ドル円見通し 昨年8月底以降の高値を更新、110円台を維持(週報1月第3週)

株高がさらに進む中で12月の上値の重さも解消されて110円超えまでV字反騰したという印象だ。

ドル円見通し 昨年8月底以降の高値を更新、110円台を維持(週報1月第3週)

ドル円見通し 昨年8月底以降の高値を更新、110円台を維持

【概況】

ドル円は1月2日の米軍によるイラン革命防衛隊司令官殺害の空爆事件から1月6日朝安値107.75円へ下落し、いったん戻した後に1月8日にはイランによるイラク駐留米軍による報復攻撃から再び売られて107.65円まで安値を更新したが、その後は米・イランによる全面戦争突入が回避される動きとなったために両安値をダブルボトムとして反騰に転じた。
突然高まった中東有事リスクが急速に事態悪化の回避となったために株式市場は楽観を取り戻してNYダウは1月9日に史上最高値を更新、ドル円も株高に背中を押されて急反騰となり1月9日には年初からの急落分を解消した。その後もNYダウが連日のように史上最高値を更新する中で1月14日には110.21円の高値を付けて12月2日以降に何度も挑戦して失敗してきた110円台回復を実現した。1月15日深夜には109.79円まで若干押されたものの1月16日夜には110円台を回復して17日には110.28円まで戻り高値を切り上げた。

イラン情勢が緊張する前の段階では、株高が進行する中でもドル円は110円台に届かずに上値の重い状況が続き、12月31日には前日比0.59円の円高ドル安となる日足陰線で下落していた。米中通商協議が第1段階合意に至って株式市場は当面米中関係の悪化による売り圧力はないとして楽観的な市場心理を拡大したが、ドル円は先行きの不透明感は残るとの懸念から株式市場の楽観には同調しないという動きだった。
イラン情勢が突然緊張状態に陥ったことで年末の円高がさらに加速したが、それが短期で解消したことがドル円にとっては安値を出し切って反騰入りするきっかけとなり、株高がさらに進む中で12月の上値の重さも解消されて110円超えまでV字反騰したという印象だ。

【米中は第一段階合意に署名、イラン情勢で有事リスク反応にも学習効果が出る?】

1月15日には中国の劉副首相がホワイトハウスを訪れて第1段階合意文書に署名した。中国は米国産品の輸入を拡大し、米国は制裁関税の一部を引き下げる。しかし中国の産業補助金や国有企業等の構造問題を含む「第2段階」の交渉は難航が予想されている。
米国は署名から30日後に昨年9月に発動した制裁関税第4弾の税率を現行の15%から7.5%に引き下げるものの、制裁関税のうち第1弾から第3弾までの拡大税率については据え置かれる。このため中国製品計3700億ドル相当へ追加関税が課せられたままで第2段階の合意へ向けた交渉を続けることとなるが、当面としては新たな予定、見通しは立っていない。トランプ大統領は大統領選挙での再選後までずれ込む可能性もあるとしている。

米中が第2段階の交渉に入り、そこで対立感が強まるならば、株式市場も今の楽観姿勢にブレーキがかかる可能性もある。しかしトランプ大統領は再選のためには対中、対イラン等で強気の姿勢を示しつつもディール=取引の成果期待させつつ株高基調を維持することに注力すると思われる。イランへの突然の空爆で市場も肝を冷やしたが、結局は全面戦争回避という結果となったことは、今後も同様の有事緊張感を抱かせる軍事衝突等があっても、市場は学習効果で過剰な悲観反応を示さずに、情勢が改善すれば一段と楽観を強めるかもしれない。

【8月からの上昇は三段目に】

12月2日高値109.72円から1月8日安値107.65円までの下げ幅は2.07円だったが、V字反騰により急落前の高値を上抜き返した。
日足では概ね3か月前後の底打ちサイクルで推移しているが、底打ち間隔は2か月から4か月とやや幅がある。昨年8月26日底から2か月強の11月1日安値、そこから2か月強の今年1月8日安値でこのサイクルの底を付けて上昇期に入ったと思われる。また、8月26日底から9月18日高値までを一段目とし、10月3日安値から12月2日高値までを二段目とすれば、1月8日安値では10月3日安値を割り込まずに切り返して一段高したために、1月8日安値からは三段目の上昇に入ったと考えられる。
8月26日からの一段目の上昇幅は9月18日まで4.02円、10月3日からの二段目の上昇幅は12月2日まで5.27円。今回の三段目もそれらと同様の規模に発展する可能性も考えられる。仮に一段目と同レベルなら111.67円。二段目と同レベルなら112.92円と計測される。また1月8日への下げ幅の倍返しなら111.79円と計測される。110円台を維持するか、一時的に割り込んでも回復しつつ1月8日以降の高値を切り上げる場合はこれらの上値計算値に迫り、到達する可能性もあるだろうと注意する。

