ドル円見通し ドル全面高で続伸したが107円台前半は上値も重く揺れ返しも一巡か
〇ドル円ドル高基調継続に昨晩107.28まで高値切り上げ、その後はやや緩み107円台前半
〇米国内の新規ウイルス感染者数は過去最多を記録、テキサス州は経済再開一時停止
〇米株式市場はNECクドロー委員長の強気発言等受け上昇、IMFは実態との株価の乖離に警鐘
〇米FRB等は金融規制を一部緩和、金融株押し上げる
〇FRBはストレステストの結果を公表感染拡大シナリオでは複数社が最低水準の資本に
〇107円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地あり107.25超えからは107.63円試しへ
〇107円割れで弱気転換注意、106.75割れからは下げ再開
【概況】
ドル円は6月23日夜の急落で106.06円まで下げたが、24日夜に欧米株安が進む中でリスク回避のドル買い戻しによりドル全面高となりドル円においてもドル高優勢で25日早朝には107.14円まで反騰した。25日の日中もドル高基調が続く中で夜には107.28円まで高値を切り上げて23日夜の急落分を解消したが、その後はドル高がやや緩んで107.15円を挟んだ揉み合いとなっている。
6月23日夜の下落により6月12日からの持ち合いをいったん下放れたのだが、その後の反騰で下放れ分を解消したため、6月8日高値からの下落継続感に待ったがかかった状況だが、107円台前半では上値も重くなってきている印象だ。
5月の米耐久財受注額は前月比15.8%増で5年10カ月ぶりの伸びとなった。週間新規失業保険申請件数は148万件となり市場予想の133.5万件を上回ったものの前週の154万件からは減少した。失業保険受給者数も1952.2万人となり前週の2028.9万人から減った。しかし依然として戦後最悪級の水準が続いている。
米商務省が発表した1〜3月期のGDP確定値は年率換算で前期比5.0%減と改定値から変わらなかった。下落率はリーマン・ショック直後の2008年10〜12月期の8.4%減以来約11年ぶりの大きさだ。4〜6月期については米議会予算局(CBO)等が30〜40%減と予想している。
【米国での感染拡大、経済活動再開へのブレーキ】
米国における新型コロナウイルスの感染拡大は最大被害のNY州では抑制されているが米メディアは米国内での6月24日の新規感染者数が3万6000人を超えて過去最多を記録したと報じた。最新の集計では25日も前日から36557人増で感染者累計は249万9111人に増えている。米国全体では4月後半から感染増加数がやや減少傾向にあったが6月11日頃から拡大し始めている。これを第二波の始まりとする見方もあるが第一波がまだ継続している途中という見方もできる。経済活動再開を急げば感染はまた拡大するという典型事象となっている。米テキサス州のアボット州知事は感染者と入院患者が急増しているとして経済活動の段階的な再開を一時停止した。
しかし株式市場はこの報道を受けても25日は上昇した。米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が「感染症例増加で米経済の回復が脅かされていても、経済を再び閉鎖することはない」と述べて経済活動再開への強気姿勢を示したことでNYダウは前日比299.66ドル高、ナスダック総合指数は107.83ポイント高で1万の大台を回復しており、金融緩和による投資マネーが復興相場期待への楽観を継続している印象だ。こうした株高に対して、国際通貨基金(IMF)は25日の金融安定報告書において、新型 コロナウイルスの感染拡大で暴落した株価を含む資産価格が急上昇している現状については「経済の実態と乖離している」と株価急落リスクへの警戒感を示した。
【米FRBの規制緩和とストレステストでの警戒感】
米FRB等はリーマンショック後に導入した金融規制を一部緩和すると発表した。デリバティブ取引に伴う証拠金規制を緩和し、ファンドへの投資も拡大しやすくする。この規制緩和により金融機関の手元資金増加や投資機会拡大につながるとの期待が広がったために25日は金融株が上昇してダウ等を押し上げた。
米FRBは6月25日に、米国で事業を行う大手銀行持ち株会社34社に対するストレステスト(健全性審査)の結果を発表した。感染拡大に伴う深刻な景気悪化を想定したシナリオでは、損失が全体で5600億〜7000億ドルに達し、複数社の自己資本が最低水準に近づくと分析した。また「景気回復の道筋と銀行への影響には重大な不確実性がある」とし、銀行が強固な財務基盤を維持するために7〜9月期の自社株買いを禁止し、株主配当に上限を設定するとした。これまで年1回だった審査を今後は四半期毎に実施し、年内に長期的な資本計画の再提出を求めるとした。
