ドル円見通し イランの反撃開始で急激な円高(20/1/8)

1月8日朝、イランは米軍の駐留するイラク空軍基地へロケット弾10数発で報復攻撃を行ったとイラン国営TV等が報じた。

ドル円見通し イランの反撃開始で急激な円高(20/1/8)

【概況】

1月8日朝、イランは米軍の駐留するイラク空軍基地へロケット弾10数発で報復攻撃を行ったとイラン国営TV等が報じた。この報道から早朝のダウ先物が前日比300ドル安を超える急落、ドル円はリスク回避に走って108円割れへ急落した。「有事の金買い」と言われるゴールドはスポット市場で1598ドル台へ急伸している
1月2日夜に米軍のイラン革命軍司令官殺害空爆事件が発生、中東情勢が一挙に緊迫したとして金融市場全般がリスクオフへ急旋回し、ドル円は1月6日朝には107.75円まで大幅下落した。その後は報道に対する初期的な反応が一巡し、株式市場がパニックに陥らずに持ち直した為にドル円も108円台前半へ切り返し、7日深夜は米ISMサービス業景況指数が予想を上回る等したことで108.62円まで戻していた。しかし8日朝のイランによる報復開始報道から再びリスク回避へと急旋回し、108円を割り込むところまで急落している。

9時時点の安値は107.82円で1月6日安値107.75円を割り込んでいなかったがその後の続落で底割れしている。7日深夜高値までで戻り一巡しての下落再開と底割れであり、またイラン側からの攻撃に対しては52か所への反撃をすると宣言している米国が反撃に出れば中東情勢の混乱はさらに増すこととなるため、円高がさらに進みかねない状況と思われる。

1月7日に発表された米経済指標はまちまちだった。米サプライ管理協会(ISM)が発表した12月の米非製造業景況指数は55.0となり前月の53.9から上昇して市場予想の54.5も上回った。
米商務省が発表した11月の米製造業受注は前月比0.7%減となり市場予想の0.8%減を上回った。変動の激しい輸送関連を除くと0.3%増、国防関連を除くと0.7%増だった。
米商務省が発表した11月の貿易赤字は431億ドルで市場予想の438億ドルを下回り、赤字額としては2016年10月以来の低水準となった。物品ベースの中国に対する貿易赤字は前月比15.7%減の264億ドルと縮小したが、依然として国別の赤字幅は中国が首位で赤字全体の約4割を占めている。

【3か月強の上昇が一巡しての下落期入り】

8月26日安値104.45円から12月2日109.72円まで高値を切り上げ、その後の安値も切り上げて上昇トレンドを形成してきたが、12月13日高値では12月2日高値を上抜けず、年末年始の下落で12月9日安値108.40円を割り込んで底上げパターンが崩れた。日足チャートは12月2日と12月13日の両高値をダブルトップとして下落期に入ったと思われる。

8月26日からの上昇は12月2日まで日足で71本、ダブルトップの12月13日までが80本だが、昨年1月3日暴落から4月24日高値までの上昇が日足80本であり、今回も3か月半のリバウンドを一巡させて下落期に入っているため、状況的には昨年4月24日高値からの下落期や、1昨年10月4日天井から三角持合いを形成して12月に下放れとなって昨年1月3日へ大幅下落した時等と比較すべき下落期に入っている印象がある。

今回は中東情勢が一挙に緊張状態に入ったこと、米国の最初の空爆に対してイランが報復攻撃に出たことにより、軍事衝突のエスカレートがまだ続く可能性が高まっており、米国による報復、イランの再度の報復、イランに支援された反米武装勢力による中東全域での軍事行動等への懸念も続くため、昨年1月3日への暴落型での下落という可能性や、フラッシュクラッシュ的な安値を出す可能性も警戒すべきか。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値で直近のサイクルボトムをつけて戻していたが、1月2日夜高値から3日を経過した7日深夜高値で直近のサイクルトップをつけて弱気サイクル入りしたと思われる。1月6日朝安値を基準として今回のボトム形成期は9日朝から13日朝にかけての間と想定される。1月6日朝安値とのダブルボトム形成の可能性もあるかもしれないが、底割れからは下落も加速しやすく、米国側からの報復攻撃によりさらに続落しやすい状況と思われるので、7日深夜高値を上抜き返すような情勢変化がないうちは8日夜から9日にかけては下落継続しやすいと思う。

60分足の一目均衡表では、7日深夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いていたが、8日朝の急落により両スパン揃って悪化となった。このため先行スパン下限を戻り抵抗とし、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気回復は両スパン揃って好転するところからとする。

60分足の相対力指数は1月2日深夜から6日朝への一段安に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せて上昇してきたが、7日朝から7日深夜への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行となり、8日早朝の急落へ転じた。急落度合によっては20ポイント以下への低下も警戒されるので、50ポイント台を回復・維持するような反騰が見られない内は一段安警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.50円を下値支持線、108.15円から108.30円にかけてのゾーンを上値抵抗帯とみておく。
(2)108.30円以下での推移中は一段安警戒として107円割れを試す可能性があるとみる。1月7日深夜にかけての戻り幅0.87円の倍返しなら下値計算値は106.88円、日足チャートにおける注目安値は10月3日の106.50円。昨年1月3日への暴落型の下落にも注意する。
(3)108.15円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。108.15円超えの場合は108.30円前後試しとその後の反落警戒とする。反騰入りには中東情勢の好転が必要と思われる。

【当面の主な予定】

1/8(水)
09:30 (豪) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 -8.1%、予想 2.0%)
09:30 (豪) 11月 住宅建設許可件数 前年同月比 (10月 -23.6%、予想 11.7%)
14:00 (日) 12月 消費者態度指数・一般世帯 (11月 38.7、予想 39.5)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 -0.4%、予想 0.2%)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前年同月比 (10月 -5.5%、予想 -4.7%)
19:00 (欧) 12月 経済信頼感 (11月 101.3、予想 101.4)
19:00 (欧) 12月 消費者信頼感・確定値 (速報 -8.1)
22:15 (米) 12月 ADP雇用報告 非農業部門就業者数 前月比 (11月 6.7万人、予想 16.0万人)
24:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
29:00 (米) 11月 消費者信用残高 前月比 (10月 189.1億ドル、予想 150.0億ドル)

1/9(木)
09:30 (豪) 11月 貿易収支 (10月 45.02億豪ドル、予想 41.00億豪ドル)
10:30 (中) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 4.5%、予想 4.7%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数 前年同月比 (11月 -1.4%、予想 -0.4%)
16:00 (独) 11月 貿易収支 (10月 215億ユーロ、予想 210億ユーロ)
16:00 (独) 11月 経常収支 (10月 227億ユーロ、予想 238億ユーロ)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -1.7%、予想 0.8%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -5.3%、予想 -3.6%)
19:00 (欧) 11月 失業率 (10月 7.5%、予想 7.5%)

22:00 (米) クラリダFRB副議長、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.8万人、予想 171.9万人)
25:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演(ロンドン)
27:20 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
28:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

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