110.50円割れをいったん買い戻されるも上値重い、ドル高と円高が並走
〇ドル円、7日に110.38へ下落し7/2午前高値以降の安値を更新
〇米連銀が金融緩和縮小へ向かい始め主要国中銀とのスタンスの差からドル高基調は継続
〇ドル円は米長期債利回り低下で下落基調継続、クロス円では主要通貨安に円高圧力も重なる状況
〇NYダウは前日比104.42ドル高、ナスダック総合指数は3日連続で終値ベースの史上最高値更新
〇米労働省発表の5月雇用動態調査求人件数は920万9000件で過去最高を更新
〇8日公表のFOMC議事要旨、年末から年明けには量的緩和縮小開始となる可能性を再認識
〇7日午前安値110.38割れ回避のうちは110.81超えから111円台序盤を目指す可能性があるとみる
〇110.38割れからは110円前後試し、下げ足が速まる場合は6/21安値109.70前後へ向かう流れ
【概況】
ドル円は7月7日午前安値で110.38円へ下落して7月2日午前高値111.65円以降の安値を更新。110.50円割れに対する突っ込み警戒感でいったん110.81円まで戻したが勢い付かずに7日夜に110.49円まで下げた後は110.50円以上を維持しているものの下げ渋り程度の動きにとどまっている。
ドルストレートにおいてはユーロドルが7日深夜に1.1780ドルまで下落して7月2日夜の米雇用統計直後の安値を割り込みFOMC後の安値を更新、5月25日からの下落継続となり、ポンドドルも7日夜には2日夜安値に迫るところまで下落、6日夕刻へ急伸した豪ドル米ドルも7日夜には2日夜安値へ迫る反落となるなどドル高感がぶり返している。一方でドル円はやや下げ渋ったものの7月2日からの下落基調を継続しており、クロス円全般はFOMC後の安値を更新する下落となっている。
米連銀が金融緩和縮小へ向かい始める中で主要国中銀とのスタンスの差により主要通貨の動きも多少のずれがあるもののドルストレートでのドル高基調は継続、一方ではまだ緩和縮小開始には時間がかかり変異株による感染再拡大リスクも警戒されるとして長期債利回りは低下しているためにドル円は米長期債利回り低下を見て下落基調を継続している状況だ。このためクロス円では主要通貨安に加えて円高圧力も重なる状況にあるようだ。
7月7日の米10年債利回りは前日比0.03%低下の1.32%となり、一時は今年2月半ば以来4か月振りの低水準となる1.29%まで下げた。30年債利回りは同0.03%低下の1.94%、利上げ時期に敏感な2年債利回りは前日比変わらずの0.22%だったが、0.228%まで戻してから0.218%へ低下するなど7月2日からの低下傾向を続けている。一方でNYダウは前日比104.42ドル高と上昇、長期債利回り低下に強気反応しやすいナスダック総合指数は同1.42ポイント高とわずかだが3日連続で終値ベースの史上最高値を更新した。
米労働省が発表した5月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数は前月比1万6000件増の920万9000件で市場予想の938.8万件を下回ったものの過去最高を更新した。
【米連銀は緩和縮小を急がないが準備に入る】
米連邦準備制度理事会(米連銀・FRB)は8日未明に6月15-16日開催の前回FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)の議事要旨を公表した。議事要旨では景気回復を受けて量的緩和策の縮小準備を整えるとしつつも縮小開始の見極めには「忍耐強くあるべき」との慎重姿勢も根強いことを示した。FOMC参加者は「新型コロナウイルスによる最も深刻な経済への影響は既に起きた」としてリスクのピークは過ぎたとの判断を示し、量的緩和策の縮小条件となる「雇用と物価の目標へ一段の大幅な前進」については「総じて達していないが進展は続くとみている」との認識が示された。また景気が想定を超えて過熱した場合に備えて「資産購入額のペースを落とせるよう準備をしておくことが重要」との認識で概ね一致し、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の具体的な減額手法にも言及があった。しかし縮小開始時期に関する明示的な言及はなく、経済情勢には「著しい不確実性」が残っているとの慎重姿勢も示された。
6月17日未明にFOMC声明が発表された直後は米連銀の利上げ時期想定の前倒しと量的緩和縮小議論の着手としてドル全面高の反応となった。議事録は声明発表当時ほどには米連銀が緩和縮小を急ぐ姿勢ではないと再認識させるものだったが、緩和縮小への準備は始まっており、今後の景気回復感が雇用改善を伴って進捗すれば年末から年明けには縮小開始となる可能性が高いことも再認識されたと思われる。
