トルコリラ円見通し ムーディーズがトルコを格下げ、対円、ドル、ユーロで最安値近辺(20/9/14)

米格付け大手のムーディーズは9月11日にトルコの格付けを「B1」から「B2」に引き下げた。格付け見通しは「ネガティブ」を維持した。

トルコリラ円見通し ムーディーズがトルコを格下げ、対円、ドル、ユーロで最安値近辺(20/9/14)

ムーディーズがトルコを格下げ、対円、対ドル、対ユーロで最安値近辺

〇トルコリラ円、トルコ格下げの報道入り14.20を割り込み、12日早朝14.15まで下げる
〇対ユーロ、終値ベースで9/11終値8.85リラで史上最安値を更新
〇米ムーディーズ9/11トルコの格付けを「B1」から「B2」に引き下げ
〇トルコと対立のギリシャ、戦闘機ラファール購入等による軍備増強を発表
〇9/9午後安値14.11割れからは14.00前後への下落を想定
〇急落商状で14円割れからさらに続落の場合13.90前後へ下値目途引き下げ

【概況】

トルコリラ円は9月2日まで14.30円を維持しての持ち合いで推移していたが、9月3日朝の下落で14.30円を割り込み、その後は9月8日午後までは概ね14.20円を下値支持線として一段下がった持ち合いに入り、9月8日夕刻からの下落で14.20円台から転落して9月9日午後には14.11円まで安値を切り下げた。ドル円の動きが鈍い中でトルコリラが対ドル及び対ユーロでの史上最安値更新を続けたことでトルコリラ円の史上最安値となった8月10日安値14.07円に迫るところまで下落した。
9月1日夜から9月9日夜にかけてドル高が進んだため、ドル円がさほど動かない中でもトルコリラの対ドルでの下落がトルコリラ円を圧迫したことが9月9日午後へのトルコリラ円下落の背景だが、9月10日夜のECB理事会とラガルド総裁会見からユーロが反騰したことでドル高リラ安が緩んだためにトルコリラ円も10日深夜への上昇で14.28円まで戻した。しかしその後はユーロの反騰が続かず、ドル高がぶり返す中でトルコ格下げの報道も入ったために14.20円を割り込み、12日早朝は14.15円まで下げて週の取引を終えた。

トルコリラ円は流動性が薄いため、ベンダーによって8月以降の安値も異なるが、ロイター社ベースでは8月7日に14.29円まで最安値を更新した後、8月18日に14.235円、9月3日には14.231円、9月9日には14.11円へ最安値更新が続いている。8月10日のフラッシュクラッシュ的な安値を除けば既に総じて最安値更新に入っている状況といえる。

対ドルでのトルコリラは9月9日にかけてのドル全面高を背景に7.500リラへ下落して史上最安値を更新、10日未明に7.501リラまで安値を切り下げた後はユーロの反騰によるドル高一服で7.39リラまで反騰した。しかし11日はムーディーズの格下げ等を背景に7.48リラ台まで反落して最安値更新への余裕が乏しくなっている。
対ユーロでのトルコリラは9月10日夜のユーロ反騰時に8.88リラまで史上最安値を更新し、その後のユーロ反落でやや下げたものの11日の格下げ報道から8.87リラへ反落しており史上最安値に迫っている。また終値ベースでは9月11日終値8.85リラで史上最安値を更新している。

【ムーディーズがトルコ格下げ】

米格付け大手のムーディーズは9月11日にトルコの格付けを「B1」から「B2」に引き下げた。格付け見通しは「ネガティブ」を維持した。国際収支の危機が財政的余力を損なう可能性があるとし、「信用リスクが増す中で有効な手だてを講じることができておらずその姿勢もみられない」と指摘した。ムーディーズは2019年6月14日にトルコの格付けを「Ba3」から「B1」に引き下げたが、今回は追加の格下げとなる。
2018年8月のトルコ通貨危機に際しては、ムーディーズは8月17日に「Ba2」から「Ba3」に引き下げている。

トルコの格付けについては、8月21日にフィッチ・レーティングスが見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたが、トルコの信用格付けは投資適格級から3段階下の「BBマイナス」で据え置おいた。「ネガティブ」への引き下げ理由は外貨準備の減少と金融政策に対する信頼性の弱さが外国からの資金調達リスクを悪化させているためとした。
フィッチは2019年7月12日にトルコの格付けを従来の「BB」から「BBマイナス」に引き下げて見通しを「ネガティブ」としたが、その時は中銀総裁の更迭が中銀の独立性や経済政策の信頼性を損なうものと指摘していた。

トルコ中銀の次回金融政策決定会合は9月24日。3会合連続で政策金利を据え置いてきたが、エルドアン大統領の意向も踏まえて中銀は利上げを渋っている。9月3日に発表された8月の消費者物価上昇率は前年比11.77%で7月の11.76%から高止まりとなり、政策金利(週間レポレート)の8.25%を大幅に上回る実質マイナス金利状態が拡大している。外貨準備高が減少している中にあって利上げを躊躇すればさらにリラ安を招きかねず、格下げの圧力も増し、欧米投資家によるトルコ投資マネーの引き上げやトルコ国内投資家によるリラからハードカレンシーへの逃避も助長することになりかねない。

