109円をいったん割り込む、FOMC前の調整的な動き
〇ドル円、16日夕刻に109.28まで上昇後高値更新へは進めず108.76まで安値切り下げ
〇米指標は総じて不冴え2月小売売上高は前月比3.0%減、予想の0.5%減を大幅に下回る
〇18日未明の米連銀FOMCの声明発表、議長会見の内容とその後の長期金利動向に注意
〇109.25以下での推移中は一段安余地あり、108.76割れから108円台序盤を目指すとみる
〇109.25超えから109.36試し、高値更新から109円台後半を目指すとみる
【概況】
ドル円は3月15日午後に109.36円まで上昇して1月6日安値102.57円以降の最高値を更新したが、その後は109円台序盤でほぼ横ばいの推移にとどまり、16日夕刻に109.28円まで上昇するも新たな高値更新へは進めなかったことでポジション調整的な利益確定売りが急がれて109円を割り込み、21時半の米経済指標が総じて予想を下回ったことなどで22時台後半には108.76円まで安値を切り下げた。しかし為替市場の動きはドル安のものとドル高のものに分かれてまちまちの展開となり、米国株式市場も小動き、米長期債利回りも高止まりの範囲にとどまったことでドル円はさらに安値追及へ動くきっかけを得ず、深夜には109円到達まで戻し、17日早朝にかけては109円を挟んでほぼ横ばいの推移となった。
【米10年債利回り高止まり、ユーロ安でポンド高などドルストレートはまちまち】
3月16日の為替市場はまちまちの動きだった。ユーロドルは3月16日深夜に1.190ドルを割り込む一段安で米経済指標発表からも下げ足を速めたが、その一方でポンド/ドルは夕刻に1.380ドル台序盤へ急落した後は持ち直しを継続した。ユーロ/ポンドでのユーロ売りポンド買いの動きも影響したと思われる。また豪ドル米ドルは16日夕へ急落したものの15日深夜安値割れを回避して反騰した。メキシコペソや南アランドは対ドルで上昇した。これらのまちまちな動きをみればドル円の下落もFOMC前の利益確定売り優勢でいったん109円を割り込んだという状況だろう。
3月16日の NYダウは前日比127.51ドル安(0.39%安)と下落した。3月5日に前日比572.16ドルの大幅上昇となってから3月15日まで7営業日連騰となり、3月15日には3万2973.40ドルまで史上最高値を伸ばして一段高に入ってきたが、米経済指標がさえなかったことと18日未明のFOMC声明を控えて利益確定売りに押されて8営業日ぶりに前日比マイナスで終わった。ナスダック総合指数は11.86ポイント高(0.53%高)と小幅上昇、SP500指数は0.16%安だった。
3月16日の米10年債利回りは一時1.58%まで低下したがその後の持ち直しで前日比0.01%上昇の1.62%で終了、米30年債利回りは0.02%上昇の2.38%で終了した。3月12日に1.64%へ上昇して昨年3月来の最高水準を更新し、その後は上昇一服となっているが高止まりしている。2月25日へ1.61%へ急伸した後に1.40%前後で高止まりしてから一段高となり、3月5日に1.62%へ上昇してから1.47%までいったん下げたものの一段高してきたように、高止まりだとさらに水準を切り上げてゆく可能性も継続する。
米連銀FOMCは18日未明に声明発表、議長会見がある。3月5日未明のパウエル議長講演や他の連銀首脳の発言では、最近の長期金利上昇は景気回復を反映したもの、パンデミック前の水準を下回る範囲、インフレ率上昇も持続的になるまでは時間を要し現在の金融政策が適切、というスタンスが繰り返されている。米連銀は昨年から日銀や豪中銀などのようなYCC(イールドカーブコントロール)により長期金利上昇抑制には消極スタンスであり、今回のFOMCでも長期金利上昇への多少の懸念を示しつつも積極的な抑制姿勢は示さずに金融政策現状維持とするのではないかと思われる。その際に、米長期債利回りが上昇容認姿勢として一段と上昇するのか、いったん低下に向かうのか、それにより為替市場も大きく左右されると思われる。
米商務省が発表した2月の小売売上高は前月比3.0%減、市場予想の0.5%減を大幅に下回った。1月は7.6%増で速報の5.3%増から上方修正された。前月分の上方修正の影響による減少という印象だ。
米労働省が発表した2月の輸入物価指数は前月比1.3%上昇、市場予想の1.2%を上回ったものの1月の1.4%からは伸びが鈍化した。輸出物価指数は前月比1.6%上昇、市場予想の1.0%を上回ったものの1月の2.5%から伸びが鈍化した。
