リスクオフへの転換に要注意。米中対立激化が重石に
〇ドル円週明け106.48まで反発するもドル売り再燃で105円台に反落105.92での越週
〇米中対立激化や新型コロナ第2波に絡む不確実性がドル円の重石
〇来週の予想レンジ(USDJPY):104.00ー107.00
〇ユーロドルは1.17近辺で下げ渋り1.1917まで上昇、週末雇用統計等で下落1.1787で終了
〇EU復興基金合意に伴う楽観ムード賞味期限切れか
〇新型コロナ第2波リスクや米中対立先鋭化リスクを背景としたリスク回避ムードの再燃に要警戒
〇来週の予想レンジ(EURUSD):1.1600−1.1900
今週のレビュー(8/3−8/7)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初105.89で寄り付いた後、先週末金曜日(月末ロンドンフィキシング)以降のドル買いの流れ(米ドルのショートカバー)を引き継ぐ形で、早々に週間高値106.48まで上昇しました。しかし、21日移動平均線や一目均衡表基準線に続伸を阻まれると、@新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大懸念(米国における新型コロナウイルス感染に伴う死者数が増加)や、A米中対立先鋭化リスク(リスク回避の円買い。金価格も史上最高値更)、B米追加財政合意期待の後退、C上記@ABを背景とした米長期金利の急低下(ドル全面安)、D米7月ADP雇用統計(結果16.7万人、予想120.0万人)の冴えない結果が重石となり、週後半(8/6)にかけて、週間安値105.29まで下落しました。もっとも、週末にかけては、E米雇用統計の良好な結果を受けたドル買い圧力や、F米中先鋭化リスクを背景としたリスク回避のドル買いが支援材料となり、結局105.92まで持ち直しての越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1783で寄り付いた後、先週末金曜日(月末ロンドンフィキシング)以降のドル買いの流れ(米ドルのショートカバー)を引き継ぐ形で、早々に週間安値1.1696まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線や心理的節目1.17近辺で下げ渋ると、その後は、@欧米株の堅調推移を背景としたリスク選好のドル売り・円売り(消去法的なユーロ買い)や、A米長期金利低下を受けたドル売り圧力、B米追加財政合意期待の後退(ドル売り)、CEU復興基金に対する期待感(欧州経済の回復期待)Dユーロ圏6月小売売上高(結果1.3%、予想▲0.5%)や、Eドイツ6月製造業受注(結果27.9%、予想10.1%)の良好な結果が支援材料となり、週後半(8/6)にかけて、約2年3ヵ月ぶり高値となる1.1917まで急伸する場面も見られました(7/31に記録した直近高値1.1910を突破)。もっとも、1.19台を維持できず反落に転じると、F上値の重さを嫌気した短期勢の見切り売りや、G米雇用統計の良好な結果を受けたドル買い圧力、H米中先鋭化リスクを背景としたリスク回避ムードの再燃が重石となり、結局1.1787近辺まで押し返されての越週となっております。
来週の見通し(8/10−8/14)
<ドル円相場>
ドル円は、7/1に記録した高値108.17をトップに反落に転じると、7/31には、一時104.19(約4ヵ月半ぶり安値)まで急落しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや雲下限を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転も成立するなど、テクニカル的にみて、「地合の悪さ」を印象付けるチャート形状となっております(足元105.92付近まで値を戻すも上値は重たい)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、積極的な緩和方針の継続を示した米国)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念(米財務省は香港の自治侵害などを理由に、香港のキャリー・ラム行政長官を含む11名を制裁対象に)、C世界的な貿易戦争拡大リスク、Dトランプ米大統領の支持率低下(米政治の先行き不透明感の高まり)、E朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、F新型コロナウイルスの感染拡大懸念(世界経済の更なる下押し→企業破綻の増加)、G日本経済の先行き不透明感(本邦における新型コロナ感染者数再拡大→日本経済低迷→デフレマインド再燃→予想実質金利上昇→円高への波及経路)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。欧米株や商品市況(特に原油やゴールド)の動向や、新型コロナ第2波リスクに絡むヘッドライン、米中対立激化を巡る続報(米財務省による中国の為替操作国認定リスクにも要警戒)、米主要経済指標の結果(8/11の米7月生産者物価指数や、8/12の米7月消費者物価指数、8/13の米7月財政収支、8/14の米7月小売売上高及び米7月鉱工業生産など)、米債償還利払いに伴う円転リスク、8/15に予定されているライトハイザー米通商代表部代表と劉鶴副首相の「第1段階合意」を巡る貿易協議を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米中対立激化や新型コロナ第2波に絡む不確実性がドル円の重石)。
来週の予想レンジ(USDJPY):104.00ー107.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、6/22に記録した約3週間ぶり安値1.1168をボトムに反発に転じると、8/6には、約2年3ヶ月ぶり高値となる1.1917まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転や、強い上昇トレンド入りを示唆するバンドウォークも発生するなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(但し、週末にかけて1.18割れへと値を崩すなど、反落リスクが高まりつつある点には注意が必要)。
一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、A米中対立先鋭化リスク(米中による報復措置の応酬→世界経済の不安定化リスク)、B世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交がユーロ圏に波及する恐れ)、C朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、D新型コロナ第2波リスク(ユーロ圏における新型コロナ感染者数の拡大)、EECBによる緩和的な金融政策(ユーロ高牽制発言やPEPP=パンデミック緊急購入プログラムの拡大観測)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に「地合いの強さ」が見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが「続伸を阻む」シナリオが想定されます。欧米株及び米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスク及び米中対立激化を巡るヘッドライン、ユーロ圏の主要経済イベント(8/11のドイツ8月ZEW景況感調査や、8/12のユーロ圏鉱工業生産、8/14のユーロ圏貿易収支など)、ユーロ圏の高官発言(ユーロ高牽制発言など)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(EU復興基金合意に伴う楽観ムードは賞味期限切れ。来週は新型コロナ第2波リスクや米中対立先鋭化リスクを背景としたリスク回避ムードの再燃に要警戒)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1600−1.1900
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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