米連銀のこうした金融政策スタンスの変化に対し、主要中銀が追従するのか、景気回復の出遅れを踏まえて緩和縮小に対して米連銀よりも慎重となるのかにより、スタンスの差が主要通貨の動きにも差をつけてくることも考えられるが、特にECBの姿勢に注目も集まる。ECBは7月8日に金融政策の戦略見直しの結果を公表するとしている。ECBは2003年から物価目標を「2%を下回るがこれに近い水準」としてきたが、パンデミックからの景気回復によるインフレの上ブレを踏まえて2%を超えることを容認して金融緩和政策を継続する姿勢を示す可能性もあるところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月30日夜安値を起点とした上昇が7月2日午前高値でピークアウトして下落期に入ったとして安値形成期を7月5日夜から7日夜にかけての間と想定した。7日午前安値からいったん戻したため、7日午前安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは8日の日中から9日にかけての間への上昇余地ありとするが、7日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとして12日午前から14日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7日午前安値からの下げ渋りにより遅行スパンは実線と交錯しているが先行スパンの下限が上値を抑えている。7日夜高値110.81円超えからは戻りをさらに試す可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、7日午前安値割れからは一段安入りとなるので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月5日から7日午前にかけての安値更新に対して指数のボトムがほぼ横ばいにとどまる強気逆行を見せて7日夜にはいったん50ポイントを超えたが、その後は50ポイントを挟んだ横ばい程度にとどまって勢い付いていない。このため40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す流れと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月7日午前安値110.38円を下値支持線、7日夜高値110.81円を上値抵抗線とする。
(2)7日午前安値割れ回避のうちは110.81円超えから111円台序盤を目指す可能性があるとみるが、111円以上は反落注意とみる。
(3)110.38円割れからは110円前後試しとみる。110円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、下げ足が速まる場合は6月21日安値109.70円前後へ向かう流れとみる。また7日午前安値を割り込んだ後も110.50円以下での推移なら9日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/8(木)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー現状判断DI (5月 38.1、予想 41.8)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー先行判断DI (5月 47.6、予想 49.5)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 155億ユーロ、予想 151億ユーロ)
15:00 (独) 5月 経常収支 (4月 213億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 36.4万件、予想 35.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 346.9万人、予想 333.5万人)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
28:00 (米) 5月 消費者信用残高 前月比 (4月 186.1億ドル、予想 184.0億ドル)
7/9(金)
G20財務相・中央銀行総裁会議(7/10まで)
08:50 (日) 6月 マネーストックM2 前年同月比 (5月 7.9%、予想 6.0%)
10:30 (中) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 1.3%、予想 1.3%)
10:30 (中) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 9.0%、予想 8.7%)
15:00 (英) 5月 月次GDP 前月比 (4月 2.3%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産指数 前月比 (4月 -1.3%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 鉱工業生産指数 前年同月比 (4月 27.5%、予想 21.6%)
15:00 (英) 5月 製造業生産指数 前月比 (4月 -0.3%、予想 1.0%)
15:00 (英) 5月 貿易収支・物品 (4月 -109.58億ポンド、予想 -110.50億ポンド)
15:00 (英) 5月 貿易収支・全体 (4月 -9.35億ポンド、予想 -12.50億ポンド)
19:00 (英) ベイリー英中銀総裁、パネル討論会参加
19:00 (欧) ラガルドECB総裁、パネル討論会参加
23:00 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.8%、予想 1.1%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 0.8%)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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