ドル円見通し 年初来高値更新で138円台後半、米長期債利回り連騰でドル全面高(23/5/19)

ドル円は5月2日高値を超えたところからテクニカルな買いを誘って急伸した。

ドル円見通し 年初来高値更新で138円台後半、米長期債利回り連騰でドル全面高(23/5/19)

ドル円見通し 年初来高値更新で138円台後半、米長期債利回り連騰でドル全面高

〇ドル円、5/19早朝138.74へ上昇、5/2高値137.76と3/8高値137.91を超え、1/16安値以降の高値更新
〇3/8と5/2の両高値によるダブルトップラインを突破、1/16安値を起点とした上昇が二段上げ型に発展
〇昨日発表の失業保険申請件数やフィラデルフィア連銀掲揚指数の改善が、ドル高を助長
〇FRB高官ら、インフレ抑制への姿勢を強調、6月利上げの可能性にも含み
〇米10年債・2年債利回りは先週末からの連騰を継続し5連騰、米株価も続伸
〇138円台を維持するうちは、139円超えから139円台中盤(139.30から139.70)への上昇を想定する
〇138円割れからがいったん下げに入るとみて、137円台中盤(137.70から137.30)への下落を想定する

【概況】

ドル円は5月19日早朝に138.74円へ上昇、日銀金融政策現状維持発表後の上昇で付けた5月2日高値137.76円及び3月8日高値137.91円を超えて1月16日安値127.22円以降の高値を更新、昨年12月15日高値138.17円へ反発した直後の12月16日以来の高値水準に達した。
5月16日夜の米小売売上高や鉱工業生産等が堅調で米地区連銀総裁らの利上げ継続の可能性を支持する発言が相次いだことでドル高が勢い付き、17日もその流れを継続したが、18日夜の米失業保険申請件数が3週ぶりに改善して市場予想を上回り、5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数も2か月振りに改善したこと、米連邦政府債務上限問題についてバイデン大統領と共和党マッカーシー下院議長が早期合意見通しを示したことで米長期債利回りは先週末からの連騰を継続し、ドル円は5月2日高値を超えたところからテクニカルな買いを誘って急伸した。

【3月8日と5月2日のダブルトップラインを突破】

ドル円は1月16日安値127.22円から3月24日安値129.63円へと底上げし、3月24日以降も安値を切り上げて5月2日高値137.76円で3月8日高値に迫っていた。5月4日未明のFOMCを通過していったん下げたものの133円台序盤から切り返してきたが、3月8日と5月2日の両高値によるダブルトップラインを上抜けた事で1月16日安値を起点とした上昇が二段上げ型に発展した。
1月16日安値から3月8日高値までの一段目における上昇幅は10.70円で、二段目も同規模と仮定すれば上値計算値は140.33円、3月8日高値から3月24日安値への下落幅の倍返しなら上値計算値は146.19円へ切り上がる。昨年10月21日にかけての歴史的な大上昇を再現するほどのファンダメンタルズではないとしても、米銀破綻をきっかけとした信用不安を引きずりながらも高インフレが収まらない中で米FRBが利上げ継続へ向かう可能性や利上げ状態の長期化への警戒感が長期債利回り上昇とドル高を再燃させている。

【失業保険申請件数やフィラデルフィア連銀掲揚指数の改善がドル高に寄与】

5月18日の米経済指標はまちまちだったが、失業保険申請件数とフィラデルフィア連銀景況指数の改善がドル高を助長した。フィラデルフィア連銀の5月製造業景況指数はマイナス10.4となり、4月のマイナス31.3から大幅に改善して市場予想のマイナス19.8を上回った。
米労働省による新規失業保険申請は5月13日までの週間で前週比2万2000件減の24万2000件となり、市場予想の25万40000件を下回って3週ぶりの改善となった。失業保険受給者総数も5月6日までの週間で179万9000人となり、前週から8000人減少して市場予想の181万8000人を下回った。

米不動産業者協会(NAR)による4月中古住宅販売件数(年換算)は前月比3.4%減の428万戸となり、2か月連続のマイナスで市場予想の430万戸を下回った。販売件数は前年同月比23.2%減、販売価格中央値は前年同月比1.7%値下がりで2012年1月以来11年3か月ぶりの大きな落ち込みだった。
米CB(コンファレンス・ボード)による4月米景気先行指数は107.5で3月から0.6%低下したが市場予想と一致した。CBは「先行指数が13か月連続の低下で今年半ばまでに緩やかなリセッションに入ると予想している」と述べており、景気減速感が続いているものの市場は深刻な不況感には至らずにいるようだ。

