パウエル議長の発言は想定線だが、トランプ氏とのバトルに注目
【今回のポイント】
〇 政策金利は0.25%引き下げ、下限4.50%、上限4.75%
〇 パウエルFRB議長は12月会合での利下げ実施を示唆
〇 トランプ次期政権の方針を窺う格好に
【FOMCの結果】
連邦準備制度理事会(FRB)は、11月6日−7日の連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利を下限4.50%、上限4.75%とそれぞれ0.25%引き下げた。FOMC声明は下記の通りである。
「最近の指標は経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを示している」
「今年初め以来、労働市場の状況は概ね緩和しており、失業率は上昇しているものの依然として低い」
「インフレ率は委員会の2%のインフレ目標に向けて進展しているが、依然としてやや高い水準にある」
「インフレ率の進展とリスクのバランスを考慮し、委員会はFF金利の目標誘導レンジを0.25%引き下げ、4.50−4.75%にすることを決定」
「FF金利の目標誘導レンジの追加調整を検討するに当たり、委員会は今後もたらされるデータ、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価する」
「委員会は雇用最大化を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む」
「委員会は、雇用とインフレ率の目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると判断」
「経済の見通しは不確実で、委員会は2つの使命の両面に対するリスクを注視している」
「金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する」
「もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」
「委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する」
「今回の金融政策決定は全会一致」
パウエルFRB議長が、FOMC後に行った記者会見での発言は下記の通り。
「FRBは中立金利の実現を急いでいない」
「財政政策をモデルに取り込むのは法成立の後」
「中立接近に伴い、利下げ減速が適切になる可能性も」
「今回の利下げを考慮しても、政策は依然景気に抑制的」
「利下げペースの調整について検討を始めたばかり」
「利回りを押し上げている要因については、これ以上言うことはない」
「FRBは財政政策についてコメントしない」
「今はフォワードガイダンスを多く行うのに良い時期ではないと考えている」
「削除した文言は利下げ開始に伴うものだった」
「我々はより中立的なスタンスへの道を歩んでいる、データが我々をどこに導くかを見守る必要がある」
「FRBはより中立的な姿勢への道を歩んでいる」
「12月の会合ではデータと見通しを注視する」
「最新のインフレ報告はひどくはなかったが予想より少し高かった」
「経済活動データは予想よりも好調」
「債券利回りがどこで落ち着くかを言うのは時期尚早」
「長期金利の上昇はインフレではなく成長の強さを反映しているようだ」
「政策は直面するリスクに対処するのに十分準備ができている」
「短期的には、選挙は政策に影響しない」
「我々は最大雇用と物価安定を達成するためにできる限りのことをする」
「我々は財政政策を推測したり、想定したりしない」
「ハリケーンやストライキがなければ雇用はやや増加」
「労働市場の状況は引き続き堅調」
「個人消費の伸びは引き続き堅調」
「最近の指標は経済が堅調に拡大していることを示唆している」
「FRBは会合ごとに決定を下し続ける」
「全体的なインフレ率は2%の目標にかなり近づいているが、コアはやや高いまま」
【市場の反応】
パウエルFRB議長の会見で、12月会合でも基本的には利下げ実施を示唆したことから、ほぼ事前の想定通りの内容となった。トランプ氏勝利でドル独歩高の展開となり、ドルインデックスは105水準まで上昇していたが、想定通りの利下げの方向性でドル高は一服した。一方、株式市場は、利下げを好感し主要3指数はそろって史上最高値を付けるなど引き続き強い相場展開となった。なお、大統領選でトランプ氏が勝利した直後のFOMCだったことで、記者からも様々な質問が飛んだが「(トランプ氏から)要請されても辞任しない」と明言した。
【今後、ドルはどう動く?】
ドルは対円では153円水準、ユーロ・ドルは1.07ドル水準で推移しており、ドル高は一服している。日米の選挙及び中銀会合の重要イベントを通過したことから、為替市場は落ち着きを取り戻しつつある。今後はトランプ次期政権の方針を見極める展開となりそうだ。大統領就任式は、2025年1月20日に実施される予定だが、トランプ次期政権の方針は随時伝わってくる可能性が高いことから、その内容を精査する必要がある。
トランプ氏は選挙戦のなかで、全ての輸入品に10−20%の一律関税を課し、もともと高い関税を課していた中国製品については60%まで関税を引き上げると主張。第一次トランプ政権時には、中国が大豆など米国産農産物に対して報復関税を課したほか、EUも米国産鉄鋼などに報復関税をかけたことから、今後、中国やEUなどが米国産の農産物や素材、工業製品に報復関税を示唆する可能性は十分ある。各国との貿易摩擦の影響を市場が織り込み始めるとドルの上値は重くなるだろう。
一方、トランプ氏の政策によって2025年にインフレが再加速することから、FRBの利下げペースが鈍化する可能性もある。8日時点のCMEグループが提供するFed Watchでは、今年最後の12月会合にて25bpの引き下げを予想する割合が82%から64%に低下し、据え置き予想が17%から35%に上昇した。Fed Watchは、要人発言や経済指標で大きく変化しやすい傾向があるため参考程度に見ておいた方がいいものの、利下げペースの鈍化は米金利高でドルしっかりの要因となる。
トランプ次期政権の方針を巡って、思惑が強まりやすい。今週14日に、パウエルFRB議長が講演を予定していることから、パウエルFRB議長の発言に対するトランプ氏の反応が気になるところだ。
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
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オーダー/ポジション状況
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