104円台序盤から2円近い反騰、下落途中の化け線か、昨年8月26日型反騰か
〇ドル円7/31に104.17まで下げるも106.05まで切り上げる
〇GDPの悪化にユーロが対ドルで急落したことが背景
〇7/31の下ヒゲ陽線からさらに週明けへ続伸して勢い付くか注目
〇アフターコロナの復興期待よりも足元の不況長期化懸念が重さ増すか
〇105円以上を維持するうちは上昇余地あり、106円台に乗せてる場合は、さらに上値を目指す可能性
〇105円を割り込むか、104.17からの戻り幅の半値以上を削るところからは下げ再開を警戒
【概況】
ドル円は7月31日昼前に104.17円まで一段安していたが、その後は下げ渋り、夕刻にユーロが対ドルでの下落を加速させたところからドル高感が強まる中で急激な買い戻しの動きに入り、深夜を過ぎたところでは106.05円まで戻り高値を切り上げた。
7月31日昼前にかけてのドル円の下落はドル全面安を背景とした円高と、日本における新型コロナウイルス感染拡大が連日続いてきたことでのリスク回避感による円高が重なったものだった。30日は米国の4−6月期GDP速報値が年率でマイナス32.9%となり、失業保険受給者数も市場予想を超えて1701.8万人となったこと等からユーロ高ドル安が加速してドル円も安値を更新したのだが、31日はユーロドルも1.19ドルを超えたことで高値警戒感が出始め、ドル円も104円台序盤まで下げたことでの突っ込み警戒感が強まったところで、31日夕刻に発表されたユーロ圏4−6月GDP速報値が年率でマイナス40.3%となり米国以上の悪化となったためにユーロドルが反落に入り、ドル円もドル全面安での安値追及の流れに急ブレーキがかかって買い戻しの動きが早まったという印象だ。
【昨年8月26日の反騰時に近い下ヒゲ陽線】
7月31日の日足は下ヒゲを付けた大陽線であり、安値から高値までは1.88円の上昇幅となった。7月23日から7月30日までの日足は6日間連続陰線だったが、31日の陽線で直前3日分の下落レンジを解消した。
安値更新が続く中で一段安したところから切り返し、当日安値から高値まで2円近い反騰となる下ヒゲの日足陽線というのは、昨年8月28日の底打ち時にみられる。
昨年8月26日の底打ちは、8月1日の戻り高値から下落が加速し、8月28日安値までの下げ幅は4.86円だったが、昨年4月24日に112.39円の戻り天井を付けたところからの下げ幅は7.94円であり、下落期間は4か月だった。当日は安値から高値まで1.92円の反騰となる下ヒゲ陽線だった。
今回の7月31日安値への下落は7月1日の戻り高値から進み始めて下げ幅は3.99円、6月5日の戻り高値からは5.67円の下げ幅だが、3月暴落後の戻り天井である3月24日高値からは4か月間、下げ幅の累計は7.54円であり、4か月の下げで7円を超える下落幅というところは昨年8月26日底打ち時に近い印象だ。
直前の3日間のレンジを超える上昇は大陽線による反撃開始という印象も持たれやすいが、下落途中の「化け線」ないしは短期日の反騰で終わる可能性もある。日銀の異次元金融緩和による円の独歩安時代においては、例えば2013年2月25日に94.72円の当日高値から90.89円の当日安値まで3.83円の急落となったところから切り返して一段高へ進んだことがあるように、上昇途中での高所恐怖症による一時的な狼狽売りによる急落では上昇トレンドは崩れないことも多い。逆に下げ相場においても突っ込み警戒感が出ているところで反騰に入ると安値を売り込んだ弱気筋が狼狽して買い戻しを急いで急騰してしまうが、買い一巡後には再び元の流れに押し返されることも多々ある。このため、7月31日の下ヒゲ陽線からさらに週明けへ続伸して勢い付くかどうかが大事になってくると思われる。
【月末月初の安値と反騰】
昨年8月26日底以降、概ね月末月初に主要な安値を付けてきた。8月26日底以降は、10月3日、11月1日、12月9日、今年1月8日、1月31日、3月9日、4月1日、5月6日、5月29日、6月23日と底を付けてきたが、6月23日安値から1か月を経過した7月31日安値で当面の底を付けたと考えられる。
この底打ちは大きな上昇相場へ発展する起点となれるのか、昨年8月底からの上昇期における反落時の押し目底となって上昇トレンドが継続したのとは逆で、目先の戻り高値を付けるために短期的な底打ちに留まるのかは、8月3日から7日の米雇用統計にかけての間の展開で見定める必要があるだろう。
大陽線の後に戻り高値を切り上げられないか、切り上げても日足陰線で失速する場合は翌日の陰線連続から下げ再開に入りやすい。このケースでは相当に7月31日安値を割り込み、反騰期待による買いも投げ売りを強いられて下げがかえって加速して行きやすくなり、3月9日安値101.236円を試す流れへ向かいやすくなると思われる。
8月3日も連騰陽線なら数日間の戻りを試す流れに入って26日移動平均(現在106.90円)前後へ戻す可能性があるが、さらに上昇トレンド形成へ向かうには8月7日の米雇用統計を強気で通過するか、下落反応してもそこを押し目として翌週から切り返しに入る必要があるだろう。短期的な戻りに終わって7月31日安値からの戻り幅の半値以上を削る下落が発生するところからは下げ再開の可能性が高まり、安値更新からは戻り幅の倍返し、さらに3月9日安値試しへ向かいやすくなると思われる。
3月24日の戻り天井以降、反騰による戻り高値は4月6日、6月5日、7月1日と月初に付けている。8月7日の米雇用統計を強気で通過できればそうした短期的な上昇で戻り一巡に陥ることを回避して上昇トレンド形成に入り、6月5日からの下げ幅に対する半値戻し107.00円を超えて3分の2戻し107.95円等を目指す可能性も高まると思う。
【アフターコロナの復興期待よりも足元の不況長期化懸念が重さを増すか】
