ドル円見通し  ドル円は強弱拮抗で106円台序盤中心の小動き(20/9/11)

ドルストレートでのドル高の一方でクロス円での円高もあり、強弱相殺となって106円台序盤を中心とした小動きの範囲にとどまっての推移だった。

ドル円見通し  ドル円は強弱拮抗で106円台序盤中心の小動き(20/9/11)

ドル円見通し  ドル円は強弱拮抗で106円台序盤中心の小動き

〇ドル円、9/11未明に106.23まで上昇もその後106円台序盤を中心とした小動きの範囲で推移
〇9/10のNYダウは大幅反落、下落継続への懸念が強まり始める
〇昨晩発表の米週間失業保険統計冴えず、コロナ不況の長期化懸念と受け止められ株安要因に
〇ECB総裁会見後ユーロ買い進むが、NYダウ反落等で一時的なものにとどまる
〇英国とEUの臨時会合、英国の法案を巡り両者の主張折り合わず終了
〇105.96割り込まないうちは上昇余地あり、106.28超えからは106.50、さらに106.70への上昇想定
〇105.96割れから続落の場合は下落再開とみてまず105.75試しとする

【概況】

ドル円は9月8日のNYダウ大幅下落等によるリスク回避感の強まりで8日夜に106円を割り込む下落となり、9日午後には105.75円まで安値を切り下げたが、9日夜はNYダウが4日ぶりに反発したことで持ち直しの動きに入り、10日午前には106.28円まで買い戻された。
9月10日夜は米週間失業保険統計が冴えなかったことで105.96円まで下落したものの、ECB理事会と総裁会見から急伸していたユーロが急落に転じ、英ポンドもEUとの対立深刻化で一段安となりドル高がぶり返したために11日未明には106.23円までやや上昇したが、ドルストレートでのドル高の一方でクロス円での円高もあり、強弱相殺となって106円台序盤を中心とした小動きの範囲にとどまっての推移だった。

ドル円は8月28日の安倍首相辞任報道やドル安を背景に急落して105.17円の安値を付けたが8月19日安値105.08円割れを回避して持ち直しに入り、ドル高再燃のなかで9月3日夜高値106.54円と4日夜高値106.49円のダブルトップ形成まで上昇していた。しかし9月4日から8日にかけてのNYダウ大幅下落によるリスク回避感の高まりで下落に転じた。その後はドルストレートでいったんドル安となってからのドル反騰、9日に反発したNYダウの反落、株安による米長期債利回り低下、ポンド急落継続による先行き不安等が入り混じる展開で決め手に欠いている。

9月10日のNYダウは前日比405.89ドル安と大幅反落、ナスダック総合指数も221.97ポイント安となった。NYダウは9月3日に一時千ドルを超える下落となり9月8日まで3日間続落となり、この間の下落角度は3月のコロナショック暴落時を彷彿とさせるものとなったが、9月9日は439.58ドル高で4日ぶりに反発して市場もやや安堵していたのだが、10日の反落により9月3日からの下落継続への懸念が強まり始めた。

米労働省が発表した9月5日までの週間新規失業保険申請は88万4000件となり前週と変わらずで、市場予想の84万6000件を若干上回った。継続的失業保険受給者総数は8月29日までの1週間で1338万5000人、前週からは9万3000人増となり市場予想の1292万5000人を上回った。失業者の高止まり感がコロナ不況の長期化懸念と受け止められ、米議会上院が9月10日に共和党主導による3000億ドル規模の追加経済対策法案の採決動議を否決したことも株安要因となった。
株安債券高により米10年債利回りは0.02%低下の0.68%、30年債利回りは0.04%低下の1.42%となった。株安によるリスク回避感と米長期債利回り低下がドル円には上値を抑える要因となった。
米労働省が発表した8月の生産者物価は前月比0.3%上昇で市場予想の0.2%を若干上回った。コア指数の前月比も0.4%上昇で市場予想の0.2%上昇を上回った。前年同月比は全体で0.2%低下となり5か月連続出の低下となったが、コア指数は同0.6%上昇でやや持ち直した。

