ドル円見通し 6月2日夜の上昇では110円に届かず失速、米雇用統計待ち(21/6/3)

ドル円は、米長期債利回りが低下してユーロやポンド等が戻したことでドル安感が強まったために3日未明に109.51円まで反落した。

ドル円見通し 6月2日夜の上昇では110円に届かず失速、米雇用統計待ち(21/6/3)

6月2日夜の上昇では110円に届かず失速、米雇用統計待ち

〇昨日のドル円、110円に到達する材料なく3日未明に109.51まで反落
〇NYダウ前日比25.07ドル高、ナスダック同19.85ポイント高で共に小幅上昇
〇米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.59%、レンジ内にとどまっている状況
〇4日の米5月雇用統計で上昇感が強まればテーパリング議論開始姿勢強まる可能性
〇109.50以上での推移中は109.88超えから28日夜高値110.19を目指す可能性
〇109.50以下での推移に入る場合は109.31試し

【概況】

ドル円は6月1日深夜安値109.33円からの持ち直しを続けて2日夕刻及び夜に109.88円まで戻したが110円へ到達する材料にかけ、米長期債利回りが低下してユーロやポンド等が戻したことでドル安感が強まったために3日未明には109.51円まで反落した。その後は109.50円強の水準で確りしているが、週末の米雇用統計も迫り110円台へ乗せるには時期尚早、6月1日安値109.31円を割り込んで一段安へ進む手掛かりにもかけるところであり、いったん下げた状況で様子見となっているようだ。
6月2日は主要な米経済指標発表がなかったために手掛かり難で株式市場及び為替市場、債券市場共に週末の米雇用統計を意識してポジション調整的な動きだった。NYダウは前日比25.07ドル高、ナスダック総合指数は同19.85ポイント高で共に小幅上昇で終えた。

【雇用統計で米連銀のテーパリング議論開始時期を探る】

米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.59%で終了。5月7日の米4月雇用統計発表後に1.50%割れへ急低下したところから5月13日の1.70%まで戻したが、5月26日に1.55%台へ低下、6月1日に1.63%までいったん戻したが2日は失速となった。5月7日の一時的な急落を除けば1.60%を中心に1.50%前後から1.70%までのレンジ内にとどまっている状況にあり、再び1.50%割れへ低下するようだと大きなドル安要因となりえるが、1.70%超えから続伸に入る場合は3月30日の1.77%を試しにかかってドル高感が強まる可能性がある。いずれへ向かうのか、6月4日の米5月雇用統計の内容を見て判断したいというところだろう。

米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は6月2日の講演で「インフレ率が上振れするリスクがいくらかある」「少なくとも量的緩和の減額の検討について検討すべき時かもしれない」と述べた。同総裁はFOMCでの投票権を持たないので市場の反応も限定的だったが、米連銀は前回FOMCにおいてテーパリング(量的緩和縮小開始)については「多くの参加者が今後開く会合のある時点で始めるべきだと発言した」と議事要旨で示している。米連銀議長や副議長、その他主要な連銀高官のこれまでの発言は忍耐強く金融緩和政策を継続するという姿勢の強調であり、あくまでも最近の物価上昇率上ブレについては一時的で落ち着く、という見方が主流だが、無視できない程度に物価上昇率の上ブレ感も強まってきているため、6月4日の米5月雇用統計において雇用の力強い回復も示されて平均時給等の上昇感が強まると、インフレの本格化への懸念を踏まえてテーパリング議論をそろそろ開始しなければならないという姿勢も強まる可能性がある。

米連銀は6月2日に新型コロナウイルス対策としての緊急市場安定化策で買い入れた社債を売却して保有量を減らし始めると発表している。この制度は年末に終了しており既定路線ではあるが、保有期間の延長等による緩和継続感を強調するのではなく売却をし始めることでやや引き締め感も漂わせる動きと思われる。米連銀はこの売却については「ゆっくりと秩序だって行う」としている。

米連銀の連銀景況報告(ベージュブック)では、5月下旬までの景気は「4月の前回から幾分速いペースで緩やかに拡大した」とし、供給障害や雇用確保の難航で物価上昇圧力が強まったとした。サンフランシスコ地区連銀は「景気が大幅に拡大した」とし、カンザスシティー連銀は「自動車等でサプライチェーン障害が継続し原材料も値上がりして企業に悪影響が出ている」とした。また「雇用も緩やかに回復し、企業の労働者需要に供給が追い付かず、特に低賃金の時間給労働者の新規採用が難しい状態が続いている」とも指摘された。この報告は5月25日までの統計によるもので、6月15-16日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)の討議資料となる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月28日夜高値でピークを付けて下落期入りしたが、6月1日午前安値の後は下げ渋りに入ったために2日朝時点では6月1日午前安値で目先の底を付けて反騰入りを試すところとした。2日夜に109.88円まで戻してから反落しているが、1日午前安値割れには至らずにいるのでまだ3日の日中から4日にかけての上昇余地が残るが、6月1日午前安値を割り込む場合は6月2日夜高値を目先のピークとした下落期入りとして4日の日中から8日の日中にかけての間への下落が想定される。

60分足の一目均衡表では2日夜の上昇で遅行スパンが好転したがその後の反落で悪化しやすい位置にある。6月1日午前安値割れを回避するうちは遅行スパンが好転を維持するか一時的に悪化しても再び好転するところからは上昇余地ありとするが、6月1日午前安値を割り込むところからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2日夜の上昇時に70ポイントを超えたがその後の反落で40ポイント台へ低下した。50ポイント台回復からは上昇再開余地ありとするが、40ポイント割れへ低下する場合は安値試しへ向かいやすくなるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月1日午前安値109.31円を下値支持線、2日夜高値109.88円を上値抵抗線とする。
(2)109.50円以上での推移中は109.88円超えから5月28日夜高値110.19円を目指す可能性があるとみるが、110円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)109.50円以下での推移に入る場合は109.31円試しとし、安値更新からは109円前後試しとみるが、109円前後は反発警戒と予想する。

【当面の主な予定】

6/3(木)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 55.74億豪ドル、予想 79.00億豪ドル)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 56.3、予想 56.2)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 61.8)
21:15 (米) 5月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (4月 74.2万人、予想 65.0万人)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 5.4%、予想 5.5%)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 40.6万件、予想 39.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 364.2万人、予想 361.5万人)

22:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 70.1、予想 70.0)
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 62.7、予想 63.0)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
26:50 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
28:05 (米) クォ―ルズFRB副議長、講演

6/4(金)
G7財務相会合(6/4〜6/5、ロンドン)
サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(6/4〜6/5)
国際決済銀行(BIS)等主催のる金融と気候変動巡る会議「グリーンスワン2021」(6/4〜6/5)
08:30 (日) 4月 全世帯消費支出 前年同月比 (3月 6.2%、予想 9.9%)
17:30 (英) 5月 建設業PMI (4月 61.6)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 2.7%、予想 -1.0%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 12.0%、予想 25.0%)

20:00 (米) パウエルFRB議長、BISパネル討論会参加
20:00 (欧) ラガルドECB総裁、BISパネル討論会参加
21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数変化 前月比 (4月 26.6万人、予想 65.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 6.1%、予想 5.9%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 0.3%、予想 1.6%)

※ポイント要約は編集部

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