ドル円見通し 106円台到達後はほぼ横ばいで一段高状態を維持
〇ドル円、10/8午前高値106.10をつけたが、10/7夜から106円を挟んだほぼ横ばいの推移
〇トランプ大統領、与野党協議交渉進展を支持する発言、経済対策へ前向き姿勢か
〇10/8NYダウ上昇も勢いはやや減速の印象、大統領選挙結果が出るまで慎重な動きに入るか
〇105.90以上での推移中は一段高余地あり、106.10超えからは106円台中盤を試すとみる
〇105.90割れを弱気転換注意、105.75割れからいったん下落に入るとみる、105.50前後への下落を想定
【概況】
ドル円は10月8日午前高値で106.10円を付けて10月2日午後急落時に付けた安値104.93円以降の高値を切り上げたが、この高値を含めて7日夜に106円台に到達してからは106円を挟んだわずかな値動きでほぼ横ばいの推移となっている。
10月2日の米大統領コロナ感染報道での急落、売り一巡からの買い戻し、5日の米大統領退院での続伸、6日夜の米大統領による追加経済対策を巡る与野党協議の一方的停止宣言からの小反落、7日の一部協議再開支持による一段高というように、ほぼ米大統領の動向及び発言に市場も振り回されつつ推移している。
【NYダウ続伸だが勢い鈍り、ドル安再開感もやや鈍る】
トランプ米大統領は8日、コロナ不況対策の与野党協議について「幾つかとても生産的な話し合いをしている」と述べて交渉の進展を支持した。FOXビジネスのインタビューに答えたもので「民主党のペロシ下院議長が合意を望んでいる」として航空会社雇用維持支援策や1人当たり最大1200ドルの現金給付策について「可能性は非常に高い」と述べた。
米政府はこれまでに3兆ドル規模のコロナ不況対策を実施してきたが、週600ドルの失業給付上乗せや航空会社支援策などが期限終了で失効しているため、大手航空各社では大規模な人員削減が計画されているとされ景気回復への足かせとなることが懸念されている。民主党多数の米下院は10月1日に総額2兆2000億ドルの経済対策法案を可決したが、共和党は民主党知事地盤の州や地方政府への財政バラマキ支援として反対している。トランプ大統領としては大統領選挙へ向けて民主党批判を強めつつも経済対策への前向き姿勢も示したいところだ。トランプ大統領発言に対してペロシ下院議長も部分的に留まる成立に反対しつつも包括的な対策についてはやらなければならないと述べ、与野党合意に向けた期待を示している。
米大統領選のTV討論会第二回については主催者がオンライン形式を提案したがトランプ大統領はオンラインなら出席しないと拒否姿勢を示している。11月3日の大統領選挙まであと3週余り、駆け引きを含めて現在劣勢とされるトランプ陣営が巻き返しを図れるか、前回の様に不利といわれながらサプライズ再選を果たすのか、その際に当時のトランプ相場のような株高を招くのかどうか、あるいは民主党政権へ変わって金融市場も混乱を嫌うのか、しばらくは一喜一憂で惑わされる相場展開が続きそうだ。
8日のNYダウは前日比122.05ドル高と上昇したが、7日に530.70ドル高となった勢いはやや減速した印象。今のところは9月3日高値からの大幅下落も9月24日安値で押し目底を形成して出直りに入ってきている印象だが、11月3日の大統領選挙結果が出るまでは慎重な動きに入るのではないかと思われる。
米労働省が8日夜に発表した10月3日までの週間新規失業保険申請(季節調整済)は84万件となり前週比9000件減少した。2週連続の減少ではあったが市場予想の82万件を上回った。季節調整前では80万4307件で前週から5312件増えた。失業保険受給者総数は9月26日までの週間で1097万6000人となり前週から100万3000人減少して市場予想の1140万人を下回った。失業者の減少傾向は見られるものの申請件数が高止まりしている印象だ。
為替市場ではユーロドルが7日午後から持ち直しの上昇となっていたが、7日夜高値を超えずにやや上値が重い印象。8日夜にはECBが9月理事会の議事要旨を公開したが、そこでは7月以降のユーロ高への警戒感を示し、「一段のユーロ高は成長とインフレに対するリスク要因となる」としていた。ユーロ高けん制感が強まったことも8日のユーロドルの上値を抑えた印象だ。
【9月21日安値からの上昇が二段目に入る】
ドル円は9月21日安値で104円を割り込んだところから持ち直して来たが、10月2日午後の一時的な反落を切り返して高値を更新したことにより上昇波動は二段上げ型に発展してきた。現状は日足の一目均衡表で先行スパンが上値抵抗帯となっており遅行スパンも好転できずにいる。106円に到達して以降はほぼ横ばいだが、上昇一服での横ばい持ち合いは上放れへ向かうケースも多いため、高値切り上げに入れば日足の先行スパン突破により上昇継続感が強まる可能性がある。しかし11月3日の大統領選挙前情勢としてわずかな高値更新にとどまって失速するようだと、選挙結果待ちでの調整に入る可能性もあるところと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2日午後へ急落してから急落幅の半値以上を戻したために5日朝時点では2日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期を5日午前から7日午前にかけての間と想定したが、7日早朝へいったん下落してから一段高に入り、前回サイクルトップも30日午前高値からも5日以上を経過したために8日朝時点では7日早朝安値を直近のサイクルボトムとしての新たな強気サイクル入りとした。またトップ形成期は8日深夜から13日未明にかけての間とし、弱気転換は7日早朝安値割れからとした。
8日午前に高値をわずかに切り上げてからも横ばいで高値圏を維持しているので引き続きトップ形成中とみるが、105.75円を割り込む下落発生の場合はいったん調整安に入るとみて10日早朝から14日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7日午後の上昇で遅行スパンが好転し、7日早朝に先行スパンへ潜り込んだところから再び上抜けたが、その後の横ばい推移により遅行スパンは実線と交錯している。先行スパンを上回るうちは上昇余地ありとし、高値更新からは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込み始めるところを弱気転換注意とし、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は揉み合いのために50ポイント台での横ばいとなり方向感に欠ける。60ポイント超えからは上昇再開とみるが45ポイント割れからはいったん仕切り直しの下落に入る可能性があるとみて30ポイント台前半への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.75円を下値支持線、10月8日午前高値106.10円を上値抵抗線とする。
(2)105.90円以上での推移中は一段高余地ありとし、8日午前高値超えからは106円台中盤(106.35円から106.65円)を試すとみる。106.50円以上は反落注意とするが、105.90円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)105.90円割れを弱気転換注意とし、105.75円割れからはいったん下落に入るとみて105.50円前後への下落を想定する。105.50円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、材料を伴って急落の場合は105円台序盤へ下値目途を引き下げる。また105.75円を割り込んでの推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
10/9(金)
10:45 (中) 9月 財新サービス業PMI (8月 54.0、予想 54.3)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 6.6%、予想 4.7%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前月比 (7月 5.2%、予想 2.6%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前年同月比 (7月 -7.8%、予想 -4.6%)
15:00 (英) 8月 商品貿易収支 (7月 -86.35億ポンド、予想 -91.00億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支 (7月 10.74億ポンド、予想 0.00億ポンド)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 -0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 4.6%)
10/12(月)
休場、米国(コロンブスデー・政府、為替、債券休場、株式、商品市場は通常取引)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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