【ユーロドルは急騰後に急落、ポンドは一段安】

9月10日夜にECB定例理事会が開催されたが市場予想通りにECBは金融政策を現状維持とし、声明発表後にラガルド総裁が定例会見し、中身的にはサプライズ感のないものだったが、市場はユーロ高をけん制する姿勢が乏しかったとしてユーロ買いを仕掛けてユーロドルは22時台後半に1.1916ドルまで急伸した。しかしNYダウの大幅反落やポンドの一段安等により急伸商状は一時的なものにとどまり、深夜からの反落で11日未明には1.180ドル台序盤まで失速した。
ECBは9月10日の定例理事会で金融政策を現状維持とし、新型コロナウイルス対策として3月に導入した7500億ユーロ規模の資産購入枠を6月に1兆3500億ユーロまで増額した状況を継続するとした。ラカルド総裁の会見では、ユーロの水準が物価の重要な決定要因であることは明確なので注意深く見守るとしたものの、為替水準はECBの政策目標ではないのでユーロの水準については発言はしないと述べたため、市場はこれをユーロ高容認と受け止めた。しかしこのユーロ買いもNYダウ反落等によって潰された印象だ。

ユーロドルは9月1日高値への上昇起点だった8月21日夜安値をわずかに割り込むところまで9月9日夜安値で下落したが、ほぼ往って来いの水準まで下げきったことで戻してきた。10日深夜の反落を押し目形成として高値切り上げへ進めば上昇再開感がかなり強まる可能性もあるが、英国とEUの対立深刻化によりポンド安に足を引っ張られ株安が進むようだと8月21日と9月9日の両安値によるダブルボトム形成に失敗して一段安に陥りかねないところだ。

英国のブレクジットは既にEUとの離脱協定発効により今年1月末に発効し、離脱状態に入っている。しかし発行済の離脱協定を反故にするような法案を英国議会が審議しており新たなブレクジット問題としてポンド安が進んでいる。

9月10日に英国とEUはロンドンで臨時会合を持ったが、英国の法案を巡っては両者の主張が折り合わずに終わった。EU側は法案が成立すれば「極めて重大な国際法違反」と英国を批判し、英国側は法案の修正を拒否した。
英国とEUは離脱に伴う新たな貿易協定として英・EU自由貿易協定(FTA)の締結交渉を行っているが、8回目となる9月10日までの3日間の会合では進展が見られなかった。ジョンソン英首相はFTA交渉の合意期限を10月15日に設定した。英国とEUは来週も話し合いを継続する見込みだが、交渉決裂が懸念される。
ポンドドルは9月1日に1.348ドルまで上昇後に急落し、10日も1.127ドル台まで大幅続落している。ポンド安が株安と共に為替市場でのリスク回避感を助長し、投機通貨買い意欲を後退させるとドルストレートでのドル高感が強まる一方、クロス円での円高感もさらに強まることとなり、ドル円においては円高が優勢となってゆく可能性もあるところと注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日夜と4日夜の両高値をダブルトップとして下落したが、9日夕刻安値で直近のサイクルボトムを付けて戻した。しかし10日午前高値の後は伸びずにいるため既に弱気サイクル入りしている可能性がある。10日午後安値105.96円割れ回避のうちは高値を試す余地ありとみるが、10日夕刻安値105.96円割れからは弱気サイクル入りとして14日午後から16日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では106円台序盤中心の小動きのために方向感にかける。106.28円超えからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、105.96円割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は106円台序盤中心の持ち合いのために50ポイントを中心に前後10ポイント幅程度の動きにとどまっている。40ポイント割れ回避のうちは60ポイント超えから上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.96円を下値支持線、106.28円を上値抵抗線とする。
(2)105.96円を割り込まないうちは上昇余地ありとし、106.28円超えからは106.50円前後、さらに106.70円前後への上昇を想定する。106.50円以上は反落注意とするが、106円台を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)105.96円割れから続落の場合は下落再開とみてまず9日安値105.75円試しとし、さらに続落の場合は105.50円から105.25円にかけてのゾーンを試すとみる。株安等によりリスク回避感が強まって急落の場合は105.25円以下へ突っ込む可能性もあると注意し、106円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/11(金)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 8.7%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 9.3%、予想 4.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 -12.5%、予想 -8.7%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -51.16億ポンド、予想 -67.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・合計 (6月 53.36億ポンド、予想 30.50億ポンド)

21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.6%、予想 1.6%)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -630億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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