ただし、直前の高値から反落しても底上げパターンを維持して高値を更新すれば、市場心理も高値追及感が強まるものだが、高値を更新しても長続きせずに失速することも多いのが相場だ。昨年3月5日高値から3月25日へ2.40円の下落後に4月24日へ高値を更新したが、3月5日高値から2か月持たずに下落に転じている。新年早々にイラン情勢で肝を冷やしたように、相場には突然の材料が降りかかるものだ。またトランプ大統領登場以降はトランプ大統領発言、ツイートで市場全体が一喜一憂することも繰り返されてきた。現状はV字反騰により強気感が過剰となりやすい状況にあるが、強気の梯子を外されると脆さが噴出するという側面にも注意したい。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底とした上昇は1月14日高値でいったんサイクルトップを付けて1月15日深夜へ小反落し、1月17日に高値を更新したことで新たな強気サイクルに入ったと思われる。1月14日午前高値を基準として高値形成期は17日午前から21日午前にかけての間と想定されるので、すでに17日午前高値でサイクルトップを付けた可能性もある。1月15日深夜安値を割り込まないうちは上昇余地ありとし、15日深夜安値割れからは底割れによる弱気サイクル入りとして20日夜から22日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、17日朝への上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜き返した。その後は新たな高値更新へ進めずにいるために遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンを上抜いた状況は維持している。このため1月17日高値を上抜くところからは一段高入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とし、110円割れから続落に入る場合は両スパン揃っての悪化となるため下げ再開を警戒して安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は1月14日高値から1月17日の高値への高値切り上がりに対して指数のピークが切り下がっているため弱気逆行となっている。60ポイント超えからは上昇再開とみるが、50ポイント以下での推移中は下げ再開注意とし、40ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円、次いで1月15日深夜安値109.79円を下値支持線、1月17日午前高値110.28円を上値抵抗線とする。
(2)110円以上での推移か、わずかに割り込んでも回復するうちは上向きとし、110.28円超えからは110.50円試しを想定する。110.50円前後はいったん売られやすいとみるが、110円以上での推移なら21日も高値を試す余地ありとみる。また110.50円に到達後も110.20円以上での推移が続く場合は週後半にかけて111円を目指す可能性も検討される。
(3)110円割れから続落の場合は弱気転換注意として15日深夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとみて109.50円前後試しを想定する。109.50円前後は押し目買いされやすいところとみるが、材料を伴って109.50円を割り込む場合は109円台序盤へ下値目途を引き下げる。(了)<19日17:00>

【当面の主な予定】

1/20(月)
休場 米国(キング牧師生誕記念日) 株式・債券市場は休場
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (10月 -0.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (10月 -8.1%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 -4.5%)
16:00 (独) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.0%、予想 0.2%)

1/21(火)
世界経済フォーラム=ダボス会議 1月24日まで
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:30 (英) 12月 失業保険申請件数 (11月 2.88万件)
18:30 (英) 12月 失業率 (11月 3.5%)
18:30 (英) 11月 失業率・ILO方式 (10月 3.8%、予想 3.8%)
19:00 (独) 1月 ZEW景況感・期待指数 (12月 10.7)

1/22(水)
08:30 (豪) 1月 ウエストパック消費者信頼感指数 (12月 95.1)
23:00 (米) 11月 住宅価格指数 前月比 (10月 0.2%、予想 0.3%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (11月 535万件、予想 543万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 -1.7%、予想 1.3%)

1/23(木)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関・季調前 (11月 -821億円、予想 -1700億円)
08:50 (日) 12月 貿易統計・通関・季調済 (11月 -608億円、予想 -2360億円)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 3.99万人、予想 1.10万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 5.2%、予想 5.2%)
13:30 (日) 11月 全産業活動指数 前月比 (10月 -4.3%、予想 0.1%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数・改定値 (速報 90.9)
14:00 (日) 11月 景気一致指数・改定値 (速報 95.1)
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.4万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 176.7万人、予想 175.0万人)
24:00 (米) 12月 景気先行指数 前月比 (11月 0.0%、予想 -0.2%)
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感 (12月 -8.1、予想 -7.8)

1/24(金)
休場 中国(旧正月)
06:45 (NZ) 10-12月期消費者物価 前期比 (前期 0.7%、予想 0.4%)
06:45 (NZ) 10-12月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.5%、予想 1.8%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価指数 前年同月比 (11月 0.5%、予想 0.7%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (11月 0.5%、予想 0.7%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (11月 0.8%、予想 0.9%)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
17:30 (独) 1月 製造業PMI (12月 43.7、予想 44.5)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI (12月 52.9、予想 53.0)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI (12月 46.3、予想 46.8)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI (12月 52.8、予想 52.8)
18:30 (英) 1月 製造業PMI (12月 47.5、予想 48.7)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI (12月 50.0、予想 51.0)
23:45 (米) 1月 製造業PMI (12月 52.4、予想 52.5)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI (12月 52.8、予想 52.5)

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