連日の史上最安値更新、9円を割り込む
〇トルコリラ円、11/23は10.11から8.47の取引レンジ、11営業日連続陰線で下落
〇エルドアン大統領の中銀利下げ擁護、米パウエル議長再任によるドル全面高でリラ安加速
〇追加利下げ要請の姿勢、2018年8月通貨危機的暴落時再現か、リラ防衛として利上げ強いられる可能性も
〇ドルトルコリラ、11/23は13.49から11.31の取引レンジ、連日史上最安値更新続く
〇トルコ11月消費者信頼感指数は71.1と過去最低、政権への批判強まる要因に
〇9.35以下での推移中は下向きとし、8.47割れからは8.00前後への下落を想定する
〇9.15から9.35にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の11月22日は10.41円から9.96円の取引レンジ、23日早朝の終値は10.08円で先週末終値の10.14円から0.06円の円高リラ安となった。11月23日は10.11円から8.47円の取引レンジ、24日早朝終値は8.97円で前日終値からは1.11円の円高リラ安となった。
トルコ中銀が高インフレが続く中で10月21日に政策金利を18%から16%へ大幅に引き下げたことをきっかけにリラ売り攻勢が強まり、10月25日にエルドアン大統領が欧米10か国大使の国外追放を指示したとの報道から11.50円へ史上最安値を更新、10月26日に12.10円まで戻したところから11月18日会合での連続利下げ予想を悲観して再び売られ始め、11月10日に10月25日安値を割り込んでからは連日の史上最安値更新となってきた。
11月18日にトルコ中銀は15.0%へと3会合連続の利下げを強行、大統領は「金利との闘い」を宣言して12月会合での追加利下げの可能性も高まっていたが、11月22日にはエルドアン大統領が中銀の利下げ擁護姿勢を改めて強調したことに加え、夜には米連銀のパウエル議長再任報道からドル全面高となったことでリラ安が一段と進行した。
11月23日にはエルドアン大統領の盟友ともいわれる連立政権を組む極右政党のバフチェリ党首がトルコ中銀の中立性への疑問と批判を述べたことでリラ売りはさらに増し、10円割れを買い支えられて下げ渋っていたところから堤防決壊的な暴落に見舞われた。前日終値からこの日の安値8.47円まで凡そ16%の暴落率となった。深夜に9円台序盤をいったん回復したものの維持できずに失速しており、底の見えない状況が続く。
11月9日から23日まで11営業日連続の陰線で下落、史上最安値更新は10日連続となった。
【対ドルでの史上最安値更新も続く】
ドル/トルコリラの11月22日は11.47リラから10.91リラの取引レンジ、23日早朝の終値は11.38リラで先週末終値の11.23リラから0.15リラのドル高リラ安となった。
11月23日は13.49リラから11.31リラの取引レンジ、24日早朝の終値は12.82リラで前日終値からは1.44リラのドル高リラ安となった。
連日の史上最安値が続く中、23日は夕刻に11.50リラをブレイクしたところからリラ売りの連鎖に入り12.0リラ台、さらに13.0リラ台へとパニック的な暴落となった。エルドアン大統領とトルコ中銀のカブジュオール総裁が緊急に会談したとの報道が入ったことで何等かのリラ防衛対策が講じられる可能性もあるとしていったん暴落にブレーキがかかり12.22円まで戻したが先行き不透明感は一段と増しており、12.70円を挟んでの最安値近辺でのもみ合いとなっている。
11月22日終値から23日高値までは18%を超える下落規模だった。日足は11月23日まで11日連続の陰線引け、最安値更新は10営業日連続となった。
【2018年8月の通貨危機的暴落時の再現】
エルドアン大統領は11月22日の会見で「金融政策を引き締めてもインフレは低下しない」「経済独立戦争で成功を収める」「国を弱体化させ、国民を失業と貧困に追いやる政策を拒否する」と述べた。中銀の金融緩和を擁護し、さらに追加利下げを要請するようなスタンスと市場は受け止めた。
11月23日にはエルドアン氏の盟友とされて連立政権の一翼を担う極右政党のバフチェリ党首が「中銀の独立性について議論が必要だ。政府がドラムを持ち、他者がスティックを持つのは受け入れがたい」と発言したと報じられた。先に突然解任されたテュメン前中銀副総裁も23日に「この理不尽な実験が成功する可能性は全くない」とツイートした。
状況としては2018年8月に通貨危機的な暴落により1週間で凡そ25%の下落率となった時以来のインパクトとなっているが、その時は緊急利上げにより24%まで政策金利を引き上げた経緯もある。今回もリラ防衛としてエルドアン大統領としては不本意ながらも利上げを強いられる可能性も取り沙汰されており、ソシエテゼネラルは来年1-3月期までに19%への引き上げ、ゴールドマンサックスは来年4-6月期に20%へ引き上げられる可能性があるとしている。
【消費者信頼感、過去最低に】
11月22日に発表されたトルコの11月消費者信頼感指数は71.1となり10月の76.8から悪化して過去最低となった。
