ドル円 11月安値をトライしやすい流れ(週報11月第4週)

ドル円は月曜欧州市場で新型コロナワクチンのニュースに反応して一時的にリスクオンの円売りの動きとなったことを除けば、ほぼ一貫してドル売りが強い地合いが続きました。

ドル円 11月安値をトライしやすい流れ(週報11月第4週)

11月安値をトライしやすい流れ

〇ドル円週初ワクチン開発報道で一時上昇するも以後一貫してドル売り地合い、103円台後半でもみ合い
〇米政治の関心はジョージア州の上院選挙にシフト
〇ワクチンの経済への効果は早くても年明けか
〇株式市場は調整局面、ドル円も円高の動きに繋がりやすいか
〇短期ターゲットは11月安値103.16、中期的には102円台前半視野に
〇今週は103.10サポート104.20レジスタンスの週とみる

今週の週間見通し

先週のドル円は月曜欧州市場で新型コロナワクチンのニュースに反応して一時的にリスクオンの円売りの動きとなったことを除けば、ほぼ一貫してドル売りが強い地合いが続きました。週間安値は水曜につけた103.66レベルで、その後は104.30から上の水準ではドル売りオーダーが並んできたこともあって週後半は103円台後半でのもみあいとなっていました。

これまで材料のひとつであった米国大統領選は既にバイデン候補勝利の流れで進んでいて、ホワイトハウスと下院は民主党、残るジョージア州上院2議席の行方で議会にねじれが生じるのかどうかが決まるため、米国内も現在はジョージア州の決選投票に向けての活動に移っています。もともと共和党の地盤ですが、民主党との差が少なかったことで、どうなるのか全く見通せない状況です。仮に民主党が2議席とも取れば50:50で副大統領の1票が民主党に加わるため上院も民主党ということになりますが、現時点ではやや共和党が優勢です。まだ投票日まで1か月以上あるため、もう少し時間が経過してから考えたいところです。

そして、今年最大の問題となってきた新型コロナのワクチン開発は今月に入りファイザーとモデルナの2社がそれぞれ治験で95%程度有効との発表があり、株式市場はそれを材料に大幅高となりました。しかし、パウエルFRB議長発言の通りだと思いますが、まだ米国経済への効果を判断するのは時期少々です。ファイザーもモデルナも緊急使用許可申請を出していますので、現在の最短のスケジュールで12月10日にFDAの諮問委員会で許可、翌11日にCDCが接種範囲決定です。遅くとも12月中旬には米国におけるワクチン接種範囲がわかりますので、そこから実際にどうなるかを見て経済への好影響が出てくるとすれば年明けでしょう。

そうなると、様々なイベントが今度は年明けという流れになってきますが、年内は今週がブラックフライデー、そしてクリスマスシーズンへと向かいますので、米国の消費動向がどうなのか、そのあたりを見て株価に動きが出てきそうです。ただ、これまで米国株式市場をリードしてきたナスダックがNYダウとの動きにダイバージェンスが出ていることや、既にワクチン等の好材料を先取りし過ぎてきた感が強いことから、よほど強い材料が出て来ないと株式市場は調整の売りが出やすく、それが円相場においても円高の動きに繋がりやすいという先週の動きが今週も続きやすいでしょう。

また先週金曜にFRBの新型コロナ対策としての資金供給策の一部を財務省が延長を認めなかったことで、供給枠が来年から4兆ドルから2.05兆ドルへとほぼ半減します。実際にはほとんど使われてこなかった部分ということや、その分を財務省が新たな財政出動に回すということで市場の反応はありませんでしたが、アナウンスメント効果的には支援が縮小するというイメージは今後悪材料と取られるかもしれません。

次にテクニカルな観点です。日足チャートをご覧ください。

レジスタンスラインは先週の段階で引き直しましたが、大きな流れとして高値を切り下げる下降トレンドを継続していることに変わりはありませんので、ラインの位置そのものにはあまりこだわる必要はありません。これは値幅観測のターゲットが完全に一致はしないものの、かなり近いところで止まるのと同様に考えるのと同じです。