【FRB高官ら、6月利上げの可能性にも含み】

米FRBのジェファーソン理事は18日に、「インフレは依然高水準だが、これまでの急激な利上げ効果で需要が鈍化し、銀行破綻による信用不安での与信厳格化も見込まれている」としてそれらを踏まえて「適切な金融政策スタンスを熟考する」と述べたが、「インフレはなおも高過ぎる」「4月の個人消費支出(PCE)物価指数でもコアはほとんど改善を示さない見通し」としてインフレ抑制への姿勢を強調した。
ダラス連銀のローガン総裁は「インフレ抑制はある程度進展した」とし、「6月FOMCで利上げを飛ばす可能性がある」ものの「現時点ではまだその状況ではない」とした。信用不安については与信の厳格化が「0.25%から0.50%の利上げに相当する」としたが、「他の側面では3月以降も緩和している」として信用不安問題が利上げ継続を妨げないとの見解を示した。

セントルイス連銀のブラード総裁は「6月会合で利上げを停止するのか継続するかについてはオープン」としたが、「インフレは根強くいくらかの追加利上げが妥当な可能性がある」とし、「1970年代のようにインフレが下がらずにむしろ反転上昇する」可能性への懸念を示した。
5月18日時点の金利先物市場における6月の金利据え置き確率は64%だが先週末の90%から大きく低下しており、市場は利上げがあり得るとの認識を持っていることを示している。

【米10年債利回りは5連騰、NYダウは続伸】

米FRB高官や地区連銀総裁らのややタカ派的な発言が相次ぎ米債務上限問題の解決へ向けた楽観が強まる中で株買い・債券売りの影響もあり米長期債利回りは先週末からの連騰を継続した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.08%上昇の3.65%となった。5月12日から5連騰の上昇で、3月2日の4.09%から4月6日の3.25%まで下げた後の戻り高値だった4月19日の3.64%を上抜いた。
2年債利回りは0.09%上昇の4.26%となり5月12日から5連騰、3月8日の5.08%から3月24日の3.56%まで大幅低下した後の戻り高値である4月19日の4.29%に迫った。
一方でNYダウは前日比115.14ドル高と上昇して17日の408.63ドルからの続伸となり、ナスダック総合指数は188.27ポイント高で5月17日から3連騰、昨年10月13日安値10088.83ポイント以降の最高値を更新した。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月11日夜安値からの上昇が5月15日夕高値で一服したものの16日深夜へ一段高に入ったため、17日午前時点では16日夕安値で目先の底をつけて新たな上昇期に入ったとして5月22日夜にかけての上昇を想定した。19日早朝へ一段高しているためまだ上昇途中とみるが、連騰に対する反動安も警戒されるため138円割れからはいったん下げに入るとみて23日夜にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月16日深夜への上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンを上回る状況を継続してきたが、その後も両スパンそろっての好転を続けているので遅行スパン好転中は26本基準線を下値支持線として高値試し優先とする。遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみるが、先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とする。

60分足の相対力指数は5月17日深夜への上昇で80ポイントを超えてから反落したものの60ポイント割れを買われて18日夜には再び80ポイント台に到達した。高値更新が続けば指数は80ポイント台で上値が重くなりつつも60ポイント前後では買われる展開が続きやすいが、60ポイント割れから続落の場合はいったん調整安期に入るとみて50ポイント割れへの低下を想定する。ただし、50ポイント割れは買い拾われやすい水準とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.00を下値支持線、139.00を上値抵抗線とする。
(2)138円台を維持するうちは139円超えから139円台中盤(139.30円から139.70円)への上昇を想定する。139.50円以上は反落警戒とするが、138円台を維持するか、直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは22日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)138円割れからがいったん下げに入るとみて137円台中盤(137.70円から137.30円)への下落を想定する。137.50円以下は買われやすいとみるが、138円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/19(金)
休場 トルコ
G7サミット 広島市、5/21まで
13:30 (日) 3月 第三次産業活動指数 前月比 (2月 0.7%、予想 0.3%)
15:00 (独) 4月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (3月 -2.6%、予想 -0.5%)
21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
22:00 (米) ボウマンFRB理事、バンカーズコンベンション参加
22:55 (欧) シュナーベルECB理事、講演
24:00 (米) パウエルFRB議長、バーナンキ元FRB議長、討論会参加
28:00 (欧) ラガルドECB総裁、デコス・スペイン中銀総裁、ブラジル中銀主催会議参加



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