欧州のロックダウン再開、米大統領選挙情勢の混迷、円の立ち位置定まらず
〇ドル円先週104円割れ回避で円高加速の動き一旦止まる
〇欧米でのコロナ感染拡大の勢い収まらず、トランプ巻き返しで米大統領選の不透明感も強い
〇ドル円方向感を失うも小さなきっかけで急落のリスク孕む
〇105.05を超え続伸、105.25もクリアすれば105.74を目指す展開
〇104.00、103.90を割り込む場合は103円台前半さらに102円台への下落へ向かう流れか
【概況】
ドル円は10月28日にかけての下落で10月15日安値を割り込む一段安となり、29日夜には104.02円まで安値を切り下げて9月21日安値103.99円に迫ったが104円及び9月21日安値割れを回避した。30日早朝には104.72円まで戻して29日夜へ一段安する前の29日午後高値を超えたが、30日午後には104.12円まで再び反落、その後にまた持ち直して30日深夜には104.74円を付けて30日早朝高値を超えてきた。
29日夜へ一段安したところではさらに104円割れ、9月21日安値を割り込んで円高感が強まりかねない情勢だったが、為替市場全般の方向感が定まらない中で底割れから円高を加速させる動きはいったん仕切り直しとなり、逆に戻り高値を切り上げる結果となった。
10月28日以降の値幅は1円に満たずに日足で見れば小動きの範囲であり、10月26日夜の105円到達からの下落一服で揉み合っている状況に過ぎないが、欧州の感染拡大深刻化と独仏英でのロックダウン再開による欧州リスク、米国でも1日の感染者増加が10万人を超える規模となり米大統領選挙情勢も混迷するという米国リスク、金融市場全般が不安定な状況に陥る中でドル円においてはドルストレートからのドル高圧力が強まったり弱まったりしつつ、クロス円としてのリスク回避的円高への傾斜圧力もかかりつつ、方向感を探る状況となっている。
【米国リスクと欧州リスク】
NYダウは10月28日に前日比943.24ドル安(3.4%安)の大幅下落となり9月24日安値を割り込んだ。このため9月3日高値と10月12日高値をダブルトップとした下落期入りの印象が強まっている。29日には安値を更新してから139.16ドル高と下げ渋りを見せたが、30日は高安レンジで600ドル近い乱高下となりながら157.51ドル安で10月12日以降の安値も切り下げた。ナスダック総合株価指数は274ポイント安(2.45%安)と大幅下落した。9月21日安値割れには至っていないのでまだダブルトップは完成していないが、3月以降のアフターコロナ復興期待相場を先頭でけん引してきたナスダックが9月21日安値を割り込む下落へ進むようだと、3月のコロナショック暴落の再現へ進みかねないところだ。
10月29日には米国の感染者数が8万8500人を超えて過去最大となったと報じられたが、10月30日には10万人を超えたとの集計を示す統計サイトもある。
11月3日の米大統領選挙では、バイデン氏有利との情勢分析が続いているものの、4年前の様に不利の下馬評をひっくり返したトランプ氏が再び巻き返している可能性も否定できず、感染拡大の影響で増えている郵便投票が7千万人を超えており、その内容と開票集計に時間がかかるのではないかとの見方も選挙結果を読み切れなくしている。12月まで勝者の決着がつかない状況となる可能性も指摘されている。感染拡大と大統領選挙の行方、いずれも米国リスクであり金融市場全般の動向が読めない、リスク回避に走らざるをえないが、より安全な現金化=手仕舞い売りが全般に広がっている印象だ。株安なら安全資産として債券買いとなり長期債利回りは低下するところだが、30日は債券も売られて米10年債利回りは前日比0.06%上昇の0.88%となり6月上旬以来の高水準となっている。
欧州ではスペインが二度目の非常事態宣言に入り、28日にドイツとフランスの全土ロックダウンを再開、ベルギーが30日に、英国も31日にロックダウン再開を宣言した。フランスは25日に5万2千人を超えた後も30日には4万9千人を超える増加数で累計は136万人超となっている。スペインは126万人超、英国も連日の2万人超えの増加で累計100万人を超えてきた。ドイツはまだ累計53万人だが30日に1万9千人増となり3月27日の第一波のピーク6933人から3倍近い増加数に至っている。
10月29日のECB理事会は金融政策を現状維持としたが12月会合では金融緩和拡大へ進む姿勢を示した。11月5日には英中銀の金融政策決定会合があり量的緩和拡大が見込まれている。11月3日の米大統領選も混迷だが、英国とEUのFTA協議も延長戦に入っているが未だ合意に至らずにいるが、11月第1週がソフトランディングのための限界とも言われており、ハード・ブレクジット問題が年末へ向けて感染拡大と共に欧州リスクとして大きな問題となる可能性もあるところだ。
【方向性を失う為替市場】
為替市場の動きは乱調な印象となっている。ユーロドルは30日深夜に10月21日以降の安値を更新して下落基調が比較的鮮明だ。ポンド/ドルは29日深夜安値から持ち直しているが、10月21日深夜高値以降の右肩下がりの展開の範囲で28日からは乱高下を繰り返している。感染抑制に成功したことを背景に28日までは上昇基調を維持していた豪ドルは28日から急落したが30日深夜へいったん戻してから反落するなど波乱含みの動きであり、NZドル米ドルも同様の動きとなっている。
新興国通貨ではトルコリラの史上最安値更新が連日続き、南アランドやメキシコペソも27日まではドル安基調で推移していたところからドル高へ反転、その後にドル安へ揺れ返す等乱調だ。為替市場全般がすっきりした方向性が見えない状況ともいえる。
ドル円も9月21日安値割れをひとまず回避しているものの、円安ドル高へと向かうほどの勢いを示すには至らず、ちょっとした衝撃でも安値更新から急落商状に陥っても不思議ない動きの位置にあると思われる。
【当面のポイント】
欧米株式市場も為替市場及び債券市場も全般的に神経質で不安を抱えた状況で米大統領選挙、欧米感染拡大関連報道等を見ながら年末へ向けた展開をイメージしつつ情勢判断をするところと思われる。流れが見えれば年末から越年の上昇基調に乗るか、年末年始底形成への下落基調に入るのか、各市場一斉に動きだすのだろうと推察される。
ドル円としては3月以降の右肩下がりの展開を続けて9月21日安値を割り込む一段安へ入るのか、底割れ回避かわずかに安値を更新する程度にとどまってダブル底形成から持ち直しに入るのか、試されてゆくところと思われる。
(1)当面、10月26日夜高値105.05円から105.25円を上値抵抗帯、10月29日夜安値104.02円から103.90円迄を下値支持帯として逆張り的な騰落で推移するものと考える。
(2)10月26日高値を超えて続伸に入り、105.25円もクリアしてくれば10月20日夜高値105.74円を目指す上昇、さらに高値を切り上げてゆく可能性も出てくると思われる。
(3)104円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、急落商状で104円、103.90円を連続的に割り込む場合は一段安入りにより103円台前半、さらに102円台への下落へ向かう流れと考える。(了)<1日18:00執筆>
【当面の主な予定】
11月1日から米国は冬時間入り
11/2(月)
休場、メキシコ、ブラジル、フィリピン
06:30 (豪) 10月 AiG製造業景況指数 (9月 46.7、予想 47.0)
06:45 (NZ) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 0.3%)
