クロス円下落→ドル円下落の波及経路に要注意
今週のレビュー(3/16−3/20)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、@米FRBが緊急利下げ(▲100bp)を行いゼロ金利政策の再開を発表したこと、A債券保有を7000億ドル増加させる方針(QE再開)を示したこと、B米国、欧州、日本、英国、カナダ、スイスの6中銀共同でドル資金供給の拡充を発表したこと、C上記@ABを受けてリスク回避ムードが後退したこと等が支援材料となり、週明けアジア時間早朝に一時107.57まで急伸しました。しかし、D新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク回避ムード(米主要株価指数の急落)や、世界的な大規模金融緩和を受けても尚収束の兆しが見えないことに伴う投資家心理の悪化(失望売り)が重石となると、すぐに105.14まで押し下げられるボラタイルな値動きが続きました。
もっとも、週央以降は、E米FRBによるコマーシャルペーパーファンディング(CPFF)の再導入や、Fムニューシン米財務長官による総額1兆ドル規模の景気対策提案、Gトランプ米大統領による国民に小切手を支給する計画発表(最大1000ドル)、H米財政赤字拡大懸念を受けた米長期金利上昇や、資産現金化に伴う需給逼迫のドル高、Iドル円ショート勢による大規模ロスカットの発動が支援材料となり、週末にかけては、高値111.50まで急伸しました(週初に記録した安値105.14から6円超の急騰劇)。引けにかけて反落するも下値は堅く、結局110.81での越週となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1085で寄り付いた後、@新型コロナウィルスの感染拡大を受けたリスク回避ムードの高まり(リスクアセットの急落→ドル需給の逼迫)や、Aドイツ・3月ZEW景況感調査(結果▲49.5、予想▲26.4)の急低下、BECBによる緊急緩和策の発表(7500億ユーロの緊急資産買い入れプログラム)が重石となり、週末にかけて、2017年4月以来、約2年11ヵ月ぶり安値となる1.0638まで急落しました。FRBによるスワップ協定強化(ドル需給の逼迫緩和期待→ドル売り)の発表を受けて一時的に持ち直すも戻りは鈍く、結局1.0695での越週となっております。
来週の見通し(3/23−3/27)
<ドル円相場>
ドル円は、2/20に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、3/9には、一時101.19(約3年4ヶ月ぶり安値)まで急落しました。しかし、米財政赤字拡大懸念やドル需給逼迫化を背景に米長期金利が上昇に転じると、昨日は一時111.50まで反発するなど(僅か9営業日で10円超の暴騰劇)、歴史的大相場(11円下がって10円上がる乱高下)が繰り広げられております。この間、一目均衡表転換線及び基準線、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線、一目均衡表雲下限及び上限を突破した他、強い売りシグナルを表す三役逆転も終了するなど、テクニカル的に見て、「地合いの強さ」を意識させるチャート形状に変化しつつあります。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策の方向性の違いや(追加緩和手段に乏しい日本)、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避の円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感、G原油価格の不安定化など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残存している状態です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にみて「地合いの強さ(ロスカット主導)」が見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。足元、米財政赤字拡大懸念やリスク回避ムード(資産現金化に伴うドル需給逼迫懸念)を背景にドル全面高の流れが続いていますが、ここから先は、「リスク回避のドル高→クロス円下落→ドル円下落」といった時間差での「ドル売り・円買い」に注意が必要でしょう(ドル需給逼迫を受けたドル高は新興国や資源国の通貨安を通じてクロス円を押し下げ、結果的にドル円下落に波及する恐れあり)。米株・米長期金利及び原油価格の動向や、新型コロナウィルスを巡るヘッドライン、米経済指標の結果を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.00ー112.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、3/9に記録した約1年2ヵ月ぶり高値1.1494をトップに反落に転じると、今週末にかけて、約2年11ヵ月ぶり安値1.0638まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線、一目均衡表雲上限及び雲下限を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び弱気のパーフェクトオーダー成立、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークの発生など、テクニカル的に見て「地合いの悪さ」を印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、Aイタリアを巡る財政悪化および政局不透明感、B冴えない欧州ファンダメンタルズを背景としたECBによる金融緩和長期化観測(7500億ユーロのパンデミック緊急資産購入プログラムの発動)、C英国情勢の先行き不透明感、D新型コロナウィルスの感染拡大を受けた欧州圏でのリスク回避ムード(イタリアの死者数が中国を上回る)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚たくさん残っている状態です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも「上値の重さ」が意識されます。3/9の急騰を受けてショート勢のロスカットが大幅に進んだことも、ユーロドルの下落の一因と考えられます(市場参加者のポジションが軽くなったことで新規のユーロショートINが出やすくなった為)。新型コロナウィルスに絡むヘッドラインや、欧米株及び欧米長期金利の動向、欧米の主要経済指標の結果を睨みながらも、当方では引き続きユーロドルの下落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0450−1.0850
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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