【概況】
1月8日朝、イランは米軍の駐留するイラク空軍基地へロケット弾10数発で報復攻撃を行ったとイラン国営TV等が報じた。この報道から早朝のダウ先物が前日比300ドル安を超える急落、日経平均は一時600円を超えて急落、ドル円は9時半過ぎに107.65円まで急落して1月6日朝安値107.75円を割り込んだ。
トルコリラ円は米軍によるイラン革命防衛隊の司令官空爆殺害報道からの円高により1月6日朝には17.94円まで急落した。その後は中東情勢の有事緊張が一挙に高まったためだが、イラン側が3日間の喪に服すとして即時的な反撃に動かなかったため、市場は様子見と初期的なリスク回避行動に対する調整に入り、トルコリラ円もドル円の反発に併せて1月5日午後には18.20円まで戻していた。しかし8日朝のイランによる報復攻撃開始によりリスク回避感が再び全開となって急落に転じ、8日午前には18円を再び割り込んで6日朝安値に迫っている。
【リスク回避でのリラ安が深刻化する懸念】
イラン革命防衛隊は米軍の駐留するイラク空軍基地へロケット弾(またはミサイル)を10数発打ち込み、さらにその後も第二波の攻撃を開始した。米国側はこれらに対する反撃に入ったとの報道はまだ見られないが、トランプ大統領は司令官殺害に対してイランが報復攻撃に出れば52か所を攻撃すると宣言しており、米軍が反撃を行い、さらにイラン側が反撃を繰り返すような状況に入れば、中東情勢としては米国によるイラク侵攻以来の有事レベルとなる。
トルコは米国とイランの軍事衝突に対しては米国を批判しているもののNATO加盟国として米国とは同盟関係にあるため今のところは中立的に外交的解決を望む姿勢を示しているが、トルコ領内における米駐留軍へのイラン側の攻撃がある場合には両国の戦争に巻き込まれる可能性もある。
今回の有事情勢がどこまでエリア的に拡大するのか、攻撃性の深度が増すのかはもう少し様子を見る必要があるだろうが、金融市場全般はリスク回避へと動き、その中でも投機性の高いポジションやリスクに弱いポジションは手仕舞い売りされやすく、トルコリラもその対象となりやすいと思われる。
1月8日午前時点でのドル/トルコリラは5.9827リラへ上昇して1月3日高値を上抜いてドル高リラ安が進み始めている。ドル円も108円を割り込んだ状況のままであり、今後の展開次第ではさらに107円割れを目指す可能性も懸念されるので、トルコリラ円としてはドル高リラ安の進行と円高の両面で圧迫されやすい状況に入っていると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値で直近のサイクルボトムをつけて戻していたが、8日朝の急落で6日朝安値へ迫っているため、7日午後高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクルに入っていると思われる。今回のボトム形成期は9日朝から13日朝にかけての間と想定される。1月6日朝安値とのダブルボトム形成から戻す可能性も考えられるが、18.10円以下での推移中は一段安警戒とみる。
60分足の一目均衡表では1月6日夜への上昇で遅行スパンが好転し、7日の上昇で先行スパンからも上抜けていたが、8日朝の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも再び転落した。このため先行スパン下限を抵抗とし、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパン揃って好転するところからと考える。
60分足の相対力指数は7日午後に70ポイントを超えていたが、8日朝の急落で30ポイント台序盤へ急降下した。40ポイント前後までを戻り抵抗としつつ30ポイント割れ、さらに20ポイント台序盤へ低下する可能性があるのではないかとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、1月6日朝安値17.94円を下値支持線、18.05円を上値抵抗線とみておく。
(2)18.05円以下での推移中は一段安警戒とし、6日朝安値割れからは17.90円、17.80円を段階的に試してゆく可能性を警戒する。また18.10円以下での推移中は9日から10日にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)18.05円を超える場合は18.10円手前試しとみるがそこは戻り売りにつかまりやすいと考える。強気転換には中東情勢の緊張が一服するような動きが必要と思われる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月10日
16:00 11月経常収支 (10月 15.49億ドル)
1月14日
16:00 11月鉱工業生産 前年比(10月 3.8%)
1月15日
16:00 10月失業率 (9月 13.8%)
16:00 11月小売売上高 前月比 (10月 -0.2%)
16:00 11月小売売上高 前年比 (10月 5.9%)
1月16日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 12.0%)
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