ドル円見通し 米国株急落とドル高一服で失速、米雇用統計待ちへ(20/9/4)

ドル円は8月28日夜安値からの持ち直しの動きを続けて9月3日夜には106.54円まで戻り高値を切り上げてきたが、4日未明には105.97円まで反落した。

ドル円見通し 米国株急落とドル高一服で失速、米雇用統計待ちへ(20/9/4)

ドル円見通し 米国株急落とドル高一服で失速、米雇用統計待ちへ

〇ドル円、9/3夜に106.54まで高値を切り上げたが、米国株急落影響し9/4未明に105.97まで反落
〇ユーロ、9/1夜から9/3夕刻まで続落、ドル高に影響
〇ISM非製造業景況指数悪化や米貿易赤字拡大により、NYダウ・ナスダックともに大幅下落
〇9/4発表予定の米雇用統計・9/7レーバーデーによる連休を控え、9/4夜の値動き警戒
〇106.30以下での推移中は一段安余地ありとし、105.97割れからは105.50前後への下落を想定
〇106.30超えからは9月3日夜高値106.54試しとし、高値更新からは8月28日高値106.94を目指すとみる

【概況】

ドル円は8月28日夜安値からの持ち直しの動きを続けて9月3日夜には106.54円まで戻り高値を切り上げてきたが、4日未明には105.97円まで反落した。
8月27日夜のパウエル米連銀議長によるジャクソンホール講演をきっかけに乱高下して27日夜安値で105.59円を付けてから急伸に転じて28日昼には106.94円まで大幅上昇したが、安倍首相辞任報道で急落となり28日夜には105.17円まで下げて8月19日安値105.08円に迫った。8月31日は前日の急落に対する揺れ返しで深夜に106.08円まで戻し、9月1日にはいったん105.56円まで下げたものの9月1日夜からのユーロ急落等によるドル高のぶり返しを背景に戻り高値の切り上げに入って9月3日も続伸していた。

9月1日夜からのドル高はユーロの下落が影響しているが、ユーロドルは9月1日に1.20ドル台に到達して2018年5月以来の高値水準となったことで利益確定売りが急がれて下落に転じ、9月3日夕刻まで続落してきたが、その後は下げ一服で持ち直している。
ドル円が9月3日夜高値から失速したのはNYダウが一時千ドルを超える大幅下落となったことで金融市場全般への不安心理が為替市場にも波及し、ユーロの持ち直しも重なってリスク回避的な円高反応が見られたためと思われる。

【米国株急落、4日夜の米雇用統計から株高へ復調してリスク選好型へ向かえるか試される】

9月3日のNYダウは前日比807.77ドル安と大幅下落した。9月2日には前日比454.84ドル高と大幅上昇して終値で2万9100.50ドルとして6か月振りの2万9000ドル台到達となったが、9月4日の米雇用統計と9月7日のレーバーデーによる連休を控えて高値警戒感が強まったところで、3日夜発表のISM非製造業景況指数が予想を下回る悪化となり、米貿易赤字も過去最大級となったことで利益確定売りが集中したところから急落商状に陥ったようだ。ハイテク株中心のナスダック総合指数も前日までは4日連続で終値ベースの史上最高値を更新してきたが、3日は598.34ポイント安で5%近い大幅下落となった。

米商務省が発表した7月貿易統計ではモノの貿易赤字が前月比12.9%増の809億1000万ドルとなり、単月の赤字幅としては集計開始以来最大となった。モノとサービスを合わせた合計の赤字幅は635億5600万ドルで2008年7月以来の高水準となった。輸入は10.9%増、輸出は8.1%増でいずれも経済活動再開により増加したが赤字拡大が株高とドル高にブレーキを掛けた印象だ。
米サプライ管理協会(ISM)が3日夜に発表した8月の米サービス業景況指数は56.9となり前月の58.1から低下して市場予想の57.0も下回った。好不況の分岐点とされる50は3か月連続で上回ったが、9月1日の製造業景況指数が予想を大きく上回って株高を助長したことを打ち消す反応を招いた。