米FRBは大規模な金融緩和や資金提供により景気を下支えしてきた。25日の規制緩和もその一つだが、感染拡大が現状よりも深刻化て経済活動再開が再びストップするような事態に陥る場合はストレステストで示された米FRBの心配も現実の事となりかねないと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・形成サイクルでは、6月23日夜に12日安値を割り込んで一段安となったため、24日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとしたが、ボトム形成期が6月23日深夜から25日深夜にかけての間と想定されるので早ければ23日深夜安値でボトムをつけた可能性があるとし、106.75円超えからはいったん強気サイクル入りとした。
6月24日夜の上昇で107円台まで戻したために25日朝時点では23日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして26日夜から30日にかけての間への上昇を想定した。
25日夜へ続伸したがその後はやや失速気味となっている。107円台前半では上値も重くなるとすればサイクルトップ形成期を短縮して弱気転換する可能性もあるところと注意し、107円を割り込んでも回復する内は上昇余地ありとするが、107円割れから続落に入る場合は弱気転換注意とし、106.75円割れからは弱気サイクル入りと仮定して26日夜から30日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では24日夜の上昇で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いたが、25日夜高値からの下落で遅行スパンは悪化しやすくなっている。遅行スパンがいったん悪化しても再び好転するところからは上昇再開とするが、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は25日昼から夜への上昇期に指数のトップが切り下がる弱気逆行が見られるので既に25日夜高値で戻りが一巡して下落期に入り始めている印象だ。60ポイント超えからは上昇再開とするが50ポイント割れを弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107円を下値支持線、6月25日夜高値107.25円近辺を上値抵抗線とする。
(2)107円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、6月25日夜高値超えからは6月16日高値107.63円試しへ向かうとみる。107.50円以上は反落警戒とするが、107円台を維持して週を終える場合は週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)107円割れを弱気転換注意とし、106.75円割れからは下げ再開と仮定して23日深夜安値106.06円試しへ向かうとみる。106円台序盤は買い戻されやすいとみるが、株安円高が同調し始めて下げる場合は106円割れへ向かう可能性もあると警戒する。また106.75円以下で週を終える場合は週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な予定】
6/26(金)
休場、中国
21:30 (米) 5月 個人所得 前月比 (4月 10.5%、予想 -6.0%)
21:30 (米) 5月 個人消費 前月比 (4月 -13.6%、予想 9.0%)
21:30 (米) 5月 PCEデフレーター 前年同月比 (4月 0.5%、予想 0.5%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前月比 (4月 -0.4%、予想 0.0%)
21:30 (米) 5月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (4月 1.0%、予想 0.9%)
23:00 (米) 6月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 78.9、予想 79.0)
6/29(月)
08:50 (日) 5月 小売業販売額 前年同月比 (4月 -13.7%、予想 -12.5%)
18:00 (欧) 6月 経済信頼感 (5月 67.5、予想 82.5)
18:00 (欧) 6月 消費者信頼感確定値 (速報 -14.7)
18:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、発言
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.3%)
21:00 (独) 6月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (5月 0.6%、予想 0.5%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前月比 (4月 -21.8%)
23:00 (米) 5月 住宅販売保留指数 前年同月比 ’(4月 -34.6%)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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