新型コロナウイルスの世界感染者累計は8月2日時点で1800万人を超えた。米国は8月1日時点で476万人を超えたが、今やNY州を超えてカリフォルニアが感染者の最大州となり50万人を超え、二位はフロリダ48万人、3位にテキサス45万人、4位がNY州44万人だ。米GDPも4−6月期を最悪期として7-9月期には回復傾向を見せると一般的には予想されているが、感染拡大に歯止めがかからなければ再びロックダウンや経済活動規制強化等が相次ぐ事態となり不況長期化懸念が強まると思われる。米国株式市場は金融緩和による資産インフレ進行期待やIT企業業績好調さにけん引されて高値圏にあるが、足元の実体経済はデフレ不況であり、7−9月期の回復期待が大きく後退する場合には株式市場も持ちこたえられなくなる可能性がある。
EUは7500億ユーロ規模のコロナ復興基金を成立させたが、いったん収まりかけたエリアでは再び感染増加傾向が見られ始める等油断できない状況にある。日本も4月の感染増加時のピークをはるかに超える感染急増に入っており、経済活動再開と感染抑制の両立が難しくなる可能性も高まり始めている。
3月のコロナショックから株式市場は大きく出直った。しかし、復興への楽観が削がれるようだと資産インフレ期待も危うくなり、3月暴落のようなショック安を再発しかねないのではないかと懸念する。その際にはドル円も2月末から3月序盤にかけて発生したような下落となっても不思議ないと思われる。金融市場全般の楽観度合いが8月7日の米雇用統計にかけて相次ぐ重要経済指標が良好さを見せてそうした不安心理を大きく後退できればドル円もしばらくは戻りを試し続けるのだろうが、不安心理が拡大するような展開に入れば戻りも短命に終わる可能性があると用心したい。
【米雇用統計へ向けての当面のポイント】
7月31日安値で当面の底を付けて反騰に入った。問題はその反騰が長続きするかどうかだ。
(1)7月31日安値から2円近い反騰であり、105.00円が反騰レンジの概ね中心値となっているので、105円以上を維持するうちは上昇余地ありとし、106円台に乗せて高値切り上げに入る場合は、106.50円、7月1日からの下げ幅に対する半値戻し107.00円を目指す可能性を考える。ユーロ安ドル高等のドル全面高がしばらく続くことが条件と思われる。
(2)105円を割り込むか、7月31日安値からの戻り幅の半値以上を削るところからは下げ再開を警戒して7月31日安値104.17円試しへ向かうとみる。ドル安再開に入る場合は31日の反騰とは真逆の下落が発生する可能性もあると注意する。7月31日安値を割り込んで一段安へ進むには、米雇用統計をきっかけとしてドル全面安が続くと再認識されるか、それ以前にドル全面安へ進む材料が出現する必要があると思われるが、7月31日安値を割り込む場合は3月9日安値101.23円を目指す流れへ向かいやすくなるだろうと考える。
(3)ドル高ユーロ安がさほど進まず、ドル安再開感も強まらずに為替市場全般の方向感が定まらない状況で週末へ向かう場合は105円弱から106円台前半までのレンジで揉み合う可能性がある。その際は米雇用統計後に方向が定まるとみてその流れに追従するスタンスで構えたい。(了)<2日20:00執筆>
【当面の主な予定】
8/3(月)
休場、オーストラリア、トルコ、カナダ
08:50 (日) 1-3月期GDP改定値 前期比 (速報 -0.6%、予想 -0.7%)
08:50 (日) 1-3月期GDP改定値 年率換算 (速報 -2.2%、予想 -2.8%)
10:45 (中) 7月 財新製造業PMI (6月 51.2、予想 51.2)
16:50 (仏) 7月 製造業PMI改定値 (速報 52.0)
16:55 (独) 7月 製造業購買PMI改定値 (速報 50.0)
17:00 (欧) 7月 製造業PMI改定値 (速報 51.1)
17:30 (英) 7月 製造業PMI改定値 (速報 53.6)
22:45 (米) 7月 製造業PMI改定値 (速報 51.3)
23:00 (米) 6月 建設支出 前月比 (5月 -2.1%、予想 1.0%)
23:00 (米) 7月 ISM製造業景況指数 (6月 52.6、予想 53.6)
25:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、バーチャルイベント講演
26:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、バーチャルイベント講演
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、オンライン討論会の主催
8/4(火)
08:30 (日) 7月 東京都区部消費者物価指数(生鮮食料品除く) 前年同月比 (6月 0.2%)
08:50 (日) 7月 マネタリーベース 前年同月比 (6月 6.0%)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 80.25億豪ドル)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 16.9%)
13:30 (豪) 豪準備銀行、政策金利発表 (現行 0.25%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 -0.6%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 -5.0%)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 8.0%、予想 4.9%)
8/5(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 失業率 (前期 4.2%)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前期比 (前期 0.7%)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数増減 前年同期比 (前期 1.6%)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 58.4、予想 57.9)
