【概況】
10月10日と11日に米中閣僚級協議が行われた。トランプ米大統領は11日の協議終了後に「重要な第1段階の合意に達した」と表明。中国による米農産物の購入拡大や知的財産権保護、通貨安誘導の抑止等で部分的に合意したとして米国は10月15日から実施予定だった対中制裁関税の第一弾から第三弾までの対象に対する税率引き上げ(従来の25%から30%へ引き上げ)を見送った。米中通商協議の全面合意へ向けた第一段階をクリアしたということと、関税引き上げ見送りにより貿易戦争の深刻化はひとまず回避されたとして11日の金融市場は全般にリスクオンとなり、株高・債券安、長期債利回り上昇、為替市場ではドルストレートではユーロやポンドが上昇、クロス円は株高同調の円安反応となった。
ドル円は10月11日深夜に108.61円をつけて9月18日高値108.47円と10月1日高値108.46円で形成していたダブルトップラインを突破した。
しかし、週明けは米中合意もまだ正式署名がなされたわけではなく、中国側の態度も曖昧な印象を与え、米通商代表部も12月15日から実施予定の対中制裁第4弾についての中止ないし延期はまだ決定していないとしたことで週末までの楽観にブレーキがかかって108.03円まで反落する場面もあった。その後はまた戻し始めている。
【米中閣僚級協議で部分合意】
今回の米中合意に関しては、11月にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での米中首脳会談で合意に関する署名を行う可能性があるとされた。トランプ大統領は「貿易戦争の終わりに非常に近づいている」と述べたが、米国が対中協議で重視している中国の国有企業優遇政策等の構造改革問題は継続協議として先送りとなった。また12月15日から実施予定である中国製品ほぼ全てに対する関税拡大の第四弾の発動については見送りも撤回も決定していないとライトハイザー米通商代表部(USTR代表)は述べており、今回の部分合意が正式に署名されるかどうか、米中協議は構造問題についての問題解決を第四弾発動までに解決できるかどうかが試される。
トランプ米大統領は13日に「中国は極めて大規模な米農産品の購入を始めるだろう」ツイートしたが、中国外務省高官は14日の会見で「実質的な進展があった」と述べたものの具体的な行動には言及しなかった。まだ紆余曲折ありそうだ。
中国税関総署が10月14日に発表した9月の貿易統計では、貿易収支が396.5億ドルの黒字で市場予想の333億ドル及び8月の348.4億ドルを上回ったが、輸出は前年同月比で3.2%減となり市場予想の3.0%減及び8月の1.0%減よりも悪化した。また輸入は8.5%減で市場予想の5.2%減及び8月の5.6%減から悪化した。米中貿易戦争による実体経済への影響が深刻化していることを示している。
米中協議以外では中東情勢も気になるところだ。9月のサウジ石油施設への爆撃事件、10月に入ってもイランのタンカーへのミサイル攻撃事件、トルコの軍事行動等で緊張感が高まっている。株高が続けば市場全般のリスクオン心理拡大でドル円もクロス円全般の上昇機運に乗って高値を試して行く可能性が高まるが、米中問題が再び拗れる場合や中東情勢不安が高まる場合はリスク回避感が再び強まっての円高となりかねない。とにかく、米中関係が決着しないことには楽観と悲観は交互に訪れる。
【8月底からの二段上げか、逆三尊形成か、逆三尊失敗か】
9月18日高値108.47円と10月1日高値108.46円でダブルトップ型を形成して10月3日深夜安値106.50円まで下落した。9月24日安値106.94円までを小規模な一段目とすれば10月3日深夜までが二段目の下げだった。ダブルトップ型からの下落で26日移動平均を割り込んだため、更に一段安へ向かいやすい状況だったが、米中貿易協議での進展期待へと市場心理の風向きが変わって反騰、26日移動平均を上抜き返し、10月11日深夜には108.61円をつけてダブルトップラインをわずかに超えた。
9月18日から10月3日までの下げ幅は1.97円だったが、例えば今年1月3日底からの上昇期において3月5日高値から3月25日安値へ小規模の二段下げにより下げ幅が2.40円となったが、その後の切り返しで26日移動平均を上抜き返して4月24日高値へ一段高した経緯がある。今回もその時に近い動き方という見方もできるだろう。
10月11日高値を超えて続伸の場合、小規模な二段下げ調整を消化して上昇再開となり、8月26日からの上昇が二段上げとなり、10月3日への下げ幅の倍返しとすれば上値目処が110.44円まで切り上がる。また8月1日高値109.31円を超えれば、8月26日安値で概ね10か月から1年周期のサイクルにおける底打ちをしての上昇期入りという可能性も出てくるかもしれない。
また、10月11日高値から反落しても9月24日安値106.94円と対になるような安値をつけてから切り返して高値を更新すれば、10月3日安値を中心とした逆三尊底が形成される可能性も考えられる。
これらの可能性を踏まえれば、ドル円の下落再開にはまず逆三尊の可能性を消すように10月3日安値へ迫り、さらに底割れまで進む必要がある。そうなれば4月24日からの下落基調は継続となり、8月26日安値104.45円試し、さらに底割れへと向かう可能性が高まると思う。
米中協議はひとまず部分合意に達したとの見方だが、まだ正式署名は無く、12月15日からは米国による対中制裁関税第4弾の発動予定もあり、この予定もキャンセルされていない。まだまだ紆余曲折ありとし、金融市場全般がリスクオン全開となって株高同調の円安なら110円試しへの流れとし、株高に進めない状況が続き始める場合はそうしたリスクオン全開相場へ発展できずに下落再開となる可能性を考える必要が出てくるのだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月3日深夜安値から3日目の10月8日夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとて11日未明から15日未明にかけての間への上昇を想定してきた。11日深夜高値から一旦0.50円を超える反落となったため、11日深夜高値を直近のサイクルトップと仮定する。ボトム形成期は11日夜から15日夜にかけての間と想定されるので既に14日夜安値でボトムをつけた可能性があるが、14日夜安値割れ回避の内は一段安余地も残るので、108.20円割れからは下げ再開注意とし、14日夜安値割れからは15日夜への下落を想定する。