米労働省が発表した8月29日までの週間新規失業保険申請(季節調整済み)は88万1000件となり前週比13万件減少して市場予想の95万件を下回った。ただし、季節調整の計算方法が変更されており、季節調整前は83万3352件で前週から7591件増加だった。また失業保険受給者総数は8月22日までの1週間で1325万4000人となり前週から123万8000人減少して市場予想の1400万人を下回った。

9月4日夜は米8月雇用統計の発表がある。失業率予想は9.8%で7月の10.2%から改善見込みであり、非農業部門雇用者数は140万人増の予想で7月の176.3万人増には及ばないものの改善が予想されている。雇用統計をきっかけに株高基調へ持ち直すのかどうかにより、為替市場でもリスク選好型となるのかどうか試されるところだ。連休もあるため4日夜の値動きが荒くなることも警戒される。

【米長期債利回りは低下続く】

8月27日夜のパウエル米連銀議長のジャクソンホール講演で2%を超える物価上昇率を実現しても長期間のゼロ金利を続ける姿勢が示され、9月1日のブレイナード理事の講演でも金融緩和政策の追加的拡大姿勢が示されたことで米長期債利回りは低下傾向に入っている。
米国株高なら安全資産としての米長期国債は売られて利回りは上昇しやすいのが基本だが、9月2日までは株高にもかかわらず長期債利回りは低下し、NYダウが急落した9月3日も米10年債利回りは0.01%低下の0.64%まで下がった。

8月中旬の大量国債入札が続いたところでは米長期債利回りが需給緩和感によりピーク時に0.79%まで上昇していたが、その後は低下傾向を続けている。
米長期債利回り低下ならドル安へ進みやすいものだが、9月1日夜からはユーロが自身の高値警戒感から下落したことと米国株高によるドル買い需要によりドル高が進んでドル円も上昇したという印象だが、米長期債利回り低下が続けばドル円の戻りも抑えられる。米国株が当面の高値を付けて大きな調整に入る場合は株安債券高により長期債利回り低下がさらに助長されて、本来の米長期債利回り低下=ドル円の下落となりやすくなるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日の急落とその後の反騰を踏まえて8月28日昼高値を直近のサイクルトップ、28日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとして9月2日の日中から4日にかけての間への上昇を想定してきた。
9月3日夜に106.54円まで高値を切り上げてから4日未明の106円割れまで反落したため、3日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は28日夜安値を基準とすれば9月2日夜から4日深夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、28日を挟んで乱高下した後のため、週明けへボトム形成期が延長される可能性もあるとみて、3日夜高値を超えないうちはもう一段安余地ありとする。新たな強気サイクル入りは3日夜高値超えからとし、その場合は9月8日夜から10日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では9月3日夜からの反落で遅行スパンが悪化したが、先行スパンからの転落は回避している。9月3日夜高値を超えないうちは一段安余地ありとし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。9月3日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は9月4日未明への下落で40ポイントをいったん割り込んだ。50ポイント台を回復しても維持できないうちはもう一段安余地ありとして20ポイント台への低下を伴う下落を想定し、上昇再開は60ポイントを超えて続伸するところからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月4日未明安値105.97円を下値支持線、106.30円を上値抵抗線とする。
(2)106.30円以下での推移中は一段安余地ありとし、4日未明安値割れからは105.50円前後への下落を想定する。米雇用統計後に弱気される場合は105円台序盤へ下値目途を引き下げる。また106.20円以下での推移なら週明けも安値試しへ進みやすいとみる。
(3)106.30円超えからは9月3日夜高値106.54円試しとし、高値更新からは8月28日高値106.94円を目指すとみる。7月31日安値から反騰して以降は105円から107円までの範囲でのボックス型持ち合いのため、107円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/4(金)
10:30 (豪) 7月 小売売上高 前月比 (6月 2.7%、予想 3.3%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 27.9%、予想 5.0%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前年同月比 (6月 -11.3%、予想 -6.0%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・非農業部門雇用者数 前月比 (7月 176.3万人、予想 140.0万人)
21:30 (米) 8月 雇用統計・失業率 (7月 10.2%、予想 9.8%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・平均時給 前月比 (7月 0.2%、予想 0.0%)
21:30 (米) 8月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (7月 4.8%、予想 4.4%)

9/7(月)
休場 米国、カナダ(レーバーデー)、ブラジル(独立記念日)

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