パンデミックリスクで世界同時株安が進行。リスク回避の円買いに注意
今週のレビュー(2/24−2/28)
<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初111.61で寄り付いた後、早々に高値111.69まで上昇しました。しかし、@IMF(国際通貨基金)による2020年中国経済見通しの大幅下方修正(6.0%→5.6%)や、A米ゴールドマンサックスによる「新型コロナウィルスの影響で米第1四半期GDPが1%強へ留まる」との見通し変更、B米経済指標(米2月リッチモンド連銀製造業指数や、米2月コンファレンスボード消費者信頼感指数など)の冴えない結果、C新型コロナウィルスの感染拡大を受けたグローバルなリスク警戒ムード(アジア圏のみならず世界的なウィルス蔓延が世界経済を想像以上に冷やすとの警戒感)、
D上記Cを受けた米主要株価指数の急落(米ダウ平均株価は先週金曜日の終値比で一時4300ドル超の急落)、E米長期金利の急低下(米10年債利回りは週初に記録した1.456%から史上最低水準となる1.126%まで急低下)、F世界保健機関(WHO)による新型コロナウィルスの危険性評価引き上げ(最高水準となる「非常に高い」へ引き上げ)、G次回3/17ー3/18のFOMC(連邦公開市場委員会)における追加利下げの急速な織り込み(最大50bp)が重石となり、週末にかけては、昨年10/10以来、約4ヶ月半ぶり安値107.50まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5時50分現在)では、107.58近辺で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0841で寄り付いた後、@欧米貿易摩擦の激化懸念や、Aドイツを巡る政局不透明感、BECBによる追加緩和観測を背景に、週明け早々に安値1.0806まで下落しました。しかし、先週木曜日(2/20)に記録した約2年10ヶ月ぶり安値1.0777をバックに下げ渋ると、Cドイツ・2月IFO景況感指数(結果96.1、予想95.3)及び、Dユーロ圏・2月景況感指数(結果103.5、予想102.8)の良好な結果、E米長期金利の急低下を受けたドル売り圧力、Fドイツ政府が「債務ブレーキ・ルール」の一時停止を検討しているとの報道(財政出動期待の高まり)、G月末ロンドンフィキシングに向けたユーロ買いの思惑等が支援材料となり、週末にかけては、2/4以来となる高値1.1053まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5時50分現在)では、1.1038近辺で推移しております。
来週の見通し(3/2−3/6)
<ドル円相場>
ドル円は、2/20に記録した約10ヶ月ぶり高値112.21をトップに反落に転じると、週末にかけて、約4ヶ月半ぶり安値107.50まで急落しました(1週間で4円71銭の急落劇)。この間、一目均衡表雲転換線や基準線、一目均衡表雲上限や下限、ボリンジャーミッドバンドや200日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転及び、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークが発生するなど、テクニカル的に見て「地合いの弱さ」を印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違いや(3月FOMCにおける追加利下げの織り込み度合いが急上昇)、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中貿易摩擦の再燃リスク、C朝鮮半島や中東を巡る地政学的リスク、D新型コロナウィルスの感染拡大リスク(米株安→米長期金利低下→ドル売りと、米株安→リスク回避ムード→円買いの2つの波及経路)、E英合意なき離脱の再燃リスク、F米大統領選挙の先行き不透明感など、ドル売り・円買いを想起させる懸念材料は引き続き沢山残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。来週発表される一連の米経済指標(2月ISM製造業景況指数や、2月ISM非製造景況指数、2月雇用統計など)が冴えない結果となった場合や、新型コロナウィルスの感染拡大を巡るネガティブな報道がなされた場合などには、「米景気減速懸念→米利下げ観測再燃→米長期金利低下→ドル売り」の経路と、「世界的な株安→投資家心理の悪化→リスク回避の円買い」の双方の経路で、ドル円が一段と押し下げられるリスクも想定されます。
新型コロナウィルスに絡むヘッドライン(サプライチェーンへの打撃→世界経済の減速懸念→リスク回避の株安・円買い)や、米経済指標の結果、米株及び米債市場の動向を睨みながらも、当方では引き続きドル円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(10/3に記録した安値106.48を試す展開を想定)。尚、来週は3/3にオーストラリア中銀(RBA)、3/4にカナダ中銀(BOC)の政策金利イベントが予定されており、両者がサプライズ利下げに踏み切った場合、世界同時利下げへの思惑から、円独歩高に繋がる恐れもあり、注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):105.00ー109.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は、2/20に記録した約2年10ヶ月ぶり安値1.0777をボトムに反発に転じると、週末にかけて、高値1.1053まで急伸しました(1週間で276ポイントの急騰)。この間、一目均衡表転換線や一目均衡表基準線、ボリンジャーミッドバンドや心理的節目1.10丁度を上抜けするなど、テクニカル的にみて、「地合いの強さ」を印象付けるチャート形状となっております(但し、90日移動平均線1.1050や、200日移動平均線1.1099の上抜けには失敗)。
一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスク(欧米貿易摩擦の激化懸念)や、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアを巡る財政悪化懸念および政局不透明感、C冴えない欧州ファンダメンタルズを背景としたECBによる追加緩和観測(早期正常化期待の大幅後退)、D英国情勢の先行き不安(英合意なき離脱リスクの再燃や、英米通商協議の難航リスク)、E新型コロナウィルスの感染拡大を受けたリスク回避ムード(ドル買い・円買い・スイス買い)、Fドイツにおける政局不透明感など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚たくさん残っている状態です。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的に「地合いの強さ」が見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むシナリオが想定されます。欧州経済指標(ユーロ圏2月消費者物価指数や、ユーロ圏1月小売お売上高など)や、新型コロナウィルスに絡むヘッドライン(含むドイツ政府やECBの対応方法)を睨みながらも、来週はユーロドル相場の反落をメインシナリオとして予想いたします(90日移動平均線や200日移動平均線をバックに戻り売りが強まる展開を想定)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0850−1.1150
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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