ドル円の年初来高値更新でトルコリラ円もドル高リラ安を気にしながら連騰
〇トルコリラ円、ドル円の138円台後半への続伸つれて上昇し、7円台到達
〇対ドル、5/18取引レンジは概ね19.81から19.66、取引時間中・終値ベースともに最安値更新を継続
〇外貨準備高大幅減少、トルコ中銀が非公式な市場介入を繰り返している影響か
〇6.96以上での推移中は一段高余地あり、7.00超えからは7.03から7.05の水準を試す上昇を想定する
〇6.96割れからは下落期入りとみて、6.93から6.90にかけての水準を試す下落へ向かうとみる
【概況】
トルコリラ円の5月18日終値は7.00円、前日終値の6.96円から0.04円の円安リラ高だった。取引レンジは概ね7.01円から6.95円。
対ドルでトルコリラの史上最安値更新が続いていることがトルコリラ円にとって大きな重石だが、ドル円が5月11日夜安値を起点とした上昇を勢い付かせて3月8日と5月2日の両高値によるダブルトップラインを突破して138円台後半へ続伸したことにより、トルコリラ円も7円台到達へ戻した。ベンダーによっては19日朝に7.06円の高値を提示するものも見られた。
ドル円は5月2日高値137.76円から5月5日安値133.46円へ下落し、いったん戻したところから5月10日の米CPI及び11日の米PPI発表から売られて11日夜には133.74円へ反落したが、その後は持ち直しに入り、12日夜のミシガン大5年期待インフレ率の上昇、16日の米4月小売と4月鉱工業生産の改善、地区連銀総裁らの利上げ継続へ向けたタカ派発言が相次ぐ中で上昇を継続し、18日も米フィラデルフィア連銀景況指数と週間新規失業保険申請件数の改善やFRB高官による6月利上げ継続の可能性を示唆する発言もあり138円台へ急伸した。
トルコリラ円は5月2日高値7.08円から5月5日未明安値6.85円へ下落し、いったん戻してから5月11日夜安値で6.83円へ下落して安値を更新し、ドル円が安値更新を回避した流れに追従できなかったが、ドル円が16日夜からの上昇を勢い付かせたことにより5月17日に6.97円(ベンダーによっては7.01円)へ上昇、18日もドル円を追いかけて続伸となり、終値としては5月2日以来の7円台到達となった。
トルコリラ円はドル円の大幅続伸につれて買われているところであり、目先はドル円を追いかける展開が続きやすいと思われるが、ドル円が連騰一巡で修正安に入る場合にはトルコリラ円も大きな反落となる可能性もあるところと注意したい。
【大統領選決選投票でのエルドアン氏優勢見通しを嫌気、対ドルで最安値更新続く】
ドル/トルコリラの5月18日終値は19.78リラ、前日終値の19.74リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。取引レンジは概ね19.81リラから19.66リラ。
5月14日のトルコ大統領選挙で現職のエルドアン大統領と野党統一候補のクルチダルオール氏が共に過半数に達しなかったために5月28日に決選投票となるが、1回目投票でエルドアン氏優勢だったことでエルドアン政権の継続への懸念が強まりリラ売りが勢い付いている。
手元のデータでは5月16日に19.74リラ、17日に19.78リラへと取引時間中の史上最安値を更新してきたが、18日は19.80リラ台へ到達した。ベンダーによってはすでに19.90リラ台の提示も見られる。また終値ベースでは16日の19.72リラ、17日の19.74リラから18日は19.78リラへと最安値更新を続けた。
5月19日午前序盤は19.81リラから19.62リラのレンジで推移しており最安値更新を伺っているが、1ドル20リラを超える場合はテクニカル的にも市場心理的にもリラ安が加速期に入ることも懸念される。
【外貨準備高大幅減少、ネットでは過去最低に】
5月18日に発表された週次の外貨準備高は5月12日時点のグロスで608.2億ドルとなり5月5日時点の684.1億ドルから大幅減少した。ネットでは23.3億ドルとなり5月5日時点の67.8億ドルから激減した。ネットでのこれまでの最低は2022年7月の60.7億ドルだったが大幅に割り込んで過去最低を更新しており、リラの暴落的な下落を抑制しようとしてトルコ中銀が非公式な市場介入を繰り返していることで外貨が事実上枯渇してきている印象だ。
2月6日のトルコ・シリア大地震後にサウジが50億ドルをトルコ中銀に預金したことで一時的に増加した局面もあったものの早々に増加分を解消してしまい、今後はリラ安が一段と進行してもトルコ中銀による介入余力も底が知れてしまっているため、リラ安に歯止めがかからなくなる可能性も懸念される。
トルコでは外貨保有の輸出関連企業に保有規制をかけて基準を超えた外貨をリラへ強制的に転換させる政策を採っており、一般預金者に対してはリラ建て預金における為替差損を財務省が補填する保護預金制度を取り入れてリラ安抑制を試してきたが、いずれも効果が長続きしていない。
また最近では安全資産のゴールドについては金融機関によるゴールドの販売に対してリラ建て国債保有比率を引き上げる等の抑制策も採っているが、エルドアン政権の半ば独裁的で中銀の独立性を阻害する金融政策と高インフレを嫌って有能な若者の国外逃避も顕著といわれている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月15日昼高値をサイクルトップとして16日夜から18日夜にかけての間への下落を想定し、17日午前時点では15日昼高値超えからは強気サイクル入りとしたが、18日早朝への上昇で15日昼高値を上抜いたため、18日午前時点では16日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして18日の日中から22日昼にかけての間への上昇を措定した。
5月19日朝へ一段高したところからドル円の反落と共に下落しているのですでにサイクルトップをつけた可能性があると注意し、7.00円超えからは上昇再開とするが、6.96円割れからは弱気サイクル入りとして19日夜から23日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5月17日の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているものの19日午前の反落により遅行スパンは悪化しやすい位置に来ており、既に26本基準線を割り込んでいるので下落期入りが疑われる。遅行スパン悪化からは安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が速まる可能性があると注意する。
60分足の相対力指数は5月18日夜に70ポイント台へ上昇してから50ポイント台序盤へ急落しているのですでに下落期に入った可能性があるとみる。60ポイント台回復からは上昇再開とするが、60ポイント以下での推移中は下向きとし、50ポイント割れからは30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6.96円を下値支持線、7.00円を上値抵抗線とする。
(2)6.96円以上での推移中は一段高余地ありとし、7.00円超えからは上昇再開として7.03円から7.05円にかけての水準を試す上昇を想定する。7.03円以上は反落警戒圏とするが、6.98円以上を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)6.96円割れからは下落期入りとみて6.93円から6.90円にかけての水準を試す下落へ向かうとみる。6.93円以下は反騰注意とするが、6.96円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
5月22日
16:00 5月 消費者信頼感指数 (4月 87.5)
23:30 4月 中央政府債務残 (3月 4兆4870億リラ)
5月24日
16:00 5月 製造業信頼感指数 (4月 108.0)
16:00 5月 設備稼働率 (4月 75.4%)
5月25日
20:00 トルコ中銀金融政策委員会 政策金利 (現行 8.5%)
5月28日 大統領選挙第二回投票
注:ポイント要約は編集部
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トルコリラ円の5月17日終値は6.96円、前日終値の6.91円から0.05円の円安リラ高となった。取引レンジは概ね6.97円から6.88円。
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