ドル円見通し 半値戻し到達後の108円台後半での持ち合いから転落、ドル高緩む(20/4/10)

10日未明には108.20円まで下落して108円台後半での小持ち合いから転落した。

ドル円見通し 半値戻し到達後の108円台後半での持ち合いから転落、ドル高緩む(20/4/10)

【概況】

ドル円は4月6日夕刻高値109.37円まで上昇して3月25日未明高値111.71円から4月2日未明安値106.91円までの下げ幅4.80円に対する半値戻しラインの109.31円を超えたが、半値戻し達成後は伸び悩んで8日午前には108.50円まで下げ、9日夜までは109円台に到達したところは戻り売りにつかまりつつ108円台後半での小持ち合いとなっていた。
しかし4月9日夜の米週間失業保険申請件数が前週に続いて爆発的な増加となったことと米連銀による追加の資金供給政策等からドル売りが進んだために10日未明には108.20円まで下落して108円台後半での小持ち合いから転落した。

【米の失業爆発に対しても株高継続だが】

米労働省が4月9日発表した新規失業保険申請件数は4月4日までの1週間で660万6000件となった。過去最大記録を大幅に更新した前週の686万7000件(速報の684.8万件から上方修正)に次ぐ歴史的高水準となり市場予想の525万件を超えた。失業保険受給者総数は3月28日までの1週間で745万5000人となり前週の305万9000人から倍増し、これまでの最高記録だったリーマンショック後の2009年5月の663万5000人を超えた。
この発表から安全資産とされるゴールドは買われ、NY先物期近は前日比68.5ドル高の1752.8ドルと大上昇したが、株式市場は動じず、NYダウは9日に前日比285.80ドル高と上昇した。スペインやイタリアでの感染者増加ペースが鈍り米国の感染拡大ペースもピークに近いのではないかという楽観と、コロナショック対策で世界規模の利下げと量的金融緩和及び資金供給が拡大していることでコロナショック収束後の復興期待感が買いを誘っていると思われる。4月9日に米連銀(FRB)は中小企業や自治体の資金繰り支援のために最大2兆3000億ドル規模の資金供給を行うと発表したことも好感されたようだ。

株高ならリスクオン心理優先としてドル円も上昇してよいところだが、株式市場の様には楽観できないとして円高へ進んだ。またドル資金需給ひっ迫によりドル円は3月9日から3月24日にかけてドル全面高となる中でV字反騰してきたが、G7等によるドル資金供給協調や米連銀の量的緩和及び米政権による経済対策でドル需要のひっ迫感が後退したとして4月1日までドル安円高となり、そこから再びドル高へと持ち直しかけていたところだが、ドル供給がまだ増えるとしてドル安円高気味の動きとなったようだ。

【パンデミックの底はまだ見えない?】

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は9日の講演で「世界恐慌以来最悪の不景気に落ち込む」「1930年代以降で経験のない未曽有の危機に陥る」と述べた。同理事は先に「世界は2008年のリーマン・ショック時を超えるリセッション(景気後退)に陥った」と述べていたが、来週公表の世界経済成長率見通しではIMFが集計を始めた1980年以降で唯一のマイナスだった2009年(マイナス0.1%)より悪化するのは確実だとした。また新興国からの資金引き揚げが過去2カ月間で1000億ドル(約11兆円)規模となりリーマンショック時の3倍に上るとしたが、IMFには1兆ドルの融資能力があるとして対応力のあるところを示した。

4月10日朝時点での世界の感染者数は16万人近くとなり死者は9万5000人を超えた。米国は感染者46万2千人、死者1万6513人に増えた。欧米の感染者増加ペースがピークに近いのではないかとの見方も出ていたが、9日はスペインもイタリアも新規感染者数が前日を超え、米国も前日比3千人を超える状況のままとなっている。

コロナショックがどの程度のリセッション規模となるのか、どの程度長期化するのかというところは経験のないことであり簡単には楽観できないと思われる。100年前のスペイン風邪によるパンデミックでは1918年1月の第一波から第二波、第三波と進んで1920年12月まで終息には3年を要し世界で5億人が感染した。死者は1700万人という説も5000万人とする説も、さらに1億人を超えたという説もある。現在と当時とは医療技術も経済レベルも異なるため、治療法の開発によっては早期の終息もあり得るだろうが、スペイン風邪並みに長期化する場合は経済への打撃も大恐慌時代並みとなることもないとは言えない。株式市場はリーマンショックが1年強の暴落相場ののちにV字反騰に入って史上最高値更新のバブル的大上昇を経験したために、今回もその再現期待感が大きいのだろうが、数か月や1年では済まないという認識が強まれば3月後半からのリバウンドも失速しかねず、そうなるとリスク回避の円高が全面化しかねないと注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月30日午前と4月2日未明の両安値をダブルボトムとして上昇してから6日夕刻高値で直近のサイクルトップを付けていったん弱気サイクル入りしていた。9日朝時点では8日午前安値で直近のサイクルボトムをつけたと仮定し、8日午前安値を割り込まない内は9日午後から13日夕刻にかけての間への上昇余地ありとしたが、8日午前安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとした。
10日未明への下落で8日午前安値を割り込んだため、底割れによる新たな弱気サイクル入りとして11日朝から15日午前にかけての間への下落を想定する。新たな強気サイクル入りには8日夜高値109.09円を超える必要がある。

60分足の一目均衡表では4月10日未明への下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は4月10日未明への下落で30ポイントをいったん割り込んだ。相場の安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行はまだ見られないので、40ポイント台を抵抗とし、さらに20ポイント台前半へ向けての下落余地ありとみる。強気回復には50ポイントを超えてさらに続伸するような上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて当面の強弱判断目安を示す。
(1)当初、4月10日未明安値108.20円を下値支持線、108.80円を上値抵抗線とする。
(2)108.80円以下での推移中は一段安余地ありとし、108.20円割れからは107円台前半を目指す下落を想定する。107円台前半では買い戻しも入りやすいとみるが、安値から1円規模の反発が見られないうちは週明けへさらに一段安しやすい状況が続くのではないかと考える。
(3)108.80円から109円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみるが、8日夜高値109.09円を超える反騰からは上昇再開とみて109円台後半を目指す上昇を想定する。

【当面の主な発表予定】

4/10(金)
休場 メキシコ、ニュージーランド、オーストラリア、香港、シンガポール、スイス、フランス、ドイツ、英国、南ア、カナダ(聖金曜日)
10:30 (中) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 -0.4%、予想 -1.1%)
10:30 (中) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 5.2%、予想 4.8%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前月比 (2月 0.1%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 3月 消費者物価指数 前年同月比 (2月 2.3%、予想 1.6%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前月比 (2月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 3月 消費者物価コア指数 前年同月比 (2月 2.4%、予想 2.3%)

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