現状は11月安値と高値に対して既に78.6%(61.8%の平方根)の押しは達成していますので、次のターゲットは11月安値です。11月安値は、逆N波動(8月下旬の高値を起点に9月安値までの下げ、その後の10月高値の戻しを3点)による100%エクスパンション(青のターゲット)できれいに止められましたので、その次のターゲットとなると、127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションとなる102.36です。

短期的には11月安値を再度トライする流れを考えつつ、中期的には102円台前半を視野に入れる流れが出てくる可能性が高いと判断することが妥当でしょう。今週はまずは11月安値をトライする流れを考え103.10レベルをサポートに、ドル売りオーダーが控える水準の下となる104.20レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月23日(月)
**:** 東京市場休場
06:45 NZ7〜9月期小売売上高
17:15 フランス11月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ11月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏11月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国11月製造業・サービス業PMI速報値
22:10 シュナーベルECB理事講演
23:45 米国11月製造業・サービス業PMI速報値
24:30 英中銀総裁講演
28:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
29:00 (シカゴ連銀総裁講演)

11月24日(火)
16:00 ドイツ7〜9月期GDP改定値
16:45 フランス11月消費者信頼感、企業景況感
19:00 ドイツ11月ifo企業景況感
21:05 黒田日銀総裁講演
22:15 シュナーベルECB理事講演
23:00 米国9月住宅価格
23:00 米国9月ケースシラー住宅価格
24:00 米国11月消費者信頼感
24:00 米国11月リッチモンド連銀製造業景況指数
25:00 (セントルイス連銀総裁講演)

11月25日(水)
17:00 南ア10月CPI
18:00 オーストリア中銀総裁講演
19:00 南ア10〜12月期企業信頼感
22:30 米国7〜9月期GDP改定値
22:30 米国10月耐久財受注
24:00 米国10月個人所得・消費支出
24:00 米国11月ミシガン大消費者信頼感
24:00 米国10月新築住宅販売
24:30 週間原油在庫統計
28:00 FOMC議事要旨公表
30:45 NZ10月貿易収支

11月26日(木)
**:** NY市場休場
16:00 ドイツ12月GFK消費者信頼感
18:30 南ア10月PPI

11月27日(金)
08:30 本邦11月東京区部CPI
16:00 ドイツ10月輸入物価
16:45 フランス7〜9月期GDP改定値
16:45 フランス11月CPI速報値
16:45 フランス10月PPI
19:00 ユーロ圏11月消費者信頼感
**:** 米国主要取引所短縮取引

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月16日(月)
 週明けのドル円は前週末海外市場の流れを継続してドル売りが先行しました。欧州市場序盤には104.36レベルの安値をつけましたが、モデルナが新型コロナワクチン治験で94.5%の効果と発表したことで米国株が急騰、それを見てドル円もリスクオンの円売りの動きから一時105.12レベルの高値をつけました。しかし、105円台ではドル売りも根強くNY市場に入って発表された経済指標も弱かったことから上昇前の水準へ押した後はもみあいのまま引けました。

11月17日(火)
 ドル円は東京市場では動意薄の流れが続いていたものの、欧州市場に移ってから株価が下げに転じる動きとともに円高の動きとなりました。前日安値を下回るとストップオーダーも出てNY前場には104.06レベルの安値をつけましたが。104円はトライしきれず若干戻して引けました。

11月18日(水)
 ドル円は前日に続いて円がじり高の一日となりました。東京市場では上値の重たい日経平均が上値を抑え、海外市場に移ってからはドル円だけでなくユーロ円にも売りが目立ちました。欧州市場では一時的に利食いで買い戻される場面も見られましたが104円に乗せる程度で再び下げに転じNY昼頃には103.65レベルの安値をつけ、引けにかけてはやや買い戻されました。

11月19日(木)
 ドル円は東京から欧州市場前場にかけては週初からの下げに対するポジション調整によるドル買いが目立ちました。しかし104.30レベルよりも上にはドル売りオーダーが並んでいたこともあって104.22レベルを戻り高値に反落。NY引け間際には東京時間の安値103.72レベルまで押しての安値引けとなりました。

11月20日(金)
 金曜のドル円はまったく動かず、103円台後半21銭のレンジ内で方向感のないもみあいのまま一週間を終えました。

ディスクレーマー

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