ドル円週間見通し 2019年8月底以降の上昇トレンドから転落(週報3月第1週)

21日からは欧米への感染拡大が懸念され始めたことで欧米株の急落が始まり、世界連鎖株安へと発展したことでドル円も急落に転じた。

ドル円週間見通し 2019年8月底以降の上昇トレンドから転落(週報3月第1週)

2019年8月底以降の上昇トレンドから転落

【概況】

ドル円は新型コロナウイルスの感染拡大報道により1月17日高値110.28円から1月31日安値108.30円まで下落していたが、春節明けからのNYダウ連騰や上海株反騰等を背景にリスク回避感が緩んで2月20日には112.21円まで一段高となった。
感染拡大問題は中国を中心として深刻化したが欧米への影響は限定的として欧米株式市場は楽観的な高値追及を続け、NYダウは2月12日の史上最高値の後は新たな高値更新へ進めずにいたものの29000ドル台を維持、ナスダックは2月19日、S&P500は2月20日に史上最高値を更新していた。しかしイタリアやイランでの感染拡大、欧州全体への広がり、韓国の感染者急増、米国への波及懸念が相次ぎ、21日からは欧米への感染拡大が懸念され始めたことで欧米株の急落が始まり、世界連鎖株安へと発展したことでドル円も急落に転じた。

【投機ポジションの総手仕舞い】

NYダウは2月20日に128.05ドル安、21日に前日比227.57ドル安、24日に1031.61ドル安、25日に879.44ドル安、26日に123.77ドル安となり、2月27日は1190.95ドル安で1日の下げ幅としては過去最大となった。28日も900ドルを超える大幅下落の後、357.28ドル安まで下げ幅を削ったために日足はかなり長い下ヒゲを付けたが7営業日連続の下落となり、下落規模は2018年12月への下落時を超えて2008年のリーマンショック時を彷彿とさせるものとなっている。
世界連鎖株安のなかでドル円は急落した。2月19日から20日にかけての円安時には、日本の感染拡大による日本売りという側面も指摘されたが、連日の株安に加えて国際商品市場の全面安、新興国や資源輸出国の株安・通貨安等により投機ポジションの全面的な手仕舞い売りが進む中では、クロス円全般における手仕舞い=円の買い戻しにより円高が進むという典型となっている。

リスク回避の中で米長期国債は買われ、指標の10年債利回りは一時1.11%まで低下して4日連続で過去最低記録を更新した。その一方で2月24日夕刻まで感染拡大によるリスク回避先として急騰してきたゴールドが24日深夜に急落し、28日の日中までは下げ渋りっていたものの28日夜には暴落的に下げている。
感染拡大による貿易・物流の停滞や消費低迷により国際商品市場では原油等が急落していたものの、安全資産としてゴールドは大上昇していた。しかし、金融市場全般が総崩れとなるとポートフォリオの悪化からゴールドも換金売り・現金化の対象として売られる。リーマンショックの時も同様だった。
リーマンショックはBRICs高度成長による資産バブルが破裂し、それに対して世界的な金融緩和が対症療法として効果を発揮した。しかし今回はリスクの相手は自然であり、感染拡大の事象が収束する見通しが立たないとなかなか立ち直れないのではないかと思われる。米連銀はすでに利下げ再開姿勢を示し始めているが、リーマンショック対策の終了による利上げがさほど進まなかったために効果的な利下げ余地も限られる。

【10か月から1年周期のサイクルにおける天井感】

2月28日の日足は前日比で1.98円幅の大陰線(円高ドル安)だったが、最近では2019年8月26日底への下落途中における8月1日の1.41円、2018年12月暴落時の途中だった12月20日の1.38円を超える規模となった。
2月20日高値からの下げ幅は4.70円安まで拡大した。
2月28日への下落により、昨年8月26日底と今年1月8日安値を結ぶ上昇トレンドの支持線から転落した。1月31日への反落時はこの支持線を維持して切り返しており、この下値支持線との平行線を昨年9月高値から描けば今年2月20日高値に丁度ぶつかる。抵抗線に到達してからの下落で支持線を割り込んだ状況のため、昨年8月からの上昇トレンドからの転落として円高ドル安がさらに進行しやすい状況に入った印象だ。

