催促相場継続でドル独歩安の流れが一段と加速
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初107.32(先週末終値108.08からギャップダウン)で寄り付いた後、@黒田日銀総裁によるサプライズ談話(潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針)や、Aルメール仏財務相による「G7は今週電話会談を行う」との発言、B世界各国(政府・中銀)による相次ぐ景気対策の発表(金融緩和や財政出動期待)、C上記@ABを受けた株価の持ち直しが支援材料となり、週明け海外時間には、一時108.58まで上昇しました。
しかし、DOECD(経済協力開発機構)による世界経済見通しの下方修正や、E米FRBによる緊急利下げ発表(FF金利の誘導目標を従来の1.5%ー1.75%から1.0%ー1.25%へ引き下げることを全会一致で決定。また、超過準備の付利も0.5%引き下げ1.1%へ)、F上記Eを受けても尚追加利下げを織り込む催促相場(米10年債利回りは週前半の1.173%水準から週末にかけて0.674%まで急低下)、G新型コロナウィルスの感染拡大を受けた投資家心理の急速な悪化(米主要株価指数の急落)が重石となり、週末にかけては、昨年8/26以来、約6ヶ月半ぶり安値となる105.00まで急落しました。
引けにかけて小反発するも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では105.22近辺で推移しております。尚、今週は米民主党大統領候補選のスーパーチューズデーで中道派のバイデン前副大統領が勝利を収めましたが、市場の反応は限られたものに留まりました。また、週末に発表された米・2月非農業部門雇用者数(結果27.3万件、予想17.5万件)についても市場予想を上回る結果となりましたが、ドル売りの流れを変えるには至りませんでした。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週間安値1.1003で寄り付いた後、@ユーロ圏製造業PMI(結果48.0、予想47.8)の良好な結果や、A米経済指標(ISM製造業景況指数など)の不冴な結果、Bユーロキャリートレードの巻き戻し(ショートカバー)、C米FRBによる緊急利下げ、D上記Cを受けても尚歯止めの効かない米長期金利の急低下(ドル売り)、E欧米金融政策格差(利下げ余地のあるFRBと、金融緩和余地の乏しいECBとのコントラスト)が支援材料となり、週末にかけては、昨年7/1以来、約8ヶ月ぶり高値となる1.1356まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では、1.1320近辺で推移しております。
来週の見通し(3/9−3/13)
<ドル円相場>
ドル円は、2/20に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、週末(3/6)にかけて、約6ヶ月ぶり安値となる105.00まで急落しました(わずか11営業日で7円21銭の暴落劇)。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲上限や雲下限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークが発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を強く印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(緊急利下げに踏み切る米国と、追加緩和手段に乏しい日本。市場では再来週のFOMCでFRBが更に50bp以上の利下げに踏み切ることを織り込む催促相場に)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避の円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感、G3月末に向けてのレパトリエーションの思惑(本国還流)など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「続落リスク」が警戒されます。来週発表される日米の経済指標(本邦・10ー12月期GDP統計や、米・2月消費者物価指数、同生産者物価指数、3月ミシガン大消費者信頼感指数など)が冴えない結果となった場合や、新型コロナウィルスの感染拡大を巡るネガティブな報道(パンデミックリスク)がなされた場合などには、「米景気減速懸念→米利下げ観測→米長期金利低下→ドル売り」の経路と、「世界的な株安→投資家心理の悪化→リスク回避の円買い」の双方の経路で、ドル円が一段と押し下げられるリスクも想定されます。
新型コロナウィルスに絡むヘッドライン(サプライチェーンへの打撃→世界経済の減速懸念→リスク回避の株安・円買い)や、日米ファンダメンタルズの結果、米株及び米債市場の動向、日銀による円高けん制発言、世界各国による景気対策など睨みながらも、当方では引き続きドル円相場の続落(為替介入や景気対策でコントロール出来なくなる官製相場の副作用)をメインシナリオとして予想いたします(昨年8/26に記録した安値104.45を試す展開を想定)。
来週の予想レンジ(USDJPY):103.75ー107.75
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、2/20に記録した約2年10ヶ月ぶり安値1.0777をボトムに反発に転じると、週末(3/6)にかけて、約8ヶ月ぶり高値1.1356まで急伸しました(僅か11営業日で579ポイントの急騰劇)。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲下限や雲上限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを表す三役好転及び、強い上昇トレンド入りを示唆するバンドウォークが発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの強さ」を強く印象付けるチャート形状となっております。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスク(欧米貿易摩擦の激化懸念)や、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアを巡る財政悪化懸念および政局不透明感、C冴えない欧州ファンダメンタルズを背景としたECBによる追加緩和観測(早期正常化期待の大幅後退)、D英国情勢の先行き不安(英合意なき離脱リスクの再燃や、英米通商協議の難航リスク)、E新型コロナウィルスの感染拡大を受けたリスク回避ムード(ドル買い・円買い・スイス買い)、Fドイツにおける政局不透明感など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚たくさん残っている状態です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に「地合いの強さ」が見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。現在は欧米金融政策格差(利下げ余地のあるFRBと追加緩和余地の乏しいECBのコントラスト)を背景にユーロ買い・ドル売りの流れが続いていますが、一巡後は再び反落に転じるシナリオが想定されます。来週木曜日(3/12)に予定されているECB理事会の結果を睨みながらも、当方ではユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(ECB理事会については、政策金利の10bpの引き下げと、QE拡大、TLTRO条件緩和、政府と連携した財政政策発動を滲ませる発言の組み合わせを予想)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1100−1.1500
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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