ドル円見通し 110円に届かない持ち合いから転落、中東情勢緊張で円高感強まる(週報1月第1週)

米国防総省は1月2日夜(日本時間3日午前)、トランプ大統領の指示によりイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。

ドル円見通し 110円に届かない持ち合いから転落、中東情勢緊張で円高感強まる(週報1月第1週)

ドル円見通し 110円に届かない持ち合いから転落、中東情勢緊張で円高感強まる

【概況】

ドル円は12月12日の米中通商協議第1段階合意報道から急伸して12月13日には109.70円を付けたが12月2日高値109.72円には届かず、その後も12月19日、26日深夜にも高値を試したが新たな高値更新へ進めずに109円台中盤での持ち合いが続いていた。
12月30日に12月20日未明安値109.15円を割り込んで持ち合い下放れとなり、30日深夜には109円割れ、31日夜には108.50円割れへ下落した。
年明け1月2日ややや戻していたものの2日夜には米軍のイラン革命軍司令官殺害空爆事件発生から108.21円へ一段安となり、3日夜へ続落、4日未明には107.84円まで安値を切り下げた。
NYダウは一時300ドルを超える下落となり前日比233.92ドル安で終了した。株安債券高により米10年債利回りは前日比0.09%低下の1.79%となった。
中東情勢緊迫による供給不安からNY原油先物は前日比3.1%高と急騰した。また債券とともに安全資産とされるゴールドが急伸、NYゴールド先物の2月限は24.30ドル高(1.6%)高となった。

【米・イラン戦争勃発か?】

米国防総省は1月2日夜(日本時間3日午前)、トランプ大統領の指示によりイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。イラン最高指導者ハメネイ師はこれに対して「厳しい報復」を宣言した。米イランが事実上の戦争状態に入るとの懸念から金融市場全般はリスク回避となり、株安債券高、為替市場は投機通貨が売られてドルストレートではドル高、クロス円では円が全面高となり、ドル円でも円高が進んだ。
各種報道によると、米軍はイラクの首都バグダッドでの空爆でソレイマニ司令官とイラクのイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ(KH)」の指導者アブ・マフディ・アルムハンディス容疑者を殺害した。イランの最高指導者ハメネイ師は1月3日、ツイッターで「手を血で汚した犯罪者を待っているのは厳しい報復だ」と宣言した。イラン全土が3日間喪に服すとも述べたため、喪が明ける6日以降のイランの動きが警戒される。イラクのアブドルマハディ首相は今回の空爆事件について駐イラク米軍地位協定の「重大な違反」だと批判し、「イラクでの破滅的な戦争の口火を切ることになる」と警告した。

昨年末から米国とイランの軍事緊張が拡大してきた。
12月27日、イラク北部キルクーク近傍のイラク軍基地が30発超のロケット弾攻撃を受けて駐留していた米兵4人が負傷、軍関連民間米国人1人が死亡した。
12月29日、米軍はイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」のイラクとシリア領域内の拠点5カ所を空爆した。これに対してカタエブ・ヒズボラは米軍の攻撃への報復を宣言し、12月31日には同組織のメンバーら数百人がバグダッド中心部の米国大使館を襲撃。

12月29日、米政府は中東への約750人の増派を発表していたが、1月3日にはさらに3500人の増派を決定。
1月3日、トランプ大統領は今回の軍事行動について「差し迫った悪意ある攻撃を計画していた」ことへの対応とし、「米国は戦争を始めるためではなく戦争を食い止めるために行動した」「イランの体制転換を目指しているわけではない」と述べた。
ポンペオ国務長官は今回の事態について英国、フランス、ロシア、サウジアラビア、中国、イラク等の首脳と相次ぎ電話会談した。また米政府は米国人がイラクから退去するように声明を出した。
1月4日、米軍はバクダッド近郊でイラクのシーア派武装組織「人民動員隊」を狙った空爆を行い6人が死亡した。

【湾岸戦争時の反応レベルか、第一次・第二次中東戦争時の反応レベルか】

情勢は一挙に緊迫化している。イラン側の報復がどの程度の軍事行動となるのか、米軍との交戦規模等がどうなるのかによって市場の反応も変わってくる。イラン側が自重的な動きにとどまり米軍の行動がストップすれば緊張の長期化は避けられなくても市場がやや落ち着く可能性がある。しかし、近い将来の全面戦争化への懸念が強まるような双方の攻撃継続、直接的な交戦等が始まれば中東全域への地政学的リスクが一挙に高まることとなりリスク回避型の市場行動が強まる可能性がある。
米国がイラクのフセイン体制を打倒した時にイラク戦争は米国側が圧倒的な有利な状況での長期戦だったために市場の反応も限られたものだったが、1990年にイラクがクエートに軍事進攻したところから始まった湾岸戦争勃発では、原油相場は緊張の高まる直前の1990年6月20日安値15.06ドルから10月10日高値41.15ドルまで2.73倍の急騰だった。NYゴールドは軍事侵攻の8月2日から急騰したが直前の6月安値からの上昇は8月23日高値まででストップした。

湾岸戦争時のドル円は、その前の1990年4月2日に160.36円の高値を付けて下落し始めていたが、湾岸戦争勃発時の151.59円から10月18日安値123.60円まで2か月半で27.99円の円高ドル安、下落率は18.5%安となった。
今回の米国とイランの対立が全面戦争化へ進むのかどうかにもよるが、一つの前例としては湾岸戦争の時の動きが参考になるかもしれない。
しかし、事が湾岸戦争レベルを超えて中東全域を巻き込む展開となれば、1973年の第一次中東戦争から1979年の第二次中東戦争へ至る石油危機時代の相場展開となる可能性もないとは言えなくなっている。シリアやISを巡る中東情勢は複雑であり、ロシア、トルコ、イスラエル、パレスチナ等もかかわってくるので、予断できない状況ともいえる。

【8月からの底上げパターン崩れる】

【8月からの底上げパターン崩れる】

8月26日安値104.45円から12月2日109.72円まで高値を切り上げ、その後の安値も切り上げて上昇トレンドを形成してきた。しかし12月13日高値では12月2日高値を上抜けず、年末年始の下落で12月9日安値108.40円を割り込んで底上げパターンが崩れた。
12月2日と12月13日の両高値をダブルトップとすれば、その谷間にある12月9日安値を割り込んだことによりダブルトップが完成した。また10月3日や11月1日及び12月9日の安値は52日移動平均前後から切り返してきていたが、今回は52日移動平均を割り込んでの続落であり、トレンドとしても崩れ始めている。

概ね3か月前後の底打ちサイクルでは、8月26日安値から3か月半となる12月9日安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われるが、底割れしたことにより新たな弱気サイクルに入ったと思われる。次のボトム形成期は短い場合は2月序盤、平均的には3月序盤にかけての間と想定されるため、中東情勢不安や株安基調が続く場合には1月後半、2月へ向けてドル円も下落基調を続け易い状況に入るのではないかと思われる。
また、8月26日安値から12月2日高値まで3か月強、ダブルトップの12月13日までは3か月半の上昇だったが、これは1月3日から4月24日まで3か月半の上昇から下落に転じた時に近い展開と思われるが、概ね10か月から1年周期の中勢サイクルにおける上昇一巡による下落開始としては、昨年4月24日から8月26日への下落時、1昨年12月から昨年1月3日への下落時等のレベルとなる可能性も考えられる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)中東情勢の展開次第では様子見でやや戻す可能性もあるが、1月3日の急落分を解消するには情勢がリスクオンへ好転する必要があり、1月3日高値108.63円が当面の上値抵抗とみる。
(2)週末時点の安値107.84円を割り込む場合は10月3日安値106.50円、さらに8月26日安値104.45円を試しにかかる可能性があるとみる。仮に昨年1月3日への急落時並みの円高が発生する場合は102円台、さらに100円試しへ向かう可能性も警戒しておく。(了)<5日16:30>

【当面の主な予定】

1/6(月)
10:45 (中) 12月 財新サービス業PMI (11月 53.5、予想 53.2)
16:00 (独) 11月小売売上高 前月比 (10月 -1.9%、予想 1.0%)
16:00 (独) 11月小売売上高 前年同月比 (10月 0.8%、予想 1.0%)
17:55 (独) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 52.0、予想 52.0)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 52.4、予想 52.4)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 49.0、予想 49.1)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 -1.9%、予想 -1.5%)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI改定値 (速報 52.2、予想 52.2)

1/7(火)
08:50 (日) 12月マネタリーベース 前年同月比 (11月 3.3%)
19:00 (欧) 11月 小売売上高 前月比 (10月 -0.6%、予想 0.6%)
19:00 (欧) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 1.4%、予想 1.5%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (11月 1.0%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (11月 1.3%、予想 1.3%)
22:30 (米) 11月 貿易収支 (10月 -472億ドル、予想 -438億ドル)
24:00 (米) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 0.3%、予想 -0.7%)
24:00 (米) 12月 ISM非製造業景況指数 (11月 53.9、予想 54.5)

1/8(水)
09:30 (豪) 11月 住宅建設許可件数 前月比 (10月 -8.1%、予想 2.0%)
09:30 (豪) 11月 住宅建設許可件数 前年同月比 (10月 -23.6%、予想 11.7%)
14:00 (日) 12月 消費者態度指数・一般世帯 (11月 38.7、予想 39.5)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前月比 (10月 -0.4%、予想 0.2%)
16:00 (独) 11月 製造業新規受注 前年同月比 (10月 -5.5%、予想 -4.7%)
19:00 (欧) 12月 経済信頼感 (11月 101.3、予想 101.4)
19:00 (欧) 12月 消費者信頼感・確定値 (速報 -8.1)
22:15 (米) 12月 ADP雇用報告 非農業部門就業者数 前月比 (11月 6.7万人、予想 16.0万人)
24:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
29:00 (米) 11月 消費者信用残高 前月比 (10月 189.1億ドル、予想 158.0億ドル)

1/9(木)
09:30 (豪) 11月 貿易収支 (10月 45.02億豪ドル、予想 41.00億豪ドル)
16:00 (独) 11月 貿易収支 (10月 215億ユーロ、予想 210億ユーロ)
16:00 (独) 11月 経常収支 (10月 227億ユーロ、予想 238億ユーロ)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -1.7%、予想 0.8%)
16:00 (独) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -5.3%、予想 -3.6%)
19:00 (欧) 11月 失業率 (10月 7.5%、予想 7.5%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 172.8万人、予想 171.9万人)
25:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演(ロンドン)
27:20 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
28:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

1/10(金)
08:30 (日) 11月 全世帯消費支出 前年同月比 (10月 -5.1%、予想 -2.0%)
09:30 (豪) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.0%、予想 0.4%)
14:00 (日) 11月 景気先行指数・速報値 (10月 91.6、予想 90.9)
14:00 (日) 11月 景気一致指数・速報値 (10月 95.3、予想 95.2)
22:30 (米) 12月 雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比 (11月 26.6万人、予想 16.4万人)
22:30 (米) 12月 雇用統計 失業率 (11月 3.5%、予想 3.5%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (11月 3.1%、予想 3.1%)
24:00 (米) 11月 卸売在庫 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%
24:00 (米) 11月 卸売売上高 前月比 (10月 -0.7%、予想 0.2%)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る