ドル円、資産現金化需要のドル買いを背景に再び反発。リスク回避ムード再燃
〇ドル円株価下落と良好な米経済指標に一時107.40まで反発
〇ユーロドルはECBの追加緩和期待後退に一時1.1443まで上昇後、株下落と米指標改善のドル買いで反落
〇米小売売上高や米フィラデルフィア連銀製造業景況指数は強かったが、米新規失業保険申請件数は不冴え
〇リスク選好の後退は当初ドル円を押し上げるが、一巡後はクロス円の下落を通じドル円を押し下げの傾向
〇ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想、本日の予想レンジ106.80ー107.60
海外時間の為替概況
16日(木)の外国為替市場でドル円は急伸。@新型コロナウイルスの感染者数拡大や、A米中対立激化リスクの高まり(一部通信社より米政府は全ての中国共産党員とその家族の米渡航禁止を検討との報道あり)、B上記@Aを受けたリスク回避ムードの再燃(欧米株下落→投資家心理悪化→資産現金化需要のドル買い)、C良好な米経済指標(米小売売上高や米フィラデルフィア連銀製造業景況指数)を好感したドル買い圧力が支援材料となり、米国時間午後にかけて、一時107.40まで上昇しました。しかし、7/14に記録した直近高値107.44をバックに伸び悩むと、引けにかけて小反落。本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、107.35近辺で推移しております。
16日(木)のユーロドル相場は上昇後に反落。@ECB理事会にて現行の金融政策が維持されたことや(追加緩和見送り→ユーロ売り圧力後退)や、Aラガルド総裁からも特段真新しい発言が見られなかったこと等が支援材料となり、米国時間朝方には、一時1.1443まで上昇する場面も見られました。しかし、前日高値1.1452をバックに伸び悩むと、B欧米株の下落を受けたリスク回避ムードの再燃(ドル買い)や、C良好な米経済指標(米小売売上高や米フィラデルフィア連銀製造業景況指数)を受けたドル買い圧力、D7/17−7/18に予定されているEU首脳会合を前にした警戒感(新型コロナ復興基金について協議)が重石となり、米国時間午後にかけては、一時1.1371まで反落しました。引けにかけて小反発するも上値は重く、本稿執筆時点では(日本時間4時45分現在)では、1.1381近辺で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、7/1に記録した高値108.17(約3週間ぶり高値)をトップに反落に転じると、7/15には一時106.67まで下落しました。この間、一目均衡表基準線及び転換線、一目均衡表雲下限及びボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転も成立するなど、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(昨日は資産現金化需要の高まりを背景に持ち直すも107円台半ば付近では戻り売り圧力が根強い状況)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国。※イールドカーブ・コントロール導入議論を続ける米国と、7/15の日銀金融政策決定会合を経て追加緩和観測が後退した日本)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感(昨日発表された米小売売上高や米フィラデルフィア連銀製造業景況指数は強かったものの、米新規失業保険申請件数は冴えなかった)、B米中対立激化懸念(一部通信社より米政府は全ての中国共産党員とその家族の米渡航禁止を検討との報道あり)、C世界的な貿易戦争拡大リスク、D朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、E新型コロナ第2波リスク、F日本経済の先行き不透明感(本邦における新型コロナ感染者数再拡大→日本経済低迷→インフレ鈍化→実質金利上昇→円高への波及経路)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「上値の重さ」が警戒されます。欧米株や原油先物価格の動向や、新型コロナ第2波リスクに絡むヘッドライン(海外のみならず日本国内でも感染者数が急増)や、米中対立激化を巡る続報(米中報復合戦の応酬に警戒)、米主要経済指標の結果(米6月住宅着工件数や、米6月建設許可件数、米7月ミシガン大消費者信頼感指数など)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(投資家心理の悪化を背景とした資産現金化需要の高まりは、当初ドル円を押し上げる効果をもたらすものの、一巡後はクロス円の下落を通じてドル円を押し下げる傾向あり)。
本日の予想レンジ:106.80ー107.60
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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