ドル円は概ね10か月から1年周期のサイクルで底打ちを繰り返してきた。2016年8月24日底、2016年6月24日底、2017年4月17日底、2018年3月26日底、2019年1月3日底と10か月周期が続き、昨年は8か月半8月26日ではやめの底打ちとなったが、昨年4月24日高値から10か月目となる今年2月20日でこのサイクルの戻り天井を付けて下落期に入った可能性がある。次の底形成期は昨年8月底を基準として今年6月から8月にかけての間と想定されるが、それまでの間は下落基調が続きやすくなっていると思われる。
ドル円が3月に入ってさらに安値を切り下げる場合、2018年3月26日安値104.63円、2019年1月3日安値104.82円、2019年8月26日安値104.45円のある104円台を試す可能性が考えられるが、10か月から1年周期のサイクルによる下落期と考えれば残りの下落期間が十分にあるために104円台を割り込む下落規模へと発展する可能性も考えておく必要があるかもしれない。104円台を維持できなくなると2016年6月24日安値(ブレクジット賛成の国民投票ショック)99.04円まで切り下がる可能性も出てくるかもしれない。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月29日早朝安値107.51円を下値支持線、109.00円を上値抵抗線とする。
(2)株暴落が一服すれば揺れ返しの上昇で109円を超えて110円手前を試す可能性も考えられるが、戻りは短命の可能性があると注意し、直近の安値からの戻り幅の半値を削る下落からは下げ再開を疑う。
(3)安値更新からは昨年10月3日安値106.50円試し、さらに2月最終週と同レベルの下落が続く場合には昨年8月26日安値104.45円へ迫る可能性もあると考える。(了)<3:00>

2019年8月底以降の上昇トレンドから転落

ドル円週足

【当面の主な発表予定】

3/2(月)
イスラエル総選挙
英EU自由貿易協定(FTA)交渉開始
08:50 (日) 10-12月期 法人企業統計調査・全産業設備投資額 前年同期比 (前期 7.1%)
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 51.1、予想 47.0)
16:00 (ト) 2月 製造業PMI (1月 51.3)
17:55 (独) 2月 製造業PMI改定値 (速報 47.8、予想 47.8)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI改定値 (速報 49.1、予想 49.1)
18:30 (英) 2月 製造業PMI改定値 (速報 51.9)
23:45 (米) 2月 製造業PMI改定値 (速報 50.8、予想 50.8)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 -0.2%、予想 0.7%)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 50.9、予想 50.5)

3/3(火)
米大統領選スーパーチューズデー
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年同月比 (1月 2.9%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 -0.2%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前年同月比 (12月 2.7%)
09:30 (豪) 10-12月期 経常収支 (前期 79億豪ドル)
12:30 (豪) 豪準備銀行 政策金利 (現行 0.75%)
14:00 (日) 2月 消費者態度指数・一般世帯 (1月 39.1)
15:45 (ス) 10-12月期 GDP 前期比 (前期 0.4%、予想 0.2%)
15:45 (ス) 10-12月期 GDP 前年同期比 (前期 1.1%、予想 1.3%)
16:00 (ト) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 1.35%)
16:00 (ト) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 12.15%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.0%、予想 0.6%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 -0.7%、予想 -0.4%)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 7.4%、予想 7.4%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.2%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.2%)

3/4(水)
06:45 (NZ) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 9.9%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前年同期比 (前期 1.7%)
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 51.8、予想 50.5)
17:55 (独) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 53.3)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 1.3%、予想 0.8%)
22:15 (米) 2月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (1月 29.1万人、予想 17.0万人)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 49.4、予想 49.5)
23:45 (米) 2月 総合PMI改定値 (速報 49.6)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
24:00 (米) 2月 ISMサービス業景況指数 (1月 55.5、予想 55.5)
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

3/5(木)
OPEC臨時総会(ウィーン)
09:30 (豪) 1月 貿易収支 (12月 52.23億豪ドル)
22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 1.4%、予想 1.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.4万人)
24:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 1.8%、予想 -0.4%)
26:00 (英) カーニー英中銀総裁、発言

3/6(金)
OPECとロシアなど非加盟産油国の閣僚級会合(ウィーン)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -4.8%)
09:30 (豪) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.5%)
14:00 (日) 1月 景気先行指数(CI)・速報値 (12月 91.6)
14:00 (日) 1月 景気一致指数(CI)・速報値 (12月 94.1)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 -2.1%、予想 1.5%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 -8.7%、予想 -5.8%)
22:30 (米) 1月 貿易収支 (12月 -489億ドル、予想 -488億ドル)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 22.5万人、予想 19.5万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.6%、予想 3.5%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 3.1%、予想 3.0%)
24:00 (米) 1月 卸売在庫 前月比 (12月 -0.2%)
24:00 (米) 1月 卸売売上高 前月比 (12月 -0.7%)
29:00 (米) 1月 消費者信用残高 前月比 (12月 220.6億ドル、予想 170.0億ドル)

3/7(土)
1〜2月の中国貿易統計

オーダー/ポジション状況

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