【景気回復への期待感を強めることができるか、鉱工業生産と小売統計に注目】

8月31日に発表されたトルコの4-6月期GDPは前年比マイナス9.9%、前期比でマイナス11.0%へ大幅に悪化した。9月10日に発表された6月の失業率は5月の12.9%から13.4%へ悪化した。7月以降はコロナ感染の拡大を抑制しつつ経済活動再開を優先してきたが、8月に入ってからは第二波ともいえる感染者増加が見られ、日々20人前後程度だった死者数も最近は50人前後へと増えており、経済活動への規制も再び強まりつつある。また世界的な感染拡大が止まないためにトルコにとって極めて重要な観光収入も激減したままとなっている。
9月14日には7月の鉱工業生産や小売売上高の発表があるが、景気回復感を助長するような良い数字にならないと先行き不安がトルコリラ安をさらに助長しかねないと懸念される。

【万人総弱気のなかで底を付けるのもまた相場】

トルコリラに関しては総じて弱気な材料が目立つ。黒海でのガス田発見報道が最近では唯一の好材料だったが、今は東地中海ガス田探査を巡るトルコとギリシャ及びギリシャ支援のフランス等との対立がトルコリラ安要因にもつながっている。フランス国防省は9月12日に仏ダッソー社制の戦闘機ラファール18機をギリシャ政府が購入すると発表した。ギリシャのミツォタキス首相は12日に戦闘機ラファールの他にヘリコプター4機とフリゲート艦4隻の新規購入等による軍備増強を発表している。
外貨準備の減少と実質マイナス金利状態の長期化、コロナ不況等に加えての地政学的リスクの増大が大きな圧力であり、対ドル及び対ユーロでの史上最安値も更新が続く状況にあり、さらなるリラ暴落の懸念も意識されるところだが、総弱気のなかで底を付けるのもまた相場の特性でもある。

今のところは8月中盤から徐々に崩れ始めている来ている状況であり、底打ちのための急落商状の発生と売り一巡感には至っていない印象だが、概ね4か月周期の底打ちサイクルで見れば前回の底から4か月を経過している現状は日柄的な突っ込み警戒圏に差し掛かっているところと考えられる。
底打ち間隔は平均値よりも短くもなり長くもなるものであり、数学的規則性があるわけではないが、強弱感を競う相場においても、売られ過ぎの反動、買われ過ぎの反動を繰り返す周期性は発生するものだ。4か月サイクルの底打ち期に来ている現状では、急落商状が発生した後には、例えば今年1月6日から1月17日へいったん戻したようなレベルで売り一巡後の反騰を発生させる可能性も持ち合わせている点に注意したい。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)9月9日午後安値14.11円から9月10日夜高値14.28円まで反騰した後に失速しているため、概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルで10日夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしている可能性が高いと考える。サイクルボトム形成期は14日午後から16日午後にかけての間と想定されるので、週明け序盤は安値試しへ向かいやすいとみる。また反騰入りしても15日夜から17日夜にかけての間へ戻した後はもう一段安を目指す新たな弱気サイクル入りへ進みやすいと考える。

(2)9月9日午後安値14.11円割れからは14.00円前後への下落を想定する。14.00円を割り込むところはいったん買い戻しも入りやすいところとみるが、急落商状で14円割れからさらに続落に入る場合は13.90円前後へ下値目途を引き下げる。
(3)9月9日午後安値前後の水準から反騰の場合はダブル底型形成で9月10日夜高値をもう一度試す可能性もあるが、戻り高値は切り下がり傾向を続けているため、9月10日夜高値には届かずに下落再開へ向かうとみる。

(4)6月2日高値16.23円からの下げ幅も現在までのところは2円を超えた程度だが、今年1月17日高値18.82円から5月7日安値14.61円までの下げ幅は4円を超えている。6月2日への戻り幅の倍返しなら13円を若干割り込む計算となる。そうした下落規模に発展しかねない状況にあるとして、下値に対して高を括らないことが大事だと思う。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月14日
 16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%、予想 1.8%)
 16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%、予想 5.6%)
 16;00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%、予想 1.0%) 
9月17日
 20:30 週次外貨準備高 9/11時点 (9/4時点 448.8億ドル)
9月21日
 23:30 8月中央政府債務残高 (7月 172.1億ドル)
9月22日
 16:00 9月消費者信頼感指数 (8月 59.6)
9月23日
 19:30 8月自動車生産台数 前年比 (7月 -11.8%)
9月24日
 16:00 9月製造業景況感 (8月 106.2)
 16:00 9月設備稼働率 (8月 73.3)
 20:00 トルコ中銀 政策金利発表 (現行 8.25%)
 20:30 週次外貨準備高 9/18時点
9月25日
 17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)  

注:ポイント要約は編集部

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