ユーロ安トレンド継続を再確認
〇ECB、欧州インフレ懸念は深刻と見て、再利上げ後の引き締め維持という方向選ぶ
〇欧州の景気減速に視点移る、市場はユーロ安見通しが継続しやすいと判断
〇最悪の場合インフレ下の景気後退というリスクも。短期的にはユーロ円の利食い売りが出やすい流れ
〇今週は1.0590レベルをサポートに、1.0750レベルをレジスタンスとする流れを見る
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは前週までと異なり急速に利上げ思惑が高まる中でECB理事会を迎えることとなりました。米国CPIも先週の数字で底打ち後2か月ということになりましたが、それ以上に欧州のインフレ懸念は深刻と考えられていて、着実に下がってきてはいるものの依然として5%台であり、コアCPIは底打ち後2か月と米国CPIのような数字の出方となっています。
様々な要因はあるものの、前年の価格が既に下げていた時期との比較となり、原油価格など一部の価格は上昇していることを考えると引き締めを維持し続けないとインフレは収まらないと判断することとなりますし、ECBは一歩踏み込んでもう一回利上げをした後での引き締め維持という方向を選んだこととなります。
しかし既に欧州の景気は減速していることからECB理事会の声明やラガルドECB総裁の会見でも示された通り、今後の欧州の景気減速は一段と強まるリスクがあり、米国との金利差以上に欧州の景気減速に視点が移ってのユーロ安見通しが継続しやすいというのがECB理事会後の判断になったと言えます。
次にテクニカルな観点ですが、5月安値を下回り3月17日以来の安値をつけることとなりましたので、今週はユーロドルの週足チャートから見て行きましょう。
昨年安値と今年高値の押しを考えると、最初のターゲットは38.2%押しの1.0610でこちらはほぼ達成したと見てよいでしょう。次のターゲットは半値押しの1.0405となりますが、その手前の大台1.05が当面のサポート兼ターゲットと考えられます。またピンクの平行上昇チャンネルを明確に下抜けたことで、上値は同水準がレジスタンスとなってきます。
日足チャートもご覧ください。
高値からの平行下降チャンネル(青)の中で順調に下げ続けている動きです。逆N波動のターゲットは1.0601と週足で見たターゲットとほぼ一致しています。大台1.05まではまだ距離がありますので、今週のところは1.06割れを試す程度ではないかと見ています。上値は先週高値の手前1.07台半ばを考えます。今週は1.0590レベルをサポートに、1.0750レベルをレジスタンスとする流れを見ておくこととします。
今週のコラム
今週もユーロ円の日足チャートを見てみます。
これまでは円独歩安でしたが、植田総裁発言の真意は別にして海外勢は日銀の動向に敏感であること、またECBの利上げが逆に景気の減速を強め、最悪の場合インフレ下の景気後退というリスクも出てきたことから、短期的にはユーロ円の利食い売りが出やすい流れになってきたと言えるでしょう。
8〜9月の動きは着実に高値圏のリバーサルパターンを形成中ですし、9月安値を下回る動きになれば一段安を見ることとなるでしょう。現状はまだその可能性が高まってきたという段階ですが、注意しておくと良いと思います。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
9月18日(月)
18:00 デギンドスECB副総裁講演
9月19日(火)
18:00 ユーロ圏8月CPI
21:30 エルダーソンECB理事講演
9月20日(水)
15:00 英国8月CPI
15:00 ドイツ8月PPI
18:00 ユーロ圏7月建設支出
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
9月21日(木)
15:00 フランス9月企業景況感
16:30 スイス中銀政策金利発表
20:00 英中銀MPC・議事要旨公表
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値
23:40 シュナーベルECB理事講演
9月22日(金)
08:01 英国9月消費者信頼感
15:00 英国8月小売売上高
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国9月製造業・サービス業PMI速報値
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
9月11日(月)
ユーロドルはドル円のドルの動きに追随しながらも週末の植田日銀総裁発言を受けてユーロ円での円買いの動きも出ていました。振り返るとじり高の一日となりましたが、終日のレンジは52pipsに留まりユーロ円の動きがドル円とともに目立った週明けとなりました。
9月12日(火)
ユーロドルは東京市場ではドル円同様にドル買い(ユーロ売り)となっていましたが、インフレ率が高いことからECB理事会で利上げの可能性があるのではとの見方が増えてきていることから、NY市場ではユーロ買いの動きとなりました。
9月13日(水)
ユーロドルは前日の利上げ思惑によるユーロ買いの調整からNY市場まではじり安の展開を続けました。強い米国CPI直後には1.0711レベルの安値をつけましたが、振れはすぐに収まり1.07台前半で引けました。
9月14日(木)
ユーロドルは理事会のコンセンサスは現状維持であったものの今週に入ってから急速に利上げ思惑が広がり、やや現状維持の見方が多いもののほぼ五分五分といった状況でECB理事会を迎えることとなりました。結果は0.25%の利上げ。しかし発表直後も思いの外買われず、声明で金利が十分な水準に達したと利上げ終了と取れる内容だったこと、またラガルド総裁会見でも景気は今後低迷が続くと発言したことで、ユーロドルは発表前の1.07台前半から1.06台前半へと水準を下げ、上値が重たい流れでの引けとなりました。
9月15日(金)
ユーロドルは前日のECB理事会後の下げに対して、週末前の調整による買い戻しが目立ちました。NY市場では一時1.0688レベルの高値をつけましたが、引けにかけては売りも出てやや押しての週末クローズとなりました。
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