楽観ムードの後退に要注意。米中対立激化が重石
〇ドル円13日に107.06の週間高値をつけた後米中通商会合延期、小売売上高の不冴えで反落106.58で越週
〇ユーロドル1.1841で越週、今週は一度も1.19台に達せず
〇ドル円テクニカルには地合いの強さ印象づけるチャート形状、ファンダメンタルズは弱い
〇米中対立激化や新型コロナ第2波に絡む不確実性がドル円の重石
〇米中が予定していた通商関連会合を延期したことも不確実性を増幅させる展開
〇来週の予想レンジ105.00ー108.00
今週のレビュー(8/10−8/14)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初105.96で寄り付いた後、早々に週間安値105.71まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに下げ渋ると、@先週末金曜日に発表された米雇用統計が力強い結果を示したこと(米雇用改善期待→ドル高)や、A中国のインフレ指標(消費者物価指数及び生産者物価指数)が市場予想を上回ったこと(中国におけるインフレ鈍化懸念の後退)、Bトランプ米政権による景気対策期待(トランプ米大統領が追加財政措置で大統領制に署名)、Cロシアによる「新型コロナウイルス・ワクチン」への認可報道、D米7月生産者物価指数(結果0.6%、予想0.3%)及び米7月消費者物価指数(結果1.0%、予想0.7%)の伸び率加速、E上記Dを背景とした米長期金利の上昇(ドル高)、
F米新規失業保険申請件数(結果96.3万件、予想112.0万件、※3月中旬以来となる100万件割れ)の良好な結果、Gクドロ―米国家経済会議(NEC)委員長による「米経済の先行きに対する楽観的な発言」が支援材料となり、8/13には、週間高値となる107.06(7/23以来の高値)まで上昇しました。もっとも、週末にかけては、H8/15に予定されていた米中の通商合意を巡る会合が延期されたことや、I米小売売上高(結果1.2%、予想1.9%)の冴えない結果が重石となり、結局106.58まで反落しての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1788で寄り付いた後、@先週末金曜日以降のドル高の流れ(力強い米雇用統計→米長期金利上昇→ドル高)や、A1.19台を維持できなかったことに伴う見切り売り(ECB高官よりユーロ高牽制発言が出るのではないかとの思惑もユーロロングの解消を誘発)、B予想を上回る米インフレ指標を受けた米長期金利の上昇が重石となり、週央にかけて、週間安値1.1710まで下落しました。しかし、ボリンジャーミッドバンドに続落を阻まれると、C英国のEU離脱を巡る先行き不透明感の後退を受けたユーロ買い圧力や、D欧米株の底堅い動きを受けたリスク選好のドル売り・円売りが支援材料となり、翌8/13には、一時1.1865まで上昇する場面も見られました。
もっとも、心理的節目1.19を前に戻り売り圧力も根強く、結局1.1841まで反落しての越週となっております(今週は一度も1.19台に到達できず)。尚、8/11に発表されたユーロ圏8月ZEW景況感指数(結果64.0、前回59.6)及び、ドイツ8月ZEW景況感指数(結果71.5、予想55.0)は共に力強い結果となりましたが、市場の反応は一時的なものに留まりました。
来週の見通し(8/17−8/21)
<ドル円相場>
ドル円は、7/31に記録した約4ヵ月半ぶり安値104.19をボトムに反発に転じると、昨日は一時107.06(7/26以来の高値)まで上昇しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転が終了するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、積極的な緩和方針の継続を示した米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C世界的な貿易戦争拡大リスク、Dトランプ米大統領の支持率低下(米政治の先行き不透明感)、E朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、F新型コロナウイルスの感染拡大懸念、G日本経済の先行き不透明感(デフレ懸念)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的に持ち直しの兆しが見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。欧米株や商品市況の動向、新型コロナウイルス及び米中対立激化に関するヘッドライン、日米の主要経済指標の結果(8/17の本邦第2四半期GDP速報値や米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数や、8/18の米7月住宅着工件数、8/20のFOMC議事要旨や米8月フィラデルフィア連銀景況指数、8/21の米7月中古住宅販売件数など)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米中対立激化や新型コロナ第2波に絡む不確実性がドル円の重石。米中が8/15に予定していた通商合意の履行状況を精査するための会合を延期したことも不確実性を増幅させる展開)。
来週の予想レンジ(USDJPY):105.00ー108.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、3/20に記録した2年11ヵ月ぶり安値1.0637をボトムに反発に転じると、8/6には、約2年3ヶ月ぶり高値となる1.1917まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転やパーフェクトオーダー、強い上昇トレンド入りを示唆するバンドウォークも発生するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(但し、今週は1.19台での上値の重さを再確認)。
一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A米中対立先鋭化リスク(米中による報復措置の応酬→世界経済の不安定化リスク)、B世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交がユーロ圏に波及する恐れ)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナ第2波リスク(ユーロ圏における新型コロナ感染者数の拡大→フランスにて新型コロナウイルスの感染が急拡大)、EECBによる追加緩和観測(ユーロ高牽制やPEPPの拡大観測)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に「地合いの強さ」が見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが「続伸を阻む」シナリオが想定されます。欧米株及び米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスク及び米中対立激化を巡るヘッドライン、ユーロ圏の主要経済イベント(8/21のドイツ8月製造業PMI及び非製造業PMI、ユーロ圏8月消費者信頼感指数など)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(EU復興基金合意に伴う楽観ムードは賞味期限切れ。新型コロナ第2波リスクや米中対立先鋭化リスクを背景としたリスク回避ムードの再燃に引き続き警戒。IMM通貨先物でユーロロングが過去最大規模に膨らんでいることも上値余地が限定的であることを示唆→ポジション解消時の値幅に要注意)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1650−1.1950
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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