トルコリラ円見通し 6月2日安値割れには時期尚早で下げ一服(21/6/29)

トルコリラ円の6月28日は12.73円から12.60円の取引レンジ。

トルコリラ円見通し 6月2日安値割れには時期尚早で下げ一服(21/6/29)

6月2日安値割れには時期尚早で下げ一服

〇トルコリラ円、28日は12.73から12.60の取引レンジ、下げ渋るものの6/2安値割れへ余裕が乏しい状況
〇対ドルは8.76から8.66の取引レンジ、終日堅調推移で29日朝に8.63まで戻す
〇7/2の米雇用統計に注目、予想を超える改善になればテーパリングが早まり、低調なら先送りの可能性
〇トルコ中銀は大統領の利下げ圧力もあり主要国などの動きに逆行となりリラ売り攻勢となりやすい状況に
〇12.64以上で推移中は上向きとし12.80超えから12.89試しとみる、12.85以上は反落注意
〇12.64割れから12.57試し、底割れからは12.48試しへ向かうとみる

【概況】

トルコリラ円の6月28日は12.73円から12.60円の取引レンジ。
6月2日にエルドアン大統領による利下げ言及報道から12.44円へ急落、その後は米土首脳会談期待で6月11日高値13.21円へ戻したものの首脳会談の成果なく再び売られて6月21日安値で12.48円まで下げ、新たな底割れは回避したものの終値ベースでは2月と3月のダブル天井以降の安値を更新した。
6月23日へ小反発したものの24日から25日へ2日連続陰線で下落、28日は下げ渋ったものの引き続き6月2日安値割れへの余裕が乏しい状況にとどまっている。

ドル/トルコリラの6月28日は8.76リラから8.66リラの取引レンジ。6月25日安値では8.799リラをつけて6月22日の8.794リラを超えて史上最安値を更新(ベンダーによっては既に21日時点で8.80リラ台に到達)したが、25日は下落一服で買い戻され、28日も終日堅調推移で29日朝には8.63リラまで戻している。
しかし、史上最安値を更新したところで下げ一服から戻してもまた最安値を更新するパターンを繰り返しており、3月30日安値8.45リラ、4月26日安値8.48リラ、5月13日安値8.51リラ、6月2日安値8.77リラ、6月22日安値8.794リラ、6月25日安値8.799リラと安値更新してきた流れの範囲にある印象だ。

【7月2日の米雇用統計と5日のトルコ物価統計から大きく動くか】

為替市場全般としては7月2日の米雇用統計に注目が集まる。米連銀が6月17日未明に発表したFOMC声明とパウエル米連銀議長会見では量的緩和縮小議論の開始と利上げ再開想定時期の前倒しが示された。発表を前後して為替市場はドル全面高となり、6月21日からはFOMCショック一巡でドル安へと風向きが変わったものの、FOMCショック安を解消するほどにはユーロやポンド及び豪ドル等は戻しきれず、先週末から週明けにかけてはドル高感がやや強まる展開に入っている。

米雇用統計が予想を超える改善になれば米連銀のテーパリングも早まり、予想外に低調ならテーパリング着手も慌てることはないとして先送りされる可能性もある。その段階で主要国中銀との差を踏まえて主要通貨も動くことになるが、その際にトルコ中銀は大統領の利下げ指向も踏まえて主要国の金融政策正常化や新興国での利上げの動き等に逆行することとなり、リラ売り攻勢が仕掛けられやすい状況に陥ることが懸念される。
7月5日に発表されるトルコ6月物価上昇率がピーク感を示せば利下げへさらに前倒しとなることを嫌気してリラ売りされ、物価上昇率が予想以上に加速するようだと利上げ催促的にリラ売りとなる可能性もあるところだ。

【観光客入国数は改善傾向にあるものの依然として平年の2割程度】

【観光客入国数は改善傾向にあるものの依然として平年の2割程度】

6月25日に発表されたトルコの5月海外観光客入国者数は93万6282人となり、前年同月比では3038%の急増となった。しかし前年5月はパンデミックによる激減状態の中で前年同月比99.26%減の2万9829人であり、パンデミック前の2019年5月は402万2254人だったことと比較すればまだ2割強に過ぎない。
去年は8月に181.4万人、9月に220.3万人と増えたものの、変異株による世界的な感染再拡大の流れを踏まえると劇的な改善も望めない状況だ。慢性的な経常赤字国であるトルコにとっては観光収入による外貨獲得が極めて重要であり、トルコ国内の感染抑制が効いて製造業等が回復している状況の中にあっては観光収入の平年並み改善が実現しないと景気回復が本格的になるというところには至れないのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月21日午後安値から強気サイクルに入っていたが、23日夕高値でサイクルトップを付けて下落期に入ったとして24日午後から28日の日中にかけての間への下落を想定していた。
6月26日早朝へ続落したところからは持ち直しているため、26日早朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は28日夕から30日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるため、26日早朝安値を割り込まないうちは上昇余地ありとするが、12.64円割れからは弱気転換注意として26日早朝安値12.57円試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして7月1日早朝から5日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では26日早朝安値からの上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンからもいったん上抜けた。しかし勢いは鈍いため遅行スパンは再び悪化しやすい位置にある。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は26日早朝安値からの上昇で60ポイント台へ乗せたものの70ポイント超えへ向かう勢いに欠けている。50ポイント以上での推移か一時的に割り込んでも早々に回復するうちは上昇余地ありとみるが、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月26日早朝安値12.57円を下値支持線、12.80円を上値抵抗線とする。
(2)12.64円以上での推移中は上向きとし、12.80円超えからは23日夜高値12.89円試しとみる。12.85円以上は反落注意とするが、12.75円以上での推移なら30日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)12.64円割れからは26日早朝安値12.57円試しとし、底割れからは6月21日安値12.48円試しへ向かうとみる。12.50円以下は反発注意とするが、12.64円以下での推移なら30日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

6月29日
 16:00 6月 経済信頼感指数 (5月 92.6)
6月30日
 16:00 5月 貿易収支 (4月 -30.6億ドル)
7月1日
 16:00 6月 イスタンブール製造業PMI (5月 49.3)
 20:30 週次外貨準備高 6/25時点 (6/18 560.2億ドル)
7月5日
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前月比 (5月 0.89%)
 16:00 6月 消費者物価上昇率 前年同月比 (5月 16.59%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前月比 (5月 3.92%)
 16:00 6月 生産者物価上昇率 前年同月比 (5月 38.33%)
7月8日
 20:30 週次 外貨準備高 7/2時点
7月9日
 16:00 5月 経常収支 (4月 -17.12億ドル)
7月12日 
 16:00 5月 失業率 (4月 13.9%)
7月14日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合


※ポイント要約は編集部

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