ドル円見通し 中東緊張緩和で110円台に到達するも、米中通商協議署名(20/1/15)

果たして第1段階合意から第2段階協議・合意へとスムーズに進むのかどうか、署名後の両国の姿勢を見定める必要がありそうだ。

ドル円見通し 中東緊張緩和で110円台に到達するも、米中通商協議署名(20/1/15)

【概況】

1月2日夜の米軍によるイラン革命防衛隊司令官空爆殺害から中東情勢が一挙に緊迫したとしてドル円は1月6日朝に107.75円へ下落、1月8日朝にはイランの報復攻撃により米・イランの全面戦争化懸念が強まって107.65円まで安値を更新した。しかし米・イラン双方が全面戦争化を望まないとしたことで緊張が一挙に解れてドル円は反騰に転じた。9日に109円台を回復、先週末には109.68円をつけて年末の急落前高値である12月26日深夜の109.68円と同値まで戻してイッテコイとなった。

イラン情勢が落ち着き、1月15日の米中通商協議第1段階合意署名が迫る中、米中関係改善期待を背景とした株高に後押しされて1月14日午前には110.21円をつけて昨年8月26日底以降の高値を更新、昨年5月以来となる110円台に乗せた。

昨年12月2日に109.72円まで上昇した後は12月13日や12月27日等で高値更新に挑戦したが110円の壁が分厚く年末から年初へと失速することとなった。そこへイラン情勢が加わったために1月8日安値まで一段安したわけだが、イラン情勢が緊張緩和へ急変したことで却って押し目としての安値を出し切って反騰入りするきっかけを得た様だ。
しかし、110円台へいったん乗せたものの維持しきれずに1月15日朝には109.80円前後まで失速している。

1月14日の米国株式市場は米中第1段階合意文書への署名を15日に控えて楽観的展開を続けてNYダウとナスダック総合指数は史上最高値を更新したが、米消費者物価指数の伸びが鈍かったこと、米中通商協議に関しても米国による関税引き下げが大統領選挙の11月以降へずれ込む公算と報じられた事などが上値を抑えてダウは高値から100ドル強の反落で前日比32.62ドル高に止まった。

米労働省が発表した昨年12月の消費者物価指数は前月から0.2%の上昇、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は0.1%の上昇だった。前年同月比では全体が2.3%上昇、コア指数も2.3%上昇だった。市場予想は前月比で全体が0.3%上昇、コアが0.2%上昇、前年同月比では全体が2.3%上昇、コアも2.3%上昇だった。伸びが鈍かったことは米連銀が利上げを検討せずに様子見を続けることを支持するものと市場は受け止めた。 米カンザスシティー連銀のジョージ総裁も14日の講演で昨年実施した3回の利下げの効果を見極めるとし、「現行の金利水準を当面据え置くことが適切だ」と述べている。

【米中通商協議の第1段階合意、その後は?】

米中は1月15日にワシントンで通商協議の第1段階の合意書に署名する予定で中国の劉副首相が訪米した。この合意により両国関係の改善が期待されるところだが、米国による中国への制裁関税は11月の米大統領選挙が終わるまで維持される可能性が高いと報じられており、合意署名から一挙に関係改善となり世界景気の活性化に寄与するという楽観ムードはやや水を差された印象がある。
米国は制裁関税引き下げの判断は中国による第1段階合意の順守状況次第としている。

報道によると、中国は向こう2年間で米国製品の輸入を2017年比で約800億ドル増、エネルギー関連で500億ドル強、サービスで約350億ドル、農産品で約320億ドルそれぞれ購入を拡大する方針という。農産品の購入拡大規模は年間で凡そ160億ドルとなり2017年の240億ドルと併せて400億ドル規模となり、トランプ大統領の目標数値と一致する。具体的内容については1月15日のホワイトハウスでの署名後に発表される見通しとの報道もある。

ムニューシン米財務長官は、中国との第2段階の通商合意が完了するまで中国製品に対する関税を維持する姿勢を表明した。「第2段階の合意があるまで関税は継続する。第2段階の合意が速やかに得られればトランプ大統領は第2段階の一環で関税解除を検討する」と述べている。果たして第1段階合意から第2段階協議・合意へとスムーズに進むのかどうか、署名後の両国の姿勢を見定める必要がありそうだ。