米連銀が発表した2月の鉱工業生産は前月比2.2%減で市場予想の0.3%増を下回った。1月の1.1%増(0.9%増から上方修正)から悪化したが、テキサス州などの大規模な寒波により物流に支障が出たことを反映したものと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月9日午前高値から4日目となる3月15日午後高値で直近のピークを付けて下落期に入ったと思われる。安値形成期は16日から19日にかけての間と想定されるので、早ければ16日深夜安値で底打ちした可能性があるが、15日高値を超えないうちは一段安余地が残るところ。3月15日高値を超えるところからは新たな上昇期に入るとみて18日から22日にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月16日夜の下落で先行スパンから一時的に転落したがその後は先行スパンへ潜り込んでいる。遅行スパンは16日夜に悪化し、その後も悪化が続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパン突破からは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月16日深夜の下落時に30ポイント台序盤へ低下した後は40ポイント台での推移となっている。50ポイント超えから続伸に入る場合は上昇再開とみて70ポイントに迫る上昇を想定するが、50ポイントに届かないか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、30ポイント割れからは20ポイント台序盤を目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月16日深夜安値108.76円を下値支持線、15日午後高値109.36円を上値抵抗線とする。
(2)109.25円以下での推移中は一段安余地ありとし、108.76円割れからは108円台序盤を目指すとみる。FOMC後にドル安が加速する場合は107円台後半へ下値目途を引き下げる。
(3)109.25円超えからは3月15日高値109.36円試しとし、高値更新からは109円台後半を目指すとみる。FOMC後にドル全面高となる場合は110円超えを目指す流れへ進むとみる。
【当面の主な予定】
3/17(水)
英中銀金融政策委員会(MPC)1日目
19:00 (欧) 1月 建設支出 前月比 (12月 -3.7%)
19:00 (欧) 1月 建設支出 前年同月比 (12月 -2.3%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数・年率換算件数 (1月 158.0万件、予想 156.0万件)
21:30 (米) 2月 住宅着工件数 前月比 (1月 -6.0%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 2月 建設許可件数・年率換算件数 (1月 188.1万件、予想 175.0万件)
21:30 (米) 2月 建設許可件数 前月比 (1月 10.4%、予想 -7.2%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見
30:00 ブラジル中銀、政策金利発表 (現行 2.00%、予想 2.50%)
3/18(木)
日銀・金融政策決定会合(1日目)
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 14.0%、予想 0.1%)
06:45 (NZ) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 0.4%、予想 0.5%)
09:30 (豪) 2月雇用統計・新規雇用者数 前月比 (1月 2.91万人、予想 3.00万人)
09:30 (豪) 2月雇用統計・フルタイム就業者数 前月比 (1月 5.9万人)
09:30 (豪) 2月雇用統計・労働参加率 (1月 66.1%、予想 66.2%)
09:30 (豪) 2月雇用統計・失業率 (1月 6.4%、予想 6.3%)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 275億ユーロ、予想 285億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 292億ユーロ)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 17.00%、予想 17.00%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE、英中銀) 税策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 8950億ポンド、予想 8950億ポンド)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 71.2万件、予想 70.2万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 414.4万人)
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 23.1、予想 24.0)
23:00 (米) 2月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (1月 0.5%、予想 0.3%)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動10年債入札
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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