ドル売り材料が目立つ中、半期末の実需に注意
今週の週間見通し
先週のドル円は、週末にサウジアラビアの産油施設攻撃のニュースからリスクオフの嵐でスタートを切りました。原油相場が前週末の54ドル台から63ドル台へと暴騰を見せる中、株安、ドル安の動きとなりましたが、早期の現状復旧思惑もあってその日のうちにギャップを埋める動きを見せました。最近は週明けにギャップダウンして始まるもののすぐにギャップを埋めて逆にリスクオンという動きが多いのですが、米中間の通商協議期待だけでここまでリスクオンに動けるとは思えません。どうも、イベントでギャップダウンの時にカウンターで買いに回り、ストップを巻き込んだあたりで利食うという動きを見せるAI取引がでているのではないか、個人的にはそのような印象を持っています。
金融政策イベントでも別の意味で同じような動きを繰り返しています。先々週はECB理事会で利下げ後の材料出尽くしでユーロ買い、そして先週はFOMCの利下げ後のドル買いと、これらは材料出尽くしによる動きで、ある意味古典的な動きでもありますが、イベント後のトリガーとしてここでもAI取引が出ているのではないかという印象です。振り返ると、トランプ大統領当選時のドル売り相場が急速に反転してドル買いへと転じましたが、どうもあの頃から初動とその後(およそ数時間〜半日後)の動きが全く異なるという動きが増えてきたように感じています。
そうしたこととは別にして、FRBは利下げを行ったものの今後の追加利下げに関しては消極的で、材料出尽くしということは正しいのですが、日銀が現状維持ということもあって、日米金利差が縮小する動きには変化はありません。また米中通商協議に関しても10月合意を期待したリスクオンというのがこれまでの流れでしたが、金曜には中国代表団が予定を早めて帰国と、これまで何度も言及してきた通り、実際に「合意」の2文字を見るまでは何も安心材料は無いというスタンスでいたほうがいいと思われます。
まだ先の話ではありますが、米中が合意した際には材料出尽くして意外とドル売りになる可能性があるかもしれません。AIが多数の市場参加者をだます方向に動くとするならば、合意直後はドル買い、そして数時間〜半日後一気にドル売りに転じるという動きが出るのではないか、という気がしてきます。来月以降のテーマですが、検証してみたいですね。
さて、今週ですが金融政策イベントも終わり、連日のように欧州、米国とも中銀関係者の講演が続きます。おそらく、会合後のコメントから大きく外れるようなコメントは出て来ないと思いますが、ECBでは決定に意見が分かれていましたし、米国でも同様でしたから、どちらかというとタカ派的なコメントが出てくる可能性がありそうです。一時的な材料にせよ振れる材料にはなりそうです。
また月末で経済指標もかなり多い一週間となりますが、ドル関連ではそれほど大きな影響を与えるような指標も無く、地区連銀総裁等の講演の方が影響ありそうです。あとは、金曜に予定を早めて変えることとなる中国次官級代表団に対して、トランプ大統領や米国の閣僚からどのような発言が出てくるかには注意が必要です。現状では米国は満額回答、中国は妥協点を見出したいと、双方の溝は残ったままですが、世界経済に与える影響や今後の米中関係も、思っている以上に悪化しているという認識でいたほうがよく、材料的にはとてもリスクオンに動ける地合いでは無いと考えています。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
先週の108円台半ばで折り返した動きを見ても長期ドル安トレンド自体に変化はありませんが、短期的には方向感が出にくい展開になってきました。8月から9月上旬にかけての反転パターンのネックライン(現時点で106.25レベル)がサポートとなることは確かですがまだ距離があります。そうなると、8月安値と先週高値の38.2%押しとなる106.94が最初のターゲットと言ってよいでしょう。いっぽうで、上値は既に先週高値を見たことから、108円台では戻り売りが出やすいのですが、9月のですが半期末に向けて実需筋の動きにも注意したいところです。
今週は基本的には上値は重たいと見て、106.80レベルをサポートに108.25レベルをレジスタンスとする流れと、先週の予想と同じレンジを示しておくこととします。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
9月23日(月)
**:** 東京市場休場
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値
22:00 ドラギECB総裁議会証言
22:45 米国9月製造業・サービス業PMI速報値
22:50 NY連銀総裁講演
24:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
9月24日(火)
**:** 南ア市場休場
14:35 黒田日銀総裁挨拶
