米初のシリア攻撃で一時円110.13まで下落
日本時間午前に米国は使用を禁じられている化学兵器を使用したシリアの空軍基地に対し59発のトマホーク巡航ミサイルを発射、攻撃を加えました。
ドル円は一時リスク回避の動きから110円近辺まで下落したものの、反発。日経平均も一旦は売られたものの買い戻され67円高の18,664円で終了しています。
一方中東地域での地政学リスクの高まりは原油高に反応、原油先物は一時53ドルに接近しました。
今回のシリア攻撃の市場への反応は比較的限定的なものといえます。
トランプ政権の動きは今回も一貫性を欠き、予測不能性が深まったといえます。トランプ大統領は選挙期間中から前週まで一貫してシリアの問題に不介入の方針を示しており、化学兵器の使用があったとはいえ、方針の転換と攻撃実行は極めて「迅速」であったといえます。
唐突感のある攻撃は国内の失政から目をそらさせるための独裁的指導者の常とう手段といううがった見方ができないこともありません。
米国がシリアを直接攻撃したのは今回が初めて。オバマ政権では議会の承認が得られないとしてシリア攻撃を見送った経緯がありますが、今回は議会の事前承認を得ないでの攻撃であり米国内でも議論を呼びそうです。
米国の攻撃について日本、英独仏を含む西側主要国は即座にトランプ大統領支持を表明しました。
他方、ロシアとイランは米国を非難、プーチン大統領は米空爆を侵略とみなすと非難しており、ロシアはシリアの対空防衛を強化すると表明しています。
米ロの関係悪化は必至であり、シリアの内政にどの程度関与していくのか現時点では不明ですが、対応によっては泥沼に引き込まれる恐れもあります。
いずれにせよ当初親ロ政権とみなされたトランプ政権の現在の立ち位置は政権設立時には誰にも想像できなかったものでしょう。
一方で、タイミング的には米中首脳会談中の攻撃開始は、北朝鮮問題において中国に対する重大な圧力となったことは疑いのないところでしょう。
日本にとってはこの件への北朝鮮の反応が心配されます。シリアへの攻撃を見て北朝鮮が米国への挑発行為をやめる方向に動く可能性も無いことはありませんが、「抑止的」核武装を加速させたり、日本を含む米同盟国に先制攻撃を検討したりする懸念もあり、地政学リスクは東アジアにおいても高まったといえます。
ただ、今回の対応で米国はオバマ前大統領がためらいトランプ大統領自身も否定的であった米国の「世界の警察」としての役割に復帰したようにも見えます。今回の方針転換が米国の無関心から世界中に広がりつつあった無秩序への牽制となるのであれば、むしろ地政学リスクは低下すると見ることもできます。
米中首脳会談初日は、シリア攻撃で影が薄くなったように見えますが、初日の会談を終えて、具体的成果は何もなかったとトランプ大統領自身が伝えています。
この後21:30(訂正×22:30)に米雇用統計、非農業部門雇用者数の市場予想は18万人の増加。
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