ドル円週間見通し 一目均衡表基準線割れ・遅行スパン悪化、9月16日以降の上昇一巡による円高期(12/2)

感謝祭絡みの連休で薄商いとなる中で米長期債利回りの低下が続いたために30日未明に149.46円まで安値を切り下げ、週明けの円高継続感を保ったまま149.62円で週を終えた。

ドル円週間見通し 一目均衡表基準線割れ・遅行スパン悪化、9月16日以降の上昇一巡による円高期(12/2)

一目均衡表基準線割れ・遅行スパン悪化、9月16日以降の上昇一巡による円高期

〇先週のドル円、トランプ政権の財務長官人事とメキシコ・カナダ・中国に対する関税強化政策等に154円割れ
〇更にトランプトレードの巻き戻しの米金利低下、欧州通貨の反発もあり、28日未明150.46まで大幅続落
〇28夕一旦151.94まで戻すも、週末東京都区部CPIの上昇率拡大で150円割れ、149.46まで安値切下げ
〇今週は重要指標、イベント多く、結果を確認しながら日米金融政策、年末年始への相場の方向性占う
〇ドル円、7/3高値を頭、昨年11/13高値を左肩、今年11/15高値を右肩とした三尊天井型を形成か
〇149円割れから9/16以降の上昇幅に対する半値押し148.15前後への下落を想定
〇一段安する場合は3分の2押し145.39割れへ向かう流れとみる
〇目先は150.50台から151円手前を戻り売り有利とし、151円超えからは151円台後半への上昇を想定

【概況】

先週のドル円は11月22日に発表された米トランプ次期政権の財務長官人事や25日に示されたメキシコ・カナダ・中国に対する関税強化政策による先行き不透明感から25日に154円割れへ下落し、27日夜への下落で11月19日夕安値153.28円を割り込んで11月15日高値156.74円以降の下落が二段目に入って下げ足が速まった。トランプトレードによる米長期債利回り上昇が一巡して低下に転じ、9月後半からの下落が続いてきたユーロやポンドが22日から反騰入りしてドル安へ風向きが変わったことでドル売り円買いが勢い付き、28日未明に150.46円まで大幅続落した。
急落後の買い戻しで28日夕に151.94円まで戻したところを再び売られ、29日朝の11月東京区部CPI(生鮮食品除く総合指数)上昇率が前年同月比2.2%となり3か月振りに拡大したことで12月の日銀追加利上げの可能性が高まったとの見方から150円を割り込み、感謝祭絡みの連休で薄商いとなる中で米長期債利回りの低下が続いたために30日未明に149.46円まで安値を切り下げ、週明けの円高継続感を保ったまま149.62円で週を終えた。

今週は12月2日のISM製造業景況指数、3日の JOLTS(雇用動態調査)求人件数、4日のADP非農業部門民間雇用者数とISM非製造業景況指数、 パウエルFRB議長、討論会発言、5日の 中村日銀審議委員講演と会見、6日の米雇用統計と重要イベントが続き、FRB高官や地区連銀総裁らの発言も相次ぐ。それらの結果を見ながら12月17/18日のFOMC、12月18/19日の日銀金融政策決定会合への思惑が錯綜し、日米金融政策を踏まえて年末から年明けへの方向性が決まってゆくと思われる。

因みに、トランプ前政権時代の2017年から2021年1月までの間、ドル円は円高基調で推移した。2016年12月15日高値118.65円から(2020年3月のパンデミックショックによる一時的急落時の101.23円を除いて)2021年1月6日安値102.56円まで戻り高値を切り下げながら下降トレンドを形成した。トランプ前政権の保護主義とドル安による米国輸出産業へのテコ入れ、米中対立によるリスク回避が円高ドル安を招いたといえる。

【米10年債利回り低下続くドル円は相関して円高に】

11月29日の米長期債利回りは総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.09%低下の4.18%となり、11月15日に付けた年初来ピークである4.51%以降の最低とした。30年債利回りも前日比0.07%低下の4.37%となり11月18日に付けた4.68%以降の最低とした。政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.06%低下の4.17%となり25日から感謝祭休場を挟んで4営業日連続低下とし、11月22日に付けた4.38%以降の最低とした。

一方で29日のNYダウは一時45071.29ドルを付けて2日連続で取引時間中の史上最高値を更新し、前日比188.59ドル高の44910.65ドルで終値ベースの最高値を2日ぶりに更新した。ナスダック総合指数も27日に26日までの4連騰が途切れたが29日は前日比157.69ポイント高と上昇し、S&P500指数は18日から26日までの7連騰が途切れたものの29日は一時6044.17を付けて取引時間中の最高値を更新し、終値も2日ぶりに最高値更新とした。
トランプ次期政権による関税強化等に対する先行き不安があるものの、ヘッジファンド出身の財務長官人事により株式市場に好都合の流れが期待できるとの楽観が勝っている。
ドル円としては米国株高が日経平均の上昇に寄与すれば円安要因となるが、日経平均は円高に影響されて軟調な推移から抜け出せておらず、米長期債利回りが低下に転じたことと同調した円高が日経平均の上値を抑える負の連鎖となっている。

【基準線割れ、転換線とのデッドクロス、遅行スパン悪化で三尊天井形成気配】 

【基準線割れ、転換線とのデッドクロス、遅行スパン悪化で三尊天井形成気配】 

ドル円日足米大統領選でのトランプ氏勝利により関税強化等がインフレ再燃をもたらすとの見方で米長期債利回りが上昇し、11月14日にパウエルFRB議長が利下げを急がない姿勢を示したことでドル円は11月15日に156.74円へ上昇して9月16日安値139.57円以降の最高値とした。しかし、財務長官予定者が財政規律を重視しつつ株高に貢献する人物と評価され、関税強化問題も実施から着地時点では緩やかなものになるとの見方からトランプ・トレードが一巡して米長期債利回りが低下に転じてドル安となり、FRBもインフレ低下ペースがやや鈍っているとはいえ労働市場の悪化が顕著になれば12月利下げを決定して利下げサイクルもまだ暫くは継続だろうとの見方が復調したことでドル円の上昇も一巡し、9月16日からの大上昇に対する揺れ返しの円高期に入っている。