15:45 フランス9月企業景況感
16:00 フランス中銀総裁講演
17:00 ドイツ9月ifo企業景況感
18:55 豪中銀総裁講演
22:00 米国7月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国9月消費者信頼感
23:00 米国9月リッチモンド連銀製造業景況指数
9月25日(水)
07:45 NZ8月貿易収支
08:50 日銀会合議事要旨公表
11:00 NZ中銀政策金利発表
15:00 ドイツ10月GFK消費者信頼感
15:45 フランス9月消費者信頼感
21:00 シカゴ連銀総裁講演
23:00 カンザスシティ連銀総裁講演
23:00 米国8月新築住宅販売件数
23:30 週間原油在庫統計
9月26日(木)
08:00 (ダラス連銀総裁講演)
15:35 黒田日銀総裁挨拶
16:00 クーレECB理事講演
18:30 南ア8月PPI
21:30 米国4〜6月期GDP確報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 ドラギECB総裁講演
22:45 英中銀総裁講演
23:00 セントルイス連銀総裁講演
23:00 米国8月住宅販売保留件数
24:45 クラリダFRB副議長講演
27:00 メキシコ中銀政策金利発表
27:00 (ミネアポリス連銀総裁講演)
29:30 (リッチモンド連銀総裁講演)
9月27日(金)
08:01 英国8月GFK消費者信頼感
08:30 本邦9月東京区部CPI
15:00 ドイツ8月輸入物価指数
15:45 フランス9月CPI速報値
15:45 フランス8月PPI
16:15 デギンドスECB副総裁講演
16:16 オランダ中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏9月消費者信頼感
21:30 米国8月個人所得・消費支出
21:30 米国8月耐久財受注
22:00 スペイン中銀総裁講演
23:00 米国9月ミシガン大消費者信頼感確報値
26:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
9月29日(日)
**:** NZ夏時間に移行
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
9月16日(月)
週末にサウジアラビア産油施設がイエメンのテロ組織の攻撃を受け、サウジアラビアの原油産出量の半分が停止、世界の5%にあたるとの衝撃のニュースに週明けの市場は一斉にリスクオフに動きました。ドル円は107.46レベルをつけ、株価指数先物は軒並み大幅安、NY原油先物は週末の54ドル台後半から一気に63ドル台前半へと暴騰と、東京市場が休場となる中で大荒れのスタートを切りました。しかし、その後は落ち着きを取り戻し徐々に買いが出てくる展開。その後、ポンド売りが主導する形でドル買いの動きへと流れが変わり、NY市場に入るとドル円は108円台を回復し週末のギャップ埋め、ストップも巻き込みながら108.17レベルと高値引けとなりました。
9月17日(火)
ドル円は東京前場に前週高値を上抜け底堅い地合いが続きました。しかしFOMC、日銀会合を控えて積極的な取引は手控えられ、前日の荒れ相場の反動もあって108円台前半の狭いレンジの中で方向感が出ないまま一日を終えました。
9月18日(水)
ドル円はFOMCを控えNY後場まで全く動きの見られない状況が続きました。FOMCでは予想通り0.25%の利下げとなったものの、年内そして来年の追加利下げはFRBとしては現時点で考えていないことが明らかとなり、材料出尽くしによるドル買いで反応することとなりました。ドル円は引けにかけて108.48レベルまで高値を切り上げ高値圏での引けとなりました。
9月19日(木)
ドル円は日銀の発表を前に株価に沿って、高寄り後に急速に水準を切り下げる展開となりました。日銀は現状維持と予想通りの結果ではあったものの、結果を見て更に円買いの動きとなり一時107.77レベルの安値をつけました。その後は目立った動きも無く、NYの引けまで107.95レベルを中心に狭いレンジでのもみあいのまま引けました。
9月20日(金)
3連休を控えて東京市場のドル円は107.90レベルを挟んで動意薄の流れが続きました。海外市場に移ってからもどちらかというと108円台では戻り売りが目立つ展開でしたが、NY市場後場に10月の通商協議に向け米国入りしていた中国代表団が予定を切り上げて帰国することとなりそれに反応。トランプ大統領も合意成立には不十分と延べ、これまでの期待に対する失望からリスクオフの流れとなりました。ドル円は107.50レベルと週初の安値圏に近づいての安値引けとなりました。
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