終えた。
週間ベースでは前週末の9.25リラから9.57リラへ0.32リラのドル高リラ安で3週連続の週足陰線での下落となった。
10月25日午前序盤には9.85リラへ安値をさらに更新している。

【トルコ中銀の連続利下げショック続く】

トルコ中銀は10月21日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の18.0%から16.0%へ引き下げた。前回会合で19.0%から18.0%へ引き下げたところから2会合連続の利下げだが、今回の利下げが予想以上の大幅利下げだったことから11月18日の次回会合でもさらに連続利下げされるのではないかとの懸念も高まっている。
11月3日には10月のトルコ消費者物価上昇率の発表がある。9月は全体の前年同月比が19.58%、コア指数では17.0%だったためにコア指数上昇率を下回るような利下げはあり得ないだろうというのが市場の認識だったが、市場の常識を超えてコア指数を下回る利下げが強行された。
エルドアン大統領は「インフレ率と政策金利の一桁」を標榜してきた経緯もあり、極端な利下げ強行による景気浮揚を期待しているようだが、世界的な物価上昇期にある中での利下げ強行は通貨インフレによりトルコ経済にはマイナスに働くと懸念される。10月21日の利下げをもってしばらくは様子見に入る姿勢が大統領や中銀等から示されるのか、より利下げ継続へと前のめりのなるのか、要人発言にも注意のいるところだ。

【3〜4か月サイクルと40週サイクルによる安値形成期】

【3〜4か月サイクルと40週サイクルによる安値形成期】

トルコリラ円の週足では概ね40週平均の底打ちサイクルがみられる。昨年11月6日底から34週目となる今年6月21日(6月2日安値とのダブル底)に前回の底を付けており、現在は18週を経過したところにあるため向こう10週から20週規模での下落継続となる可能性が考えられる。
日足レベルでは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルがみられるが、6月21日安値から4か月目の現状近辺でいったん底を付けて戻しに入る可能性と、9月27日安値で底を付けたものの既に持ち合い下放れから新たな下落期に入っている可能性が考えられる。前者の場合でも先週の週足大陰線による下落幅を解消できずに下げ渋り程度にとどまって早々に次の下落期入りとなる可能性も考えられるが、その場合は来年1月から2月にかけての間への下落継続となり、9月27日安値を底割れしたことにより既に下落期に入っているとすれば12月から1月にかけての間が安値形成期と想定されるので、いずれのケースでも大差なく年末にかけては安値追及の流れが続くのだろうと考える。

【エルドアン大統領、欧米10か国の大使追放を指示】

トルコのエルドアン大統領は10月23日、欧米10か国がトルコで長期に渡って拘束されている実業家の即時釈放を求める共同声明に反発して、米仏独など10か国の大使の国外追放を外相に指示したと報じられた。
トルコ外務省が対応検討中とされるが、欧米との関係悪化が不可避として25日早朝にリラ売りが一段と進んだ。
欧米10か国は実業家のオスマン・カバラ氏の釈放を求める共同声明を発表したが、同氏は人権活動家として知られており、2013年の反政府デモや2016年のクーデター未遂事件に関与したとされてトルコ当局に4年間拘束されており、欧米は人権弾圧として批判している。

【当面のポイント】

中銀による利下げショックで大幅下落となったが、重要イベント通過により急落一服でやや落ち着く可能性と、このままずるずると安値を切り下げてゆく可能性のいずれも考えておく必要があると思われる。
当面は11.90円から12.0円にかけてのゾーンを上値抵抗帯とし、12円に届かないか一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、安値更新が続く場合は11.40円、11.25円、さらに11.00円前後を目指す流れと考える。

【当面の主な予定】

10月25日
 16:00 10月 製造業景況感 (9月 113.4)
 16:00 10月 設備稼働率 (9月 78.1)
10月27日
 16:00  9月 貿易収支 (8月 -42.6億ドル)
 16:00 10月 経済信頼感指数 (9月 102.4)
10月28日
 16:00  9月 観光客数 前年同月比 (8月 119.4%)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 30億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 10/22時点 (10/15時点 859.6億ドル)
11月01日
 16:00 10月 イスタンブール製造業PMI (9月 52.5)
11月03日
 16:00 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 1.25%)
 16:00 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 19.58%)
 16:00 10月 消費者物価コア指数 前月比 (9月 1.5%)
 16:00 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 17.0%)
 16:00 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 1.55%)
 16:00 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 43.96%)

11月18日 トルコ中銀金融政策決定会合


※ポイント要約は編集部

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