16:50 (仏) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 57.8)
16:55 (独) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 56.7)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 56.6)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 17.8%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -5.1%)
21:00 (米) 黒田日銀総裁、イエレン前FRB議長、ウィズ・コロナ時代の中央銀行をテーマに講演(ライブ配信)
21:15 (米) 7月 ADP 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 +236.9万人、予想 125.0万人)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -546億ドル、予想 -515億ドル)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI改定値 (6月 49.6)
23:00 (米) 7月 ISM非製造業景況指数 (6月 57.1、予想 55.0)
30:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、バーチャル講演
8/6(木)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 10.4%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -29.3%)
15:00 (英) イングランド銀行(英中銀)金利発表 (現行 0.10%)
15:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 7450億ポンド)
15:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
15:00 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 143.4万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1701.8万人)
23:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、バーチャル講演
8/7(金)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 464.2億ドル)
未 定 (中) 7月 貿易収支・人民元建て (6月 3289.4億元)
08:30 (日) 6月 全世帯消費支出 前年同月比 (5月 -16.2%)
10:30 (豪) 豪準備銀行、四半期金融政策報告
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・速報値 (5月 78.4)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・速報値 (5月 73.4)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 71億ユーロ)
15:00 (独) 6月 経常収支 (5月 65億ユーロ)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 7.8%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -19.3%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 +480.0万人、予想 +187.5万人)
21:30 (米) 7月 雇用統計 失業率 (6月 11.1%、予想 10.5%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前月比 (6月 -1.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (6月 5.0%、予想 4.5%)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 -1.2%)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 5.4%)
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 -182.8億ドル、予想 80.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
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2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
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2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
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2020.08.01
来週の為替相場見通し:『新型コロナ感染拡大と米中対立激化が市場の焦点』(8/1朝)
ドル円は、7/1に記録した高値108.17をトップに反落に転じると、7/31には、一時104.19(約4ヵ月半ぶり安値)まで急落しました。
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