【イラン情勢はまだ燻る?】

イラン核合意に欧州から参加している英国、フランス、ドイツは1月14日にイランの合意違反を是正するための「紛争解決手続き」を発動するとの共同声明を発表した。一定期間内にイランが合意下の核開発制限に従う姿勢に戻らなければ制裁を再開する姿勢だ。
1月14日にはイラクの首都バグダッド北方のタジ基地にロケット弾数発が撃ち込まれた。負傷者はいない模様だが、タジ基地には米軍主導の有志連合部隊が駐留していた。イランに近いイスラム教シーア派民兵による攻撃と思われるが、同様のイラン支持勢力による米軍等への反撃的な軍事行動が続くようだと、イラン情勢も再びきな臭くなる可能性がある。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底として強気サイクル入りしてきた。今回の高値形成期は1月10日夜から14日深夜にかけての間と想定してきたが、14日午前高値で110円を超えてから110円を割り込む反落となっているので、14日午前高値を直近のサイクルトップとする。ボトム形成期は1月8日午前安値を基準とすれば15日午前までの間と想定されるが、先週末の11日未明安値を基準として16日未明から20日朝にかけての間へ延びる可能性も考えられる。このため14日午前高値を超えないうちはボトム形成が延長される可能性もあるとみて安値試し優先とし、15日夕刻以降へ続落の場合は16日未明から20日朝にかけての間への下落継続の可能性を考える。
1月14日高値を上抜くところからは新たな強気サイクル入りとして17日午前から21日午前にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、8日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持してきたが、15日朝への反落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しつつある。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、14日午前高値超えからは新たな強気サイクル入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は50ポイントを割り込んでいる。このため60ポイント超えへ戻せない内は一段安余地ありとし、30ポイント前後を試すとみる。60ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移に入れば上昇再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.50円を下値支持線、1月14日午前高値110.21円を上値抵抗線とする。
(2)110円以下での推移中は安値試し優先として109.50円前後試しを想定する。109.50円前後では押し目買いも入りやすいとみて、その後に110円を超えるところからは上昇再開・一段高へ進む可能性が高まるとみるが、109.50円を割り込んでさらに続落の場合は109.25円前後へ当面の下値目処を引き下げる。また110円以下での推移が続く場合は16日の日中も安値試しを続けやすいとみる。
(3)110円超えからは上昇再開の可能性ありとし、14日午前高値超えからは新たな強気サイクル入りとして110.50円前後試しへ向かうとみる。110.50円前後ではいったん売られやすいと注意するが、110円以上での推移が続く場合は16日以降への上昇で111円を試す可能性も出てくると考える。

【当面の主な予定】

1/15(水)
08:50 (日) 12月 マネーストックM2 前年同月比 (11月 2.8%、予想 2.7%)
09:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、日銀支店長会議で挨拶
18:30 (英) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)
18:30 (英) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 1.5%、予想 1.5%)
18:30 (英) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.7%、予想 1.7%)
18:30 (英) 12月 小売物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.4%)
18:30 (英) 12月 小売物価指数 前年同月比 (11月 2.2%、予想 2.3%)
18:30 (英) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -0.5%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -2.2%、予想 -1.0%)

19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調済 (10月 245億ユーロ、予想 220億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調前 (10月 280億ユーロ)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.0%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.3%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前月比 (11月 -0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.3%、予想 1.3%)
22:30 (米) 1月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (12月 3.5、予想 3.6)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)


1/16(木)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 6.50%、予想 6.50%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前月比 (10月 -6.0%、予想 3.0%)
08:50 (日) 11月 機械受注 前年同月比 (10月 -6.1%、予想 -5.4%)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.1%)
08:50 (日) 12月 国内企業物価指数 前年同月比 (11月 0.1%、予想 0.9%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数、改定値 前年同月比 (速報 1.5%、予想 1.5%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 12.00%、予想 11.50%)
21:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.2%)

22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 180.3万人)
22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (12月 0.3、予想 3.0)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 0.2%、予想 -0.1%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 76、予想 74)
27:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、発言
30:00 (米) 11月 対米証券投資 (10月 -483億ドル)
30:00 (米) 11月 対米証券投資・短期債除く (10月 325億ドル)

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