ドル円見通し 感染拡大でのリスク回避にやや一服感だが、1月17日からの下落基調継続(20/1/29)

金融市場全般が27日までの反応がやや過剰だったとしてポジション調整的な動きを採ったという印象だ。

ドル円見通し 感染拡大でのリスク回避にやや一服感だが、1月17日からの下落基調継続(20/1/29)

【概況】

新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動の停滞と景気減速懸念を強めて金融市場全般がリスク回避へ動く中、ドル円は27日朝には108.73円まで一段安となり、1月17日高値110.28円からの下げ幅は1.55円となった。1月6日と8日の両安値をダブル底とした上昇幅は1月17日高値まで2.63円。その半値押しが108.96円で既に割り込み、3分の2押し108.52円に迫るところだったが、27日朝安値108.73円に対して28日夜安値108.74円でかろうじて安値更新を回避して29日早朝には109.26円まで戻した。

中国武漢発の新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避感が株安円高の背景であり、27日朝は中国の感染死者数が80人を超えたとの報道がきっかけだった。しかし28日午前には死者数が100名を超えたとの報道に際してはドル円が一旦下げかけたものの早々に切り返し、その後は報道前よりも戻り高値を切り上げていた。

1月21日から27日午前への大幅下落によりこの手の報道に対する慣れも生じてきているのかもしれないが、1月27日に一時500ドル以上の大幅下落となっていたダウ先物が28日午前の感染拡大報道に際しては売られ過ぎからの買い戻しの最中で弱気反応も限定的で早々に戻り高値を切り上げたことで、金融市場全般が27日までの反応がやや過剰だったとしてポジション調整的な動きをとったという印象だ。

NYダウは28日に6日ぶりの反発となり前日比187.05ドル高と切り返した。しかし27日にかけて一段安した状況の範囲にある。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が訪中して「中国が取る措置を断固支持する」「中国の措置が拡大抑制に有効で最終的に疫病との戦いに勝つと信じる」と述べたことで市場もやや落ち着ている印象もある。

米連邦準備制度理事会(FRB)のFOMCが28日から始まったことも市場のポジション調整を助長したようだ。FOMCでは金融政策は現状維持と見られるが、28日にもトランプ米大統領が「他国の金利と競争するためFRBは賢明になり利下げすべきだ」とツイッターで口先介入しており、30日未明に予定される声明文や議長会見の内容が注目される。
1月の米消費者景気信頼感指数が市場予想を上回ったことも株高ドル高円安要因だった。米コンファレンス・ボードが発表した1月の消費者景気信頼感指数は131.6となり前月の128.2から上昇して市場予想の128.0も上回った。

【感染拡大の継続、春節明けの中国株暴落リスク】

新型コロナウイルスによる死者は1月26日時点で56人だったが27日には80人を超え、28日には106人、29日早朝時点では131人、感染者数は5400人超に拡大している。ドイツでも感染者が出る等世界的な広がりを見せている。2002年から2003年に感染拡大したSARSでは、日本に滞在した台湾人医師が台湾帰国後に発症した以外で日本人感染はなかったが、今回はすでに6名発生しており、人から人への感染拡大レベルはSARSを超えている。SARSの中国感染者は5327人で今回の新型肺炎感染者数は29日朝時点でSARSを上回った。

感染拡大のピークが今春とすればまだ加速度的な拡大となる可能性も抱えている。中国は春節の大型連休を延長したが、春節明けの上海株式市場や人民元の動きも警戒される。仮に暴落的な再開となれば世界連鎖株安が深刻化する可能性も警戒すべきだろう。今のところは感染死者数が拡大中でも幾何級数的な加速感には至っていないが、倍増してゆく展開になると市場もこの問題に対して高を括れなくなると思う。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月15日深夜安値から4日目となる1月22日未明安値でいったんボトムをつけてから一段安となり新たな弱気サイクルに入ったが、1月22日未明安値から3日目となる1月27日朝安値の後は下げ渋りを丸1日続けていたために、28日朝時点では27日朝安値を直近のサイクルボトムと仮定した。またトップ形成期は27日から29日の日中にかけての間と想定されるので既にサイクルトップをつけた可能性もあるとしたが、1月27日朝安値割れ回避の内は上昇余地ありとし、27日朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとした。

1月28日夜の下落では27日朝安値割れを回避して戻しているため、まだ上昇余地ありとみる。また27日朝と28日夜の両安値をダブルボトムとした場合は高値形成期が30日以降へ延びる可能性もあると考える。ただし、1月17日からの下落基調はなお継続するとみて、109円割れからは下げ再開を警戒して27日朝安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして30日朝から2月3日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では29日朝への反発で遅行スパンが好転し、先行スパンもいったん上抜けたが、その後は先行スパン内に潜り込んでいる。29日朝高値を上抜く場合はまだ戻りを試すとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒し、27日朝安値割れからは一段安入りとなるので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は27日朝に20ポイントまで急降下した後はジリ高で戻している。50ポイント以上での推移中は高値を試す余地ありとみるが、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開を疑い、40ポイント割れからは30ポイント割れへの低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.00円、次いで1月27日朝安値108.73円を下値支持線、29日朝高値109.26円を上値抵抗線とする。
(2)109円を上回るか、一時的に割り込んでも早々に切り返す内は上昇余地ありとし、109.26円超えからは109.50円手前を試すとみるが、109.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみてその後の109.20円割れからは下げ再開注意とする。
(3)109円割れからは下げ再開警戒として27日朝安値試しを想定する、底割れからは108円台序盤(108.25円から108.00円)への下落を想定する。108.25円前後はいったん買い戻しも入りやすいところとみるが、27日朝安値を割り込んだ後も109円以下での推移が続く内は30日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

1/29(水)
休場 中国(旧正月)
EU欧州議会、英国のEU離脱案を採決
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)
14:00 (日) 1月 消費者態度指数・一般世帯 (12月 39.1、予想 39.5)
16:00 (独) 2月 GFK消費者信頼感調査 (1月 9.6、予想 9.6)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 1.2%、予想 0.5%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 5.6%、予想 10.3%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 1.50-1.75%、予想 1.50-1.75%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

1/30(木)
休 場 中国(旧正月)
06:45 (NZ) 12月 貿易収支 (11月 -7.53億NZドル、予想 1.00億NZドル)
09:30 (豪) 10-12月期輸入物価指数 前期比 (前期 0.4%、予想 0.4%)
17:55 (独) 1月 失業者数 前月比 (12月 0.8万人、予想 0.5万人)
17:55 (独) 1月 失業率 (12月 5.0%、予想 5.0%)
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 101.5、予想 101.8)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感確定値 (速報 -8.1)
19:00 (欧) 12月 失業率 (11月 7.5%、予想 7.5%)

21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 -0.1%)
21:00 (メ) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 -0.2%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE) 政策金利 (現行 0.75%、予想 0.75%)
21:30 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、会見
22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前月比 (12月 0.5%、予想 -0.6%)
22:00 (独) 1月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.7%)
22:30 (米) 10-12月期GDP速報値 前期比年率 (前期 2.1%、予想 2.1%)
22:30 (米) 10-12月期個人消費速報値 前期比 (前期 3.2%、予想 2.0%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE速報値 前期比 (前期 2.1%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.5万人)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 173.1万人)

オーダー/ポジション状況

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