ドル円の日足チャートでは、今年7月3日高値を頭、昨年11月13日高値を左肩、今年11月15日高値をやや切り上がった右肩とした三尊天井型を形成しつつある。上昇トレンドの重要下値支持線とされる26日移動平均を割り込み29日には52日移動平均を割り込んでおり、一目均衡表では26日基準線を割り込み9日転換線とデッドクロスに入り、29日への続落で遅行スパンも実線を割り込む悪化に入った。
26日基準線割れからの続落で29日安値まで7.28円の下げ幅となり、昨年11月13日高値151.90円から12月28日安値140.24円まで下げ幅11.66円とした下落時や、7月3日高値161.94円から9月16日安値139.57円まで22.37円の下げ幅とした時の下落期前半に近い印象もある。
当面は11月15日高値156.74円までの上昇幅17.17円に対する半値押し148.15円を試す流れとみるが、米国の利下げ継続感で米長期債利回りの低下が続く一方で日銀の12月追加利上げの可能性が高まる場合には、3分の2押し145.39円や4分の3押し143.86円等を順次試して行く可能性も警戒される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、149円を下値支持線、151円を上値抵抗線とする。
(2)11月28日未明安値を割り込んで一段安に入っているため、当面は3日午前から5日午前にかけての間は下落が続きやすい時間帯とみる。149円割れからは9月16日以降の上昇幅に対する半値押し148.15円前後への下落を想定する。148円以下は反騰注意とするが、いったん戻した後に一段安する場合は3分の2押し145.39円割れへ向かう流れとみる。週末の米雇用統計前にいったん戻しても雇用統計を弱気で通過する場合は翌週も下落基調が続きやすいとみる。
(3)目先は150.50円台から151円手前を戻り売り有利とし、151円超えからは151円台後半への上昇を想定するが、1円高基調が崩れる情勢変化がみられなければ151円台後半で戻り一巡となり下落再開に入るのではないかと考える。

【当面の予定】

12/2(月)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 2.6%)
08:50 (日) 7-9月期 全産業設備投資額 前年同期比 (4‐6月 7.4%)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 4.4%、予想 2.0%)
09:30 (豪) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.1%、予想 0.4%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 50.3)
17:55 (独) 11月 HOCB製造業PMI・改定値 (速報 43.2)
18:00 (欧) 11月 HOCB製造業PMI・改定値 (速報 45.2、予想 45.2)
18:30 (英) 11月 S&PG製造業PMI・改定値 (速報 48.6)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 6.3%)
23:45 (米) 11月 S&PG製造業PMI・改定値 (速報 48.8、予想 48.8)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 46.5、予想 47.6)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 0.1%、予想 0.2%)
29:15 (米) ウォラーFRB理事、会議で基調講演

12/3(火)
06:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
08:50 (日) 11月 マネタリーベース 前年同月比 (10月 -0.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (4‐6月 -107億豪ドル,予想 -115億豪ドル)
24:00 (米) 10月 JOLTS(雇用動態調査)求人件数 (9月 744.3万件、予想 751.0万件)
26:35 (米) クーグラーFRB理事、講演
29:45 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、会議挨拶

12/4(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4‐6月 0.2%、予想 0.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4‐6月 1.0%、予想 1.0%)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 52.0)
17:55 (独) 11月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 49.4)
18:00 (欧) 11月 HOCBサービス業PMI・改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
18:30 (英) 11月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 50.0)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (9月 -0.6%)
19:00 (欧) 10月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (9月 -3.4%)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間雇用者数 前月比 (10月 23.3万人、予想 16.5万人)

22:45 (米) ムサレム・セントルイス連銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 S&PGサービス業PMI・改定値 (速報 57.0)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 56.0、予想 55.5)
24:00 (米) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.3%)
27:45 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、討論会
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

12/5(木)
09:30 (豪) 10月 貿易収支 (9月 46.09億豪ドル、予想 45.00億豪ドル)
10:30 (日) 中村日銀審議委員、広島で講演、14:30〜会見
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前月比 (9月 4.2%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注 前年同月比 (9月 1.0%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.5%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 2.9%)
22:30 (米) 10月 貿易収支 (9月 -844億ドル、予想 -750億ドル)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.3万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 190.7万人)

12/6(金)
08:30 (日) 10月 全世帯消費支出 前年同月比 (9月 -1.1%、予想 -2.7%)
14:00 (日) 10月 景気先行指数CI・速報値 (9月 109.1)
14:00 (日) 10月 景気一致指数CI・速報値 (9月 115.3)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -2.5%)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 -4.6%)
16:00 (独) 10月 貿易収支 (9月 170億ユーロ)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP・確定値 前年同期比 (改定値 0.9%、予想 0.9%)

22:30 (米) 11月 非農業部門就業者数 前月比 (10月 1.2万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 4.1%、予想 4.2%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前月比 (10月 0.4%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 平均時給 前年同月比 (10月 4.0%、予想 3.9%)
23:15 (米) ボウマンFRB理事、講演
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (11月 71.8、予想 73.0)
24:30 (米) グールズビー・シカゴ連銀総裁、討論会
26:00 (米) ハマック・クリーブランド連銀総裁、講演
27:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会
29:00 (米) 10月 消費者信用残高 前月比 (9月 60.0億ドル、予想 100.0億ドル)


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