ドル円、心理的節目110円を突破するも伸び悩む展開。Sell the factに要注意
海外時間の為替概況
14日(火)の外国為替市場でドル円は上昇後に反落。@米中の第1段階合意を巡る期待感や、A中東を巡る地政学的リスクの後退、B上記@Aを受けた米株高・米長期金利上昇の流れ、C米国が中国に対する「為替操作国」認定を解除したこと等が支援材料となり、日本時間朝方には、5/23以来、約7ヶ月半ぶり高値となる110.21まで急伸しました。しかし、110円台前半のストップをつけた後は戻り売りが優勢となり、伸び悩むと、D米・12月消費者物価指数(結果0.2%、予想0.3%)や、同コア指数(結果0.1%、予想0.2%)が市場予想を下回ったことや、E一部通信社より「米政府は対中関税を米大統領選後まで維持する見通し」と報じられたこと等が重石となり、米国時間午後にかけては、安値109.86まで押し戻される展開となりました。引けにかけて小反発するも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では、110.00近辺で推移しております。
一方、ユーロドル相場は終始方向感に欠ける展開。新規材料に乏しい中、アジア時間午後にかけて、高値1.1145まで上昇するも、前日高値1.1147を前に伸び悩むと、米国勢参入後に、安値1.1105まで反落しました。もっとも、米・12月消費者物価指数が市場予想を下回ったことや、米長期金利が低下したこと(米10年債利回りは1.86%→1.81%)等がドル売り(ユーロ買い)を誘うと、引けにかけて持ち直す展開に。本稿執筆時点(日本時間5時00分現在)では、1.1128近辺で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、リスク選好ムードの高まりを背景に、約7ヶ月半ぶり高値110.21まで上昇しました。1/8に記録した安値107.64から僅か4営業日で2円57銭上昇した計算となります。この間、主要レジスタンスポイントである200日移動平均線や、一目均衡表転換線、一目均衡表基準線、一目均衡表雲上限、ボリンジャーミッドバンドを上抜けした他、昨年11月以降、幾度となく続伸を阻んできた強力な抵抗帯(レジスタンス)109.70の壁も突破。更には心理的節目110円乗せも実現しました。テクニカル的に見て、「地合いの強さ」を意識させるチャート形状となりつつあります。目先は、昨年5/21に記録した高値110.69を試す展開が視野に入ります。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策の方向性の違いや、Aトランプ米大統領の弾劾リスク(※ペロシ下院議長は14日、トランプ米大統領の弾劾訴追決議の上院への送付を巡り、15日に採決を実施する旨表明)、B米国ファンダメンタルズの冴えない結果(※ISM製造業景況指数、非農業部門雇用者数、消費者物価指数など主要経済指標は軒並み市場予想を下回る冴えない結果)、C米中貿易摩擦の再燃リスク(※第1段階合意署名は予定通り行われる公算が大きいがものの、第2段階合意の「後ずれ」が最大のリスク。事実昨日も一部通信社が「米政府は対中関税を米大統領選後まで維持する見通し」と報道)、D英国を巡る不確実性、E朝鮮半島を巡る地政学的リスク、F中東情勢の緊迫化(トランプ米大統領演説以降、緊張感が和らぐも油断は禁物)など、ドル売り・円買いを想起させる材料は今尚多く残っている状況です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的な「力強さ」を見せつつも、ファンダメンタルズ的な「弱さ」が続伸を阻むシナリオが想定されます。110円upperのストップを付けた事で、ここからの続伸には新たなドル買い・円売り材料が必要となってきます(これまではショートポジションのロスカットがドル円の買い戻しを牽引)。以上を踏まえると、上値を積極的に追っていく展開は見込みづらく、むしろ、米中合意署名成立後の反落リスク(材料出尽くしに伴うSell the fact)に注意が必要でしょう。米中及び中東を巡るヘッドラインや、米経済指標(卸売物価指数やニューヨーク連銀製造業景況指数、ベージュブックなど)の結果を睨みながらも、本日はドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。
本日の予想レンジ:109.60ー110.30
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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