11日深夜高値を上抜くところからは新たな強気サイクル入りとして16日夜から18日深夜にかけての間への上昇を想定する。ただし、わずかな高値更新から反落して14日夜安値を割り込む場合はダブルトップ形成からの弱気サイクル入りとして17日夜から21日夜にかけての間への下落へ進む可能性が高まるとみる。
60分足の一目均衡表では14日の反落では先行スパン上限が支持線となり、先行スパン突破状況が維持されている。14日夜安値を割り込む下落発生の場合は先行スパンからの転落も想定されるので下落再開として遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、11日深夜高値超えからは一段高入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は11日に70ポイントを超えてから一旦50ポイント割れへ低下したがその後は50ポイント台を回復している。50ポイントを維持するか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月14日夜安値108.03円を下値支持線、11日深夜高値108.61円を上値抵抗線とする。
(2)108.30円以上での推移中は上向きとし、108.61円超えからは109円試しへ向かうとみる。リスクオン前回の場合は109円台前半まで上値目処を引き上げる。また108.61円を超えた後も108.30円以上での推移なら上昇基調を継続しやすいとみる。
(3)ただし、11日深夜高値を超えないか、わずかに11日深夜高値を更新してもその後に失速して108.30円を割り込む場合は弱気転換注意、14日夜安値割れからはダブルトップ形成による弱気サイクル入りとして107.50円前後、さらに107円台序盤への下落を想定する。リスクオフへ風向きが変わった時はこの可能性を考える。
【当面の主な予定】
未 定 (日) 黒田東彦日銀総裁、支店長会議で挨拶
09:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨公表
10:30 (中) 9月 生産者物価指数 前年同月比 (8月 -0.8%、予想 -1.2%)
10:30 (中) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 2.8%、予想 2.9%)
13:30 (日) 8月 第三次産業活動指数 前月比 (7月 0.1%、予想 0.6%)
13:30 (日) 8月 鉱工業生産確報 前月比 (速報 -1.2%)
13:30 (日) 8月 鉱工業生産確報 前年同月比 (速報 -4.7%)
13:30 (日) 8月 設備稼働率 前月比 (7月 1.1%)
14:00 (日) 日銀地域経済報告(さくらリポート)公表
17:25 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
17:30 (英) 9月 失業保険申請件数 (8月 2.82万件、予想 2.65万件)
17:30 (英) 9月 失業率 (8月 3.3%)
17:30 (英) 8月 失業率・ILO方式 (7月 3.8%、予想 3.8%)
17:30 (英) カーニー英中銀総裁、議会委員会公聴会出席
18:00 (独) 10月 ZEW期待指数 (9月 -22.5、予想 -27.0)
22:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
25:45 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
28:30 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
10/16(水)
06:45 (NZ) 7-9月期消費者物価 前期比 (前期 0.6%、予想 0.7%)
06:45 (NZ) 7-9月期消費者物価 前年同期比 (前期 1.7%、予想 1.5%)
17:30 (英) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
17:30 (英) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 1.7%、予想 1.9%)
17:30 (英) 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 1.5%)
17:30 (英) 9月 小売物価指数 前月比 (8月 0.8%)
17:30 (英) 9月 小売物価指数 前年同月比 (8月 2.6%)
17:30 (英) 9月 生産者物価コア指数 前年同月比 (8月 2.0%)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調済 (7月 190億ユーロ)
18:00 (欧) 8月 貿易収支・季調前 (7月 248億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
18:00 (欧) 9月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 9月 小売売上高 前月比 (8月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 0.0%、予想 0.2%)
