ドル円、約8ヵ月ぶり水準へ急落。欧米株の上昇を背景にドルは全面安の様相
〇ドル円一時103.44まで急落、3/12以来の安値
〇米政治不透明感後退によるドル売り戻し、パウエル議長のハト派発言が要因
〇ユーロドルリスク選好のドル売りに一時1.1859まで上昇
〇ドル円テクニカル、ファンダメンタルズともに下落リスク警戒される
〇ドル円相場の下落がメインシナリオ
〇本日の予想レンジ:103.00ー104.00
海外時間の為替概況
5日(木)の外国為替市場でドル円は急落。@米政治の不透明感後退に伴うリスク選好のドル売り(欧米株上昇→ドル全面安)や、A心理的節目104.00を割り込んだことに伴うロング勢のロスカット、BパウエルFRB議長によるハト派寄りの発言(日本時間早朝4時に発表された米FOMCで予想通り政策金利は据え置かれるも、その後の記者会見でパウエルFRB議長は「経済の下振れリスクが拡大していることを懸念」「追加の金融・財政支援が必要になる公算が大きい」「12月に経済見通しを修正する予定」と弱気なコメント→米追加緩和観測再燃→ドル全面安)が重石となり、米国時間午後にかけて、3/12以来、約8ヵ月ぶり安値となる103.44まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5時30分現在)では、103.50近辺で推移しております。
5日(木)のユーロドル相場は急伸後に伸び悩む展開。@米政治の不透明感後退に伴うリスク選好のドル売り(欧米株上昇→ドル全面安)が支援材料となり、米国時間朝方にかけて、高値1.1859まで急伸しました(10/26以来、約2週間ぶり高値)。しかし、10/21に記録した直近高値1.1882をバックに伸び悩むと、A欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大(大半の地域でロックダウン再開)や、B欧州委員会による経済見通しの下方修正(2021年の見通しを前回の6.1%から4.2%へ大幅下方修正)、Cドイツ連銀バイトマン総裁によるハト派的な発言、DECB当局者によるユーロ高牽制への警戒感が重石となり、本稿執筆時点(日本時間5時30分現在)では、1.1825近辺まで反落する展開となっております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、10/7に記録した約3週間ぶり高値106.12をトップに反落に転じると、昨日は約8ヵ月ぶり安値となる103.44まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い売りシグナルを表す一目均衡表三役逆転や移動平均線のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的にみて、「地合いの弱さ」を強く印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C朝鮮半島や中東、香港や中央アジアを巡る地政学的リスク、D新型コロナウイルスの感染拡大(欧米を中心にロックダウン再開→欧米経済の先行き不透明感→リスク回避ムード再燃)、E日本経済の先行き不透明感(本邦の景気先行き不透明感→デフレ懸念→円の実質金利上昇→円高)、F実体経済と株価の乖離(過剰流動性相場の巻き戻しリスク)、G米追加景気対策の後ずれ観測(財政の崖リスク)、H米財政収支赤字の拡大(米債の格下げリスク)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます(リスク選好時はドル売り主導、リスク回避時は円買い主導で、ドル円はいずれの場合も下落リスクが強まり易い)。米大統領選挙に関する続報や、新型コロナウイルスに関するヘッドライン、欧米株及び欧米長期金利の動向、米主要経済指標の結果(米10月雇用統計など)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(8ヵ月ぶり水準へ下落したことで、本日のアジア時間は当局より「為替レートを注視している」といった口先介入が出てくる可能性があるが、下落トレンドは不変と予想)。
本日の予想レンジ:103.00ー104.00
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
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