『ドル円は節目150円をついに下方ブレイク。来週は米経済指標に注目』
〇今週のドル円、週明け早々に高値154.72まで上昇後、週末にかけ安値149.47まで急落
〇トランプ次期大統領による中国、カナダ、メキシコへの関税を課すとのSNS投稿、米長期金利低下、
〇東京都区部CPIの予想を上回る結果、植田日銀総裁のタカ派発言と円安警戒発言等が重石
〇ユーロドル、週初1.0424まで下落するも、地政学リスク緩和等に週末にかけ一時1.0597まで上昇
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイント下抜け、強い買いシグナルも消失、テクニカルの地合い悪化
〇ファンダメンタルズは一巡後の期待させる材料揃う
〇今週の下落は米感謝祭前のポジション調整か
〇引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー153.00、(EURUSD):1.0300−1.0700
今週のレビュー(11/25−11/29)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初154.29で寄り付いた後、(1)一部メディアによる「イスラエルとヒズボラの停戦合意が近づいている」との観測報道や、(2)次期財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏による「自身の政策上の優先事項はトランプ大統領のさまざまな減税公約を実行すること」「世界の準備通貨としてのドルの地位を維持する」との見解発表(ベッセント氏はマーケットに深く精通していることから財政赤字拡大に伴う米国債利回り急騰などトランプ氏の政策に対する抑止効果があると見られていたが、同氏がトランプ氏と同じ方向を向いていることが明らかとなったことでドル円相場が反発)が支えとなり、週明け早々に、週間高値154.72まで上昇しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(3)米10月シカゴ連銀全米活動指数(結果▲0.40、予想▲0.20)の市場予想を下回る結果や、(4)米11月ダラス連銀製造業活動指数(結果▲2.7、予想▲2.4)の市場予想を下回る結果、(5)トランプ次期大統領による「中国から輸入される全製品に10%の追加関税を課す」「来年1/20の就任初日よりカナダやメキシコからの全輸入品にも25%の関税を課す」とのSNS投稿、(6)米11月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数(結果111.7、予想111.8)の市場予想を下回る結果、(7)米10月新築住宅販売件数(結果61.0万件、予想72.5万件)の市場予想を下回る結果、(8)米11月リッチモンド連銀製造業指数(結果▲14、予想▲11)の市場予想を下回る結果、
(9)米10月耐久財受注速報値(結果+0.2%、予想+0.5%)の市場予想を下回る結果、(10)米7ー9月期コアPCE改定値(結果+2.1%、予想+2.2%)の市場予想を下回る結果、(11)米7ー9月期個人消費改定値(結果+3.5%、予想+3.7%)の市場予想を下回る結果、(12)米11月シカゴ購買部協会景気指数(結果40.2、予想45.0)の市場予想を下回る結果、(13)米金利低下に伴うドル売り圧力、(14)テクニカル的な地合いの悪化(200日移動平均線の下方ブレイク)、(15)米感謝祭前のポジション調整、(16)本邦1月東京都区部消費者物価コア指数(結果+2.2%、予想+2.0%)の市場予想を上回る結果、(17)植田日銀総裁による「データが想定通りに推移しているという意味では(追加利上げの時期が)近づいているといえる」「インフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中銀にとってはリスクが大きい動きとして、場合によっては対応しないといけなくなる」との発言が重石となり、週末にかけて、週間安値149.47(10/21以来の安値圏)まで急落しました。
引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間11/30午前6時00分現在)では、149.65前後で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0426で寄り付いた後、(1)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりや、(2)レーンECB専務理事による「金融政策は長期間にわたって過度に制限的であることを避けるべき」「金利を段階的に引き下げるべき」とのハト派的な発言、(3)ラトビア中銀カザークス総裁による「12月にさらなる利下げが必要」とのハト派的な発言が重石となり、翌11/26にかけて、週間安値1.0424まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)一部メディアによる「イスラエルの安全保障内閣はレバノンとの停戦について協議へ」とのヘッドラインや、(5)米金利低下に伴うドル売り圧力、(6)シュナーベルECB専務理事による「さらなる利下げには慎重になる必要がある」とのタカ派的な発言、(7)米経済指標の冴えない結果、(8)米感謝祭前のポジション調整が支えとなり、週末にかけて、週間高値1.0597まで反発しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間11/30午前6時00分現在)では、1.0580前後で推移しております。尚、今週発表されたユーロ圏11月HICPコア速報値(結果+2.7%、予想+2.8%)は市場予想を下回る結果となりましたが、市場の反応は限られました。
来週の見通し(12/2−12/6)
<ドル円相場>
ドル円は11/15に記録した約3カ月半ぶり高値156.75(7/23以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて、一時149.47(10/21以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド)を下抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、(1)日銀による年内利上げ実施の難しさ(日銀による追加利上げ実施は株式市場の崩壊を招くリスクを孕んでいるため、足元のように政局不安が燻る中で追加利上げに踏み切ることは難しい)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の後退(次回FOMCでの据え置きの織り込み度合は依然として34%残存)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの継続期待(日米金利差に着目したドル買い・円売り)、(4)トランプトレードの本格化期待(米国のインフレリスク再燃→米金利上昇・米ドル買い)など、ドル円相場の一巡後の反発を期待させる材料が揃っています。
今週の下落は米感謝祭前のポジション調整と捉えることも出来ることから、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの再開(市場参加者が連休から戻るに連れてドル円相場が底堅さを取り戻す展開)をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米11月ISM製造業景況指数を皮切りに、米10月JOLTS求人件数、米11月ADP雇用統計、米11月ISM非製造業景況指数、米11月雇用統計、米12月ミシガン大消費者信頼感指数など、重要イベント目白押しの1週間(次回FOMCでの「利下げor据え置き」を判断する上で重要なインプットが得られる1週間)となるため、ドル円相場のボラティリティ急拡大に警戒が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):148.00ー153.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は11/22に記録した約2年ぶり安値1.0333(一昨年11/30以来の安値圏)をボトムに切り返すと、今週末にかけて、一時1.0597まで反発しました。但し、上方より複数のレジスタンスポイントが垂れ下がってきていることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「EMAベースの弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(上値余地は限定的。一巡後の反落リスクに要警戒)と判断できます。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(トランプ政権による関税政策が欧州経済に悪影響を及ぼすとの警戒感)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツを巡る政局不透明感。アルマン仏財務相は今週、「予算が可決されなければフランスが制御不能な状態に陥るリスク」と発言)、(3)ECBによる根強い追加利下げ観測(欧州経済の下振れ懸念を背景に次回ECB理事会での大幅利下げ観測残存。フランス中銀ビルロワドガロー総裁は今週「12月利下げの規模にはオープンな姿勢を維持すべき」と発言)、(4)トランプトレードの再開懸念(米金利上昇・米ドル買い)、(5)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。
来週予定されている一連の米主要経済指標が良好な結果を示す場合には、米金利上昇→米ドル買いの経路で、再びユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0300−1.0700
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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