ドル円見通し 全面戦争突入回避への急旋回で反騰、12月後半水準に戻る(20/1/10)

NYダウやナスダックが史上最高値を更新する中でドル円は9日深夜に109.57円まで戻り高値を切り上げた。

ドル円見通し 全面戦争突入回避への急旋回で反騰、12月後半水準に戻る(20/1/10)

【概況】

1月2日夜に米軍がイラン革命防衛隊司令官を空爆で殺害する事件が発生して中東情勢が一挙に緊迫して1月3日には108円を割り込み、6日午前には107.75円まで急落した。イランが報復を宣言しつつ3日間の喪に服すとして動かず、米国側も新たなアクションを起こさない中で7日深夜には108.62円までいったん戻したが、8日朝にイランがイラク駐留の米軍基地へ弾道ミサイルを発射して報復攻撃を行ったため、再び米・イランの全面戦争化や中東全般の有事リスクがさらに高まったとして8日午前には107.65円まで下落して6日朝安値を割り込んだ。

しかし、イラン外相が「国連憲章51条による自衛行為」として攻撃されたことに対する釣り合いの取れた報復にとどめて全面戦争化を望まないと表明し、米軍側も即座の反撃に移らず犠牲者が出なかったことを強調したために全面戦争突入が回避されるのではないかとの見方が浮上してドル円は反騰に転じた。
8日夜にトランプ大統領は米国民向けの演説を行い、「イランに強力な経済制裁を科す」としたものの「軍事力は行使したくない」と述べた。この発言により全面戦争化は回避されたと市場は判断し、ドル円は9日未明には109.24円まで上昇、さらに9日の日中も株高が進んでリスクオン心理が一挙に回復、NYダウやナスダックが史上最高値を更新する中でドル円は9日深夜に109.57円まで戻り高値を切り上げた。

12月26日深夜高値109.68円を含めて12月中は株高進行にも関わらず110円に届かない足踏みが続き、12月30日からは109円を割り込んで持ち合いを下放れしていた。その段階ではイラン情勢の緊張云々よりも株高に対してはやや楽観し過ぎと冷静に受け止め、ドル指数が下落する中のドル安感を背景に円高ドル安へ風向きが変わっていた。そこへイラン情勢が噴出したためにリスク回避による円高圧力が増して108円割れに至る流れとなった。

8日朝はリスク回避感が最も強まった状況だったが、その後の全面戦争回避への動きにより、かえって安値を出し切った感が強まった。1月6日朝安値と8日午前安値の間にあった7日深夜高値を上抜き返したことにより、両安値をダブル底としたテクニカルな上昇感も加わったために、12月26日深夜高値に迫るところまで戻し、年末年始の下落をほぼ解消したといえる。

イラン領内でウクライナの民間航空機が墜落した事件について、イラン軍による誤射の可能性が高いとの報道が出ている。カナダ人の被害も大きかったが、トルドー首相は「意図的でなかった可能性がある」と述べる等、軍事的緊張が後退した流れに水を差すようなイラン批判を手控えている印象だ。

英下院は9日にEU離脱案を可決した。1月末に離脱が始まる。今後は英国とEUの貿易交渉、離脱の現実化により混乱しないかどうかが焦点となってゆく。

【中東情勢一服、米雇用統計や米中協議へテーマは移る】

市場は年始のイラン騒動をひとまず脇に置き、1月10日の米雇用統計等を見ながら年末時点までの通常モードに回帰して展開してゆくと思われる。今後は米中欧の経済指標動向、米連銀や各国中銀の金融政策、米中通商協議動向等へと主要テーマも変わっていきそうだ。

そこで問題になるのは米中協議の先行きとなる。12月12日に米中は第一段階の合意に達したとして年明けの署名方針を表明してきた。トランプ大統領は1月9日に、第二段階の交渉をすぐに始める意向だとしたが、今年11月の大統領再選後まで合意を持ち越す可能性があるとも述べている。米中双方が協議進展をアピールするために段階を分けて合意できるレベルに限って第一段階合意に至ったわけで、第二段階以降の本題・難題については簡単に解決できないのではないかとの懸念が根強い。イラン情勢が落ち着けば、再び米中動向等の観測記事、要人発言等に左右されてゆく流れとなるのだろう。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブル底として強気サイクルに入った。7日深夜高値を基準として高値形成期は10日夜から14日深夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地があると思われる。10日夜の米雇用統計を強気で通過すれば週明けへ続伸しやすくなるが、7日深夜高値から3日目となるので雇用統計後に下落反応となる場合は弱気サイクル入りにより13日午前から15日午前にかけての間への下落へ進む可能性も考えられる。

60分足の一目均衡表では、8日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も続伸しているために両スパンそろっての好転を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、戻り高値更新が続かないで109.20円割れへ下げるようだと遅行スパンも悪化してくると注意し、遅行スパン悪化からはいったん反動安入りとみて安値試し優先とする。その場合は当初の下値支持線を先行スパンの上限、先行スパンへ潜り込む場合はその下限を試すとみる。

60分足の相対力指数は1月8日午前安値形成時に30ポイント割れまで急降下してから反騰入りしている。9日未明高値の後は指数のピークも横ばいに留まっているので弱気逆行しやすい状況と思われる。60ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとみるが、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント台前半への下降を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.20円から109.00円を下値支持帯、12月26日深夜高値109.68円を上値抵抗線とみておく。
(2)109.20円を割り込んでも切り返す内は109.68円超えから110円を目指す可能性ありとみる。110円以上は反落警戒とするが、米雇用統計を強気で通過して109.50円以上での推移なら週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)109.20円割れを弱気転換注意とし、109円割れからはいったん弱気サイクル入りと見て108.50円前後への下落を想定する。米雇用統計や弱気サプライズとなるような報道を背景に下落する場合は週明けへ続落しやすいと警戒し、109円以下で週を終える場合は来週序盤の下値目途を108円台前半へ引き下げる。

【当面の主な予定】

1/10(金)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.0%、予想 0.4%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数・速報値 (10月 91.6、予想 90.9)
14:00 (日) 11月 景気一致指数・速報値 (10月 95.3、予想 95.2)
22:30 (米) 12月 雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比 (11月 26.6万人、予想 16.4万人)
22:30 (米) 12月 雇用統計 失業率 (11月 3.5%、予想 3.5%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (11月 3.1%、予想 3.1%)
24:00 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%
24:00 (米) 11月 卸売売上高 前月比 (10月 -0.7%、予想 0.2%)

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