『コロナワクチン期待は一巡。リスクオフの再開に要警戒』
〇ドル円は週初モデルナ社のワクチン開発の好結果に105.13まで上昇
〇その後は世界的コロナウイルス感染拡大からの株価下落で103.64まで急落、103.80で越週
〇ユーロドルワクチン期待のドル高に1.1813まで下落後冴えない米指標等で11/17に1.1895まで反発
〇ドル円一目均衡表基準線及び転換線、ボリンジャーミッドバンドを下抜け、テクニカルの地合い弱い
〇ファンダメンタルズもドル円相場の下落を想起させる構造的な不安材料多い
〇ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想(103.17を試す展開か)
〇ただし、本邦祝日、米感謝祭で市場参加者の減少が見込まれ総じて薄商いの一週間となるか
〇来週の予想レンジ(USDJPY):102.50ー105.00、(EURUSD):1.1700−1.1950
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初104.89で寄り付いた後、@米モデルナ社による「新型コロナワクチンの最終治験で94.5%の有効性が初期データから得られた」との発表や、A上記@を背景とした米主要株価指数の急騰(※前週の米ファイザー社のワクチン候補に関するポジティブな発表後の値動きと同様、米株上昇→米長期金利上昇→ドル高の波及経路)が支援材料となり、週明け海外時間に、高値105.13まで急伸しました。しかし、105円台では戻り売り意欲も根強く、伸び悩むと、B米11月ニューヨーク連銀製造業景気指数(結果6.3、予想13.9、前回10.5)の冴えない結果や、C新型コロナウイルスの感染拡大懸念(米国における新型コロナウイルスに係る入院者数が過去最多を更新。日本国内においても感染者数が連日で過去最多を更新)、
D株式市場の軟調推移(新型コロナワクチンに関する過度な期待感の後退)、E米長期金利の低下、F米10月小売売上高(結果0.3%、予想0.5%)の冴えない結果、Gニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁による「財政支援策が無ければ今後数ヶ月で経済活動が減速する可能性」との悲観的な発言が重石となり、週央にかけて、安値103.64まで急落しました。週後半にかけて持ち直すも戻りは鈍く、結局103.80近辺での越週となっております(今週は新型コロナワクチンに関する期待感以上に、足元の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済への悲観的な見方に焦点が集まった格好)。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1829で寄り付いた後、@米モデルナ社による「新型コロナワクチンの最終治験で94.5%の効果が初期データから得られた」との発表を受けたドル高を背景に、週明け早々に、週間安値1.1813まで下落しました。しかし、一目均衡表雲上限に続落を阻まれると、A冴えない米経済指標を受けたドル売り圧力や、B欧州連合と英国は「早ければ来週の合意を目指している」との一部報道(英ポンド上昇→ユーロ連れ高)が支援材料となり、翌11/17にかけて、週間高値1.1895まで反発しました。
もっとも、その後は、CラガルドECB総裁による追加緩和を示唆する発言(新型コロナワクチン開発の前進がECBの見通しを大幅に修正するものでは無いことを強調→予定通り12月に金融緩和に踏み切る可能性→ユーロ売り)や、D新型コロナウイルスの感染拡大(ユーロ圏の新規感染者数が過去最多を更新)、EECB当局者によるユーロ高牽制の思惑、F国際通貨基金(IMF)による「ドイツ経済はコロナ感染第2波の影響で下振れリスクが高まっている」との発表が重石となり、結局1.1860近辺まで押し返されての越週となっております。
来週の見通し(11/23−11/27)
<ドル円相場>
ドル円は、11/11に記録した高値105.68をトップに反落に転じると、今週半ば(11/18)にかけて、心理的節目104.00を割り込み、一時103.64まで急落しました。この間、一目均衡表基準線及び転換線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーも継続するなど、テクニカル的にみて、「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております(本稿執筆時点においても安値圏となる103.80近辺で上値の重い展開が継続)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地が残る米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(今週発表された米11月ニューヨーク連銀製造業景気指数や、米10月小売売上高が冴えない結果に)、B米中対立激化懸念、C朝鮮半島や中東、香港や中央アジアを巡る地政学的リスク、D新型コロナウイルスの感染拡大リスク(※新型コロナワクチン期待が一巡)、E日本経済の先行き不透明感(本邦における新型コロナ感染者数急拡大→本邦の景気先行き不透明感→デフレ懸念→円の実質金利上昇→円高)、F実体経済と株価の乖離(過剰流動性相場の巻き戻しリスク)、G米追加景気対策の後ずれ観測(財政の崖リスク)、H米財政赤字の拡大懸念(米国債の格下げリスク)など、ドル円相場の下落を想起させる構造的な不安材料は引き続き沢山残っている状態です。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、上値の重い展開が想定されます。@欧米株及び米長期金利の動向や、A新型コロナウイルス及びワクチン開発に関するヘッドライン、B米追加景気対策(新型コロナ対策法案が年内妥結に至るか否か)及び米大統領選挙の続報(トランプ氏による法廷闘争の恐れ)、C米国の主要経済指標の結果(11/25の米11月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米10月耐久財受注、米第3四半期GDP改定値、FOMC議事要旨、11/26の米10月PCEデフレータなど)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落(11/6に記録した約8ヵ月ぶり安値103.17を試す展開)をメインシナリオとして予想いたします(尚、来週は11/23が本邦祝日、11/26が米感謝祭となる為、市場参加者の減少が見込まれ、余程大きな材料が出てこない限り、総じて薄商いの1週間となりそうです)。
来週の予想レンジ(USDJPY):102.50ー105.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、11/4に記録した約3ヵ月半ぶり安値1.1603をボトムに反発に転じると、11/9には一時1.1920(9/2以来)まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表雲上下限を上抜けするなど、テクニカル的に見て、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(今週は1.1900をバックに伸び悩むも、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンド、一目均衡表雲上限より上側の水準をキープ)。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A世界的な貿易戦争再開リスク(欧米貿易摩擦懸念)、B欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大懸念(ロックダウン再開に伴う欧州経済の下振れ懸念)、CECBによる追加緩和観測(次回12月10日の会合での追加緩和観測)、D英国・EU間の交渉難航リスク、EECB当局者によるユーロ高牽制姿勢など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的な強さを残しつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。@欧米株及び欧米長期金利の動向や、A新型コロナウイルスの感染拡大状況(ロックダウン再開に伴う欧州経済の下振れリスク)、B新型コロナワクチンに関する続報、C欧州圏の主要経済指標の結果(11/23のユーロ圏11月製造業及びサービス業PMI速報値、11/24のドイツ11月ifo景況指数など)、D英国と欧州連合の通商交渉におけるヘッドラインを睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1700−1.1950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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