経常収支・貿易収支と為替相場
財務省より発表となった「平成27年中 国際収支状況(速報)の概要」によれば本邦の2015年度の経常収支黒字額は16兆6,413億円と前年比大幅増加(+13兆9,955億円)しました。
背景としては主として原油価格の下落に伴う輸入金額減少による貿易赤字の縮小(9兆7,582億円、うち原油天然ガスが約8兆円)や外国人旅行客の増加により黒字に転じた「旅行収支」、や「知的財産権使用料」を含む「サービス収支」の赤字縮小、「直接投資収益」「証券投資収益」の増加から昭和60年以降過去最大の黒字となった「サービス収支」が挙げられており、どの項目もそれなりに興味深いものがあります。
(財務省の公表資料より)
しかしながら為替市場はこのニュースをいつものとおりスルー、発表のタイミングではほぼ無反応でした。
日米貿易摩擦がかしましかった頃、毎月の貿易収支は立派な為替相場の材料であり、それなりに相場を動かす力があったように記憶しているのですが今は昔と言わざるを得ません。
しかし今や相場的には見向きもされない(?)この数字、本当に無視していいのでしょうか?経常収支や貿易収支は為替の需給の大きな部分を占めることに変わりはないはずで、
セオリー的には黒字拡大(赤字縮小)は潜在的には確実に円高方向への圧力となります。
そこで、1996年から2015年までの経常収支、貿易収支とドル円相場の年間平均レート(三菱東京UFJ銀行が公表しているもの)を同一グラフ上に置いてみました。
国際収支(経常収支・貿易収支)とドル円年間平均
(収支黒字→円安を前提としてドル円の縦軸は大小逆さまにしてあります)
しかし、一見してあまり形状に相関性が見られず、相関係数を計算してみても全く相関も逆相関もしていません。
「さすがに市場から無視されるだけのことはある」とあきらめず、形状を頼りにドル円の平均レートだけ一年手前にずらして見たのが次のグラフです。
国際収支(経常収支・貿易収支)とドル円年間平均(-1年)
上記のチャートのドル円部分だけを一年手前にずらしています。例えば2014年の欄にはドル円のみは2015年の平均レートが入っています。このチャートから推定されるドル円の2016年未来予想図は???
これも明らかな相関というほどのものは見られず数値的には相関係数もやはり低いものの、黒字増加、減少の分岐点とドル円の上昇下落のいくつかの分岐点が一致しているように見えます。(但し、2008-2009年のリーマンショック時、世界規模で有事の円買いがはたらいたときには国際収支の黒字減少と円高が同時に起こっています)
そこで「国際収支の黒字の増減は一年のタイムラグを経て為替レートの方向性に影響を与える」と大雑把にとらえてみるのは如何でしょう?
その観点から今回の国際収支を振り返ると、経常収支も貿易収支も2014年を底に黒字が急拡大(赤字縮小)しています。つまり為替も一年遅れて2015年を円安の底値に円高方向に転換するというシナリオ、検討の価値はないでしょうか???
こう考えると毎月の貿易収支発表が少し楽しみになりましたでしょうか。
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