トルコリラ円レポート月曜版
まず、先週の振り返り(ショートコメント)ですが、トルコリラ円は「29.00レベルをサポートに、31.00レベルをレジスタンスとする流れ」としました。実際のレンジは、安値が29.35レベル、高値が30.33レベルと、予想レンジ内の動きとなりましたが、思いのほか値幅は狭く落ち着いた動きだったという印象です。
先週はトルコ中銀の政策金利発表がありました。コンセンサスは政策金利と翌日物貸出金利が0.50%利上げされ、それぞれ8.50%と9.00%になるとの見方でしたが、結果は政策金利こそ変化はありませんでしたが、翌日物貸出金利は0.75%引き上げが行われ、これはコンセンサスよりも大きな引き上げとなりました。また後期流動性貸出金利(今年から使われている実質的な上限レート)の1.0%引き上げを見ると、全体としては想定通りです。
瞬間的には政策金利現状維持に反応しトルコリラを売ったものの、その他の金利を見て慌てて買い戻したというのが発表直後の値動きでした。25日にもコメントしたように、目立つ政策金利をいじらなかったのはエルドアン大統領の顔色を伺ったのではないかという気もするのですが、今後の金融政策では大きな環境変化が無い場合には、借入金利と政策金利には手を付けず、翌日物貸出金利と後期流動性貸出金利を調整してくる可能性があります。
さて、トルコの中銀は4つの基準金利を提示していますが、政策金利(1週間物レポレート)を中心に翌日物の借入金利を下限に同貸出金利を上限とするコリドー(廊下、基準金利の幅がある場合によく使われる用語)が昨年までの基準金利でしたが、今年から後期流動性貸出金利という4つ目の基準金利が登場しました。これは後期という言葉がわかりにくさを与えていますが、実質は遅い時間の翌日物貸出金利のことです。
遅い時間というのはトルコ金利市場における最後の1時間(16〜17時)を意味していて、ギリギリの時間の資金調整にはペナルティ金利が適用されるというのが本来的な設定のはずですが、どうも1月16日以降はトルコ中銀が市中の金融機関にこの後期流動性貸出金利での貸出を強いている様子で、そうだとすると貸出金利は以前の8.50%(先月までの翌日物貸出金利)から1月16日時点の後期流動性貸出金利である10.0%を経て、今回の同11.0%へと急速に利上げが行われていることと同じです。
トルコ中銀は、トルコリラ安が招く輸入物価の上昇によるインフレ懸念に警戒していることは確かですが、今後もトルコリラ安が続くとするならば、更なる後期流動性貸出金利の上昇は避けられないでしょう。元を辿ればインフレ懸念があったところに、クーデター未遂が起き、さらにエルドアン大統領の強権政治によってトルコの信用力が落ちと、中銀にとっては悪循環の根源が国内トップにあるというは皮肉なものです。
次にチャートをご覧ください。最近おなじみの4時間足チャート(上からトルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円)です。
トルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円4時間足
トルコリラ円の動きを見ると、ここ2週間ほどは落ち着いた動きを示し比較的狭いレンジにはあるものの着実に高値を切り下げています。3週前の金曜高値、先々週高値を結ぶと先週高値もそのレジスタンスライン(ピンク)で止められていて、今週も同ライン(現状、30.20レベル)を上抜けることは難しいのではないかと見ています。
いっぽう下値に関しては3週前に29.05という最安値がありますが、現状同水準に着実に近づいてきています。おそらく最安値を試す動きが今週当たりあるのではないかと考えられます。テクニカルなターゲットを短期に求める逆N波動の起点と戻しが、なかなか決めにくい形状のため、今回はフィボナッチ・プロジェクション(フィボナッチ戻しで100%を超えた水準まで計算する観測手法)を用いてみます。
すると、127.2%(161.8%の平方根)プロジェクションが28.56となり、28円台半ばがターゲットとなりそうです。今週は28.50レベルをサポートに、30.20レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
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