09:30 (豪) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 -1.6%、予想 -0.9%)
10:45 (中) 10月 財新製造業PMI (9月 53.0、予想 52.8)
17:55 (独) 10月 製造業PMI改定値 (速報 58.0、予想 58.0)
18:00 (欧) 10月 製造業PMI改定値 (速報 54.4、予想 54.4)
18:30 (英) 10月 製造業PMI改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
23:45 (米) 10月 製造業PMI改定値 (速報 53.3)
24:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 55.4、予想 55.6)
24:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 1.4%、予想 1.0%)
11/3(火)
休場、日本
米大統領選挙、議会選挙
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、政策金利発表 (現行 0.25%、予想 0.10%)
24:00 (米) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 0.7%、予想 0.5%)
11/4(水)
休場、ロシア
英中銀金融政策委員会(MPC)1日目
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
06:45 (NZ) 7-9月 期就業者数増減 前期比 (4-6月 -0.4%)
06:45 (NZ) 7-9月 期就業者数増減 前年同期比 (4-6月 1.2%)
06:45 (NZ) 7-9月 期失業率 (4-6月 4.0%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
08:50 (日) 10月 マネタリーベース 前年同月比 (9月 14.3%)
09:30 (豪) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -4.0%、予想 -1.5%)
07:00 (豪) マークイットサービス業PMI確報 (速報 50.8)
11:45 (中) 10月 財新サービス業PMI (9月 54.8、予想 55.0)
17:55 (独) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 48.9、予想 48.6)
18:00 (欧) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 46.2、予想 46.2)
18:30 (英) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 52.3、予想 52.3)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前月比 (8月 0.1%)
19:00 (欧) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 -2.5%)
22:15 (米) 10月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (9月 74.9万人、予想 73.8万人)
22:30 (米) 9月 貿易収支 (8月 -671億ドル、予想 -644億ドル)
23:45 (米) 10月 サービス業PMI改定値 (速報 56.0)
24:00 (米) 10月 ISM非製造業景況指数 (9月 57.8、予想 57.5)
11/5(木)
09:00 (NZ) 11月 NBNZ企業信頼感 (10月 -14.5)
09:30 (豪) 9月 貿易収支 (8月 26.43億豪ドル)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前月比 (8月 4.5%、予想 2.0%)
16:00 (独) 9月 製造業新規受注 前年同月比 (8月 -2.2%、予想 -1.1%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前月比 (8月 4.4%、予想 -0.5%)
19:00 (欧) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 3.7%、予想 3.5%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 7450億ポンド、予想 8450億ポンド)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、会見
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (4-6月 10.1%、予想 3.4%)
22:30 (米) 7-9月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (4-6月 9.0%、予想 -9.9%)
22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 75.1万件)
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 775.6万人)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、会見
11/6(金)
06:30 (豪) 10月AiGサービス業PMI (9月 36.2、予想 37.0)
08:30 (日) 9月 全世帯消費支出 前年同月比 (8月 -6.9%、予想 -10.3%)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、四半期金融政策報告
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -0.2%、予想 3.9%)
16:00 (独) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 -9.6%、予想 -6.1%)
22:30 (米) 10月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比 (9月 66.1万人、予想 62.0万人)
22:30 (米) 10月 雇用統計・失業率 (9月 7.9%、予想 7.7%)
22:30 (米) 10月 雇用統計・平均時給 前月比 (9月 0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (9月 4.7%、予想 4.6%)
24:00 (米) 9月 卸売在庫 前月比 (8月 0.4%)
24:00 (米) 9月 卸売売上高 前月比 (8月 1.4%)
29:00 (米) 9月 消費者信用残高 前月比 (8月 -72.2億ドル、予想 107.5億ドル)
オーダー/ポジション状況
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