2018年8月の通貨危機においては2018年7月の92.1から10月に78.8へと急低下したが、2020年のコロナショック時においては2019年5月に76.9まで低下して以降の水準を割り込むことなく確りし、2021年3月には86.7まで回復していた。しかし、3月にアーバル前総裁が解任されてリラ安が再燃する中で低下に転じて11月は前月から5.7ポイントの低下となる急落で2008年11月に付けた過去最低の73.9を下回った。金融政策姿勢への不信感が消費者の心理も悪化させている。物価高騰による生活支出への圧迫感も増しておりエルドアン政権への批判も強まるところと思われる。
【観光客数は前年比で2倍だが前々年比では8割】
11月22日にトルコ文化観光庁が発表した10月の海外からの観光客数は347万1540人で2020年10月の174万2303人からはほぼ倍増したが、コロナ前の2019年10月の429万1574人と比較すれば80%にとどまっている。
ワクチン普及による渡航制限が弛んだことで観光客は戻ってきているが、入国者のトップ5はロシアの26%、ドイツの14%、ウクライナの%、ブルガリアの5%、イランの4%であり、このうちロシアとドイツ、ウクライナ等の感染再拡大状況を踏まえると今後の伸びが鈍化しかねないと懸念される、またトルコの観光シーズン最盛期は夏秋であり、4月から増加して10月以降は鈍化し、11月から2月にかけては閑散期となる。
リラが暴落的に安くなっていることは観光客の買い物・消費には大きなプラスであり、リラ建ての見掛けの売上高は通常よりも増加する可能性があるが、景気拡大の起爆剤にはなりえないところか。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月18日のトルコ中銀金融政策決定会合を前にしての買い戻しと利下げからの一段安により、11月19日午前時点では18日午前安値を直近のサイクルボトム、18日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして23日夜から25日夜にかけての間への下落を想定した。大幅な変動率を伴って乱高下しつつも暴落商状を繰り返してきているのでまだ一段安余地ありとみる。また23日夜安値からいったん戻して再び失速しているため、23日夜安値を直近のサイクルボトムとして次の底割れから新たな弱気サイクル入りとなりボトム形成期が26日夜から39日夜にかけての間へ長引く可能性もあるとみる。
60分足の一目均衡表では11月2日に先行スパンから転落、11月9日午前の下落で遅行スパンが悪化してからは両スパン揃っての悪化が続いている。このため遅行スパンの悪化中は安値試し優先とし、遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は11月23日夜の暴落時に10ポイントを割り込んでから30ポイント台を回復している。尋常ではない暴落規模のため50ポイントに届かないうちはさらにもう一段安余地ありとみるが、50ポイント到達まで戻した場合はひとまず暴落商状が落ち着いたとみて戻りを試す流れへ進みやすくなるとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.47円を下値支持線、9.35円を上値抵抗線とする。
(2)9.35円以下での推移中は下向きとし、8.47円割れからは8.00円前後への下落を想定する。8.00円以下は反騰注意とするが、9円以下での推移なら25日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)9.15円から9.35円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。9.35円を超える場合は9.50円台への上昇を想定するが、その後に9円を割り込むところからはもう一段安へ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
11月24日
16:00 11月 製造業景況感 (10月 109.6)
16:00 11月 設備稼働率 (10月 78.0%)
11月25日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合議事要旨
20:30 週次外貨準備高 11/19時点 (11/12時点 867.0億ドル)
11月29日
16:00 10月 貿易収支 (9月 -25.5億ドル)
16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 101.4)
11月30日
16:00 7-9月期 GDP前期比 (4-6月 0.9%)
16:00 7-9月期 GDP前年同期比 (4-6月 21.7%)
12月03日
16:00 11月 消費者物価上昇率 前年同月比 (10月 19.89%)
12月16日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
注:ポイント要約は編集部
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