ドル円見通し FOMCで急伸から一転して反落、イベント通過で上昇にブレーキ(10/31)

FOMC声明で109.28円を付けて高値を更新したが、目先の重要イベント通過感から戻り売りとなり、FOMC声明から急伸する前の水準を割り込んだ。

ドル円見通し FOMCで急伸から一転して反落、イベント通過で上昇にブレーキ(10/31)

【概況】

10月3日深夜安値106.50円からの上昇が10月17日高値108.93円で一服となり、10月23日午前安値108.25円まで下落したが、その後は持ち直して24日、28日と戻り高値を切り上げて28日深夜には109.03円を付けて10月17日高値を超えた。さらに29日午前には109.06円まで続伸して8月1日高値109.31円以来の水準となったが、30日夜の米GDP速報や31日未明のFOMCを目前とした慎重姿勢に入り、ポジション調整的にややジリ安の展開で夜の重要イベントへ向かった。
ADP民間雇用統計や7−9月期の米GDP速報が予想よりもやや悪かったことに対する市場の反応は鈍く、あくまでもFOMC待ちの姿勢だったが、31日未明のFOMC声明での利下げ打ち止め感からいったん急伸して109.28円を付けてこの間の高値を更新したが、米連銀議長会見で早期に利上げへ転じる懸念が後退したためにドル高にはブレーキがかかり、利下げ打ち止め感や当面の様子見についても概ね想定通りとして材料を消化し、目先の重要イベント通過感から戻り売りとなり、FOMC声明から急伸する前の水準を割り込んだ。

【米連銀は利下げ打ち止めで様子見に】

米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を従来から0.25%引き下げて年1.50〜1.75%とした。米中貿易戦争の悪影響による米景気後退懸念がくすぶる中で予防的な利下げとして7月会合から2会合連続で利下げしてきたが、今回もその流れを踏襲して3会合連続での利下げとした。しかし声明文ではこれまでの2会合で追加利下げを示唆してきた「景気拡大の持続へ適切な行動をとる」との文言が削除され、「適切な政策金利の道筋を評価する」と改めた。これは今回の利下げにより当面は利下げ打ち止めとしてしばらくは様子見に入るとの姿勢と市場は受け止めた。
パウエル議長は議長会見で「これまでの政策は景気を大きく下支えした」としてこれまでの予防的利下げの効果があったとし、その上で米中通商摩擦とブレクジットへのリスクは後退しているとし、「現在の政策スタンスが適切であり続ける公算が大きい」とした。これは今回の利下げをもって当面は様子見のスタンスをとることを示唆するものと市場は受け止めた。

議長は「顕著なインフレ率上昇なしに利上げしない」とも述べて早期に利上げ姿勢へ転じるつもりがないことを示して市場を安心させた。また声明文には「先行きに不透明感が残っている」との文言も残っているため、今後の経済指標悪化等によっては追加利下げをする余地も残した恰好だ。
今回の決定では投票権を持つ10人のち、ボストン連銀とカンザスシティー連銀が据え置きを主張したが残り8人が利下げに賛成した。
FOMC声明及び議長会見は概ね市場の想定範囲であり、声明発表後の急伸も一時的なものとなって発表前の水準以下へ押し戻されているため、ひとまずはイベント通過として期待先行でのドル高円安にはブレーキがかかったと思われる。今後は米中協議の進展状況やブレクジット動向がこれまでの報道通りに楽観的に進むかどうか、週末の米雇用統計等の経済指標が米連銀に早期の追加利下げを検討させる弱い内容になるのかどうかを見定めてゆくことになると思われる。

【経済指標他】

米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した10月の全米雇用報告では非農業部門民間就業者数(季節調整済)は前月比12万5000人増となり市場予想の12万人増を上回ったが、9月分が当初の13万5000人増から9万3000人増に下方修正された。週末の米労働省9月雇用統計では失業率が8月の3.5%から3.6%へ悪化、非農業部門雇用者数は前月の13.6万人増から8.5万人増へ鈍化すると見込まれているが、ADPでの就業者数の伸びが鈍かったことで本番の雇用統計でも市場予想のように10万人を割り込む可能性が高まった印象だ。

米商務省が発表した7〜9月期の実質GDP速報値は季節調整済み年率換算で前期比1.9%増となり2期連続で減速して前期の2.0%増を下回った。米中貿易摩擦の影響で設備投資や個人消費が鈍化しており、設備投資は前期の1.0%減から3.0%減へ悪化して2015年第4四半期の4.4%減以来の低水準となった。GDPの7割を占める個人消費も前期の4.6%増から2.9%増へ鈍化した。

南米チリの首都サンティアゴで予定されていた11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と12月の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)は反政府デモの激化により開催が断念された。米中首脳会談もAPEC絡みで予定されるとみられていたが、新たな首脳会談の調整が必要となり、米中協議への影響も懸念される。一部通信社の報道では中国側が米国の求める農産品の購入規模や期間についての確約を渋っているとも言われており、まだ最終的な第一段階合意には時間がかかる印象も出ている。

31日は日銀金融政策決定会合がある。市場は現状維持とみているが米欧の金融緩和姿勢を踏まえて日銀もなにがしかの緩和姿勢を示す可能性も若干あるのではないかと注目される。何もなければ失望的な円高も発生しやすいかもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月21日未明安値と23日午前安値のダブルボトムを直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして、トップ形成期を25日から29日午前にかけての間としてきたが、29日午前高値からの反落で109円を割り込んだため、30日朝時点では29日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定した。またボトム形成期は29日の日中から30日午前にかけての間と想定されるためにすでにボトムを付けての反騰注意期にあるとした。
31日未明のFOMCからいったん高値を更新し、その後に29日以降の安値を割り込んでいるため、30日昼安値(108.79)で直近のサイクルボトムをつけ、既に31日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りしていると考える。ボトム形成期は11月4日から6日にかけての間とする。109円を下回るうちは一段安余地ありとし、109円超えからは強気転換注意として31日未明高値試しとするが、新たな強気サイクル入りは31日未明高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では31日未明の急伸からの反落により遅行スパンは悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。両スパンそろって好転するところからは強気転換注意とするが、31日未明高値を超えないうちはその後に両スパンそろって悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は29日午前高値から31日未明高値への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行となったため、まだ一段安余地ありとみる。40ポイント割れからは下げが加速しやすいと注意し、強気転換には60ポイント超えからさらに上昇する必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.50円を下値支持線、109.00円を上値抵抗線とする。
(2)109円を下回るか、わずかに超えても維持できないうちは一段安余地ありとして108.50円前後試しを想定する。108.50円前後では押し目買いも入りやすいとみるが、109円以下での推移中は夜間の経済指標等からさらに続落する可能性ありとし、108.50円割れから続落の場合は108.25円前後へ下値目途を引き下げる。
(3)109円台を回復・維持し始める場合は強気転換注意として31日未明高値試しとするが、109.20円前後では戻り売りにつかまりやすいとみて、その後に108.80円割れするところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

10/31(木)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
09:30 (豪) 9月 住宅建設許可件数 前月比 (8月 -1.1%、予想 0.0%)
09:30 (豪) 9月 住宅建設許可件数 前年同月比 (8月 -21.5%、予想 -25.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 輸入物価指数 前期比 (前期 0.9%、予想 0.3%)
10:00 (中) 10月 国家統計局製造業PMI (9月 49.8、予想 49.7)
14:00 (日) 9月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -7.1%、予想 -6.7%)
14:00 (日) 10月 消費者態度指数・一般世帯 (9月 35.6)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:00 (ト) 9月 貿易収支 (8月 -25.0億ドル)

19:00 (欧) 9月 失業率 (8月 7.4%、予想 7.4%)
19:00 (欧) 7-9月期GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 7-9月期GDP速報値 前年同期比 (前期 1.2%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (9月 0.9%、予想 0.7%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (9月 1.0%、予想 1.0%)

21:30 (米) 7-9月期 雇用コスト指数 前期比 (前期 0.6%、予想 0.7%)
21:30 (米) 9月 個人所得 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 個人消費 前月比 (8月 0.1%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 PCEデフレーター 前年同月比 (8月 1.4%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前月比 (8月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (8月 1.8%、予想 1.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.2万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.2万人)
22:45 (米) 10月 シカゴ購買部協会景気指数 (9月 47.1、予想 49.0)

11/1(金)
08:30 (日) 9月 有効求人倍率 (8月 1.59、予想 1.59)
08:30 (日) 9月 失業率 (8月 2.2%、予想 2.3%)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
09:30 (豪) 7-9月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 2.0%)
10:45 (中) 10月 財新製造業購PMI (9月 51.4、予想 51.0)
16:00 (ト) 10月 製造業PMI (9月 50.0)
18:30 (英) 10月 製造業PMI (9月 48.3、予想 48.6)

21:30 (米) 10月 非農業部門就業者数 前月比 (9月 13.6万人、予想 9.3万人)
21:30 (米) 10月 失業率 (9月 3.5%、予想 3.6%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前月比 (9月 0.0%、予想 0.3%)
21:30 (米) 10月 平均時給 前年同月比 (9月 2.9%、予想 3.0%)
22:45 (米) 10月 製造業PMI改定値 (速報 51.5)
23:00 (米) 10月 ISM製造業景況指数 (9月 47.8、予想 49.0)
23:00 (米) 9月 建設支出 前月比 (8月 0.1%、予想 0.2%)
26:00 (米) クラリダ米FRB副議長、講演

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