「金融政策の正常化」に踏み出すも追加利上げは先の話
【今回のポイント】
〇 マイナス金利の解除を賛成7、反対2の賛成多数で決議
〇 長短金利操作とETF等のリスク資産の新規買入れも終了
〇 長期国債の買い入れは継続
〇 植田日銀総裁は緩和的な金融環境が当面継続する点を明確に発言
【日銀会合の結果】
今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは、12時35分頃だった。昨年4月28日の植田日銀総裁が就任して初めての日銀会合以来の遅い発表(23年4月会合は12時53分)となった。
マイナス金利政策の解除を賛成7、反対2の賛成多数で決議したほか、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール(YCC))や、上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も終了した。一方、長期国債の買い入れは継続とし、金利急騰時には買い入れ額を機動的には増やすとした。
15時30分からの植田和男日銀総裁の記者会見での主なコメントは下記の通りである。
「YCC枠組みとマイナス金利はその役割を果たした」
「現時点の見通しが前提ならば、緩和的な金融環境が当面継続する」
「最近のデータなどから賃金と物価の好循環の強まりを確認」
「緩和環境を維持することが大事」
「長期金利が急激に上昇する場合は機動的に対応する」
「短期金利の上昇ペースは経済物価見通し次第」
「春闘の第1回回答、政策判断の重要なポイントとなった」
「大規模緩和の解除に必要なある種の閾値を超えた」
【市場の反応】
結果内容は、事前報道通りの内容に留まり、植田日銀総裁の記者会見も想定通りの「ハトは派」な内容となった。市場では、12時35分に「マイナス金利の解除」「YCC終了」「ETF等の買い入れ終了」が流れた際、為替市場、株式市場ともに目立った動きは観測されなかったが、12時39分に「緩和的な金融環境が当面継続」というヘッドラインが伝わったタイミングで、株式市場では日経平均が一気に切り返し、為替市場では円が主要通貨に対して弱い動きを見せる円全面安の展開となった。その後、13時30分過ぎに、ドルは150円台まで上昇。
15時30分からの植田日銀総裁の記者会見中、ドルは150円10銭から30銭での小動き推移だったが、総裁の「ハト派発言」で安心感や、これで「為替介入」以外の円高要因はなくなったとの見方が強まり、東京市場が休場の20日朝方、151円台までドル高円安が加速した。
【今後、円はどう動く?】
今回の決定内容は、事前の想定通りだったことでサプライズは皆無だったが、市場は日銀が「金融政策の正常化」に踏み出したことを再評価し、株式市場では、日経平均が大引で40000円台を回復するなど株高の反応を示した。
一方、為替市場では、今後も緩和は継続する方針で、今時点の消費者物価見通しなどの想定では「連続的な利上げはほぼ無い」「早くても10月会合で利上げを実施するのではないか」といった見方が強まっており、ドル買い円売りの流れが強まった。本来であれば「利上げする通貨は上昇」が一般的な話だが、「日本は利上げしたが、断続的な利上げは無いことから日米金利差は縮小しない」というロジックが「円全面安」の背景にある。
東京時間21日未明に、米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果は、市場の予想通り政策金利据え置きを決定した一方、米金融当局者の金利予測分布図(ドットチャート)は、昨年12月と同様、年内の中間金利予想で3回の利下げ予想が維持されたため米10年債利回りは4.2%台とやや低下した。
また、パウエルFRB議長が記者会見で、年内の利下げの可能性を再表明したほか、バランスシート縮小ペースを近々減速すると発言したことで、ドルは150円台に押し戻された。
FOMC後、一気に152円台に乗せ、政府・日銀が口先介入を強める展開はいったん回避されたが、日米中銀イベントを通過したことから、投機筋が再度円売りポジションを積み上げる可能性もある。4月中に152円台に乗せ、政府・日銀による口先介入との攻防を迎えると想定する。
【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】
以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。
【2023年】
1月18日(水)・・・11時33分終了、前回会合の方針を維持
3月10日(金)・・・11時23分終了、最後の黒田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持
4月28日(金)・・・12時53分終了、最初の植田日銀総裁の日銀会合、前回会合の方針を維持、金融緩和策のレビューを多角的に実施することを決定
6月16日(金)・・・11時40分終了、前回会合の方針を維持
7月28日(金)・・・12時21分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限を1.0%まで引き上げ)
9月22日(金)・・・11時45分終了、前回会合の方針を維持
10月31日(火)・・・12時20分終了、長短金利操作の修正を決定(長期金利の上限1.0%をメドに変更)
12月19日(火)・・・11時42分終了、前回会合の方針を維持
【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持
3月19日(火)・・・12時35分終了、マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・FOMC声明及びパウエルFRB議長は「3月利下げの可能性は低い」とけん制
3月19日−20日・・・2024年利下げ見通し「3回」変更無し、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日
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