23:00 (米) 10月 NAHB住宅市場指数 (9月 68、予想 68)
23:00 (米) 8月 企業在庫 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
23:45 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、経済イベント出席
24:00 (欧)レーンECBチーフエコノミスト、講演
26:00 (独) バイトマン独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
10/17(木)
G20財務相・中央銀行総裁会議、ワシントン 10月18日まで
EU首脳会議、ブリュッセル 10月18日まで
07:00 (英) カーニー英中銀総裁、講演[ボストン]
09:30 (豪) 9月 新規雇用者数 (8月 3.47万人、予想 1.85万人)
09:30 (豪) 9月 失業率 (8月 5.3%、予想 5.3%)
17:30 (英) 9月 小売売上高・除自動車 前月比 (8月 -0.3%)
17:30 (英) 9月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (8月 2.2%)
17:30 (英) 9月 小売売上高 前月比 (8月 -0.2%)
17:30 (英) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 2.7%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前月比 (7月 -0.7%)
18:00 (欧) 8月 建設支出 前年同月比 (7月 1.1%)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数・年率換算件数 (8月 136.4万件、予想 132.0万件)
21:30 (米) 9月 住宅着工件数 前月比 (8月 12.3%、予想 -3.2%)
21:30 (米) 9月 建設許可件数・年率換算件数 (8月 141.9万件、予想 134.0万件)
21:30 (米) 9月 建設許可件数 前月比 (8月 7.7%、予想 -6.0%)
21:30 (米) 10月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (9月 12.0、予想 8.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人)
22:15 (米) 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 0.6%、予想 -0.1%)
22:15 (米) 9月 設備稼働率 (8月 77.9%、予想 77.7%)
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
27:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
29:20 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
10/18(金)
08:30 (日) 9月 全国消費者物価指数 前年同月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
08:30 (日) 9月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (8月 0.5%、予想 0.3%)
08:30 (日) 9月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (8月 0.6%、予想 0.5%)
09:00 (世) IMF・世銀の年次総会本会議
11:00 (中) 9月 小売売上高 前年同月比 (8月 7.5%、予想 7.8%)
11:00 (中) 9月 鉱工業生産 前年同月比 (8月 4.4%、予想 5.0%)
11:00 (中) 7-9月期GDP 前期比 (前期 1.6%、予想 1.5%)
11:00 (中) 7-9月期GDP 前年同期比 (前期 6.2%、予想 6.1%)
17:00 (欧) 8月 経常収支・季調済 (7月 205億ユーロ)
17:00 (欧) 8月 経常収支・季調前 (7月 298億ユーロ)
22:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
23:00 (米) 9月 景気先行指数 前月比 (8月 0.0%、予想 0.1%)
23:05 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演
23:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ライブストリーミング出演
24:30 (米) クラリダFRB副議長、講演
10/19(土)
英国のEU離脱延期法が定めるEUとの新たな離脱案合意期限
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2019.10.15
ドル/円はレンジ継続か、ポンドの動き注意(10/15夕)
15日の東京市場は、揉み合い。108円前半、20ポイントにも満たない非常に狭いレンジ取引をたどっている。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2019.10.15
ドル円、米中部分合意もsell the factで伸び悩む展開。英ポンドは乱高下(10/15朝)
14日(月)の外国為替市場